あらすじ
二一世紀に入り先史人類学をめぐる状況は大きく変わった。画期的な発見が相次ぎ、人類の起源が従来より七〇〇万年遡るとともに、進化の道筋も見方の変更が迫られている。人類は、複数の人類種が複線的に生まれては消え、現生人類はそのうち生き残った一つでしかないとわかってきたのだ。最新の発掘成果と学説を解説する。
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人類史のリスキリング
篠田謙一さんの「人類の起源」とあわせて読んで、昔習った内容をリセットできました。DNA 解析の進化と地道な発掘が結び付いた偉大な発見がここにあると思います。ネアンデルタール人の遺伝子がアジア人にも入っていることに感動します。
Posted by ブクログ
本書は、夢とロマンにあふれた本であると高く評価したい。ヒトはどこから来たのかという問いは誰しもが一度は抱いたものだと思うが、そうか、ここから来たのかとここまでわかっているとは驚いた。ヒトの知識はここまで広がっていたことにと驚愕するとともに誇らしくも思えた。
本書はいう「ホモ・サピエンスというホモ属の種は、ほんの20万年前アフリカのわずか数百~数千人から拡大したと言う見方が有力」であると。化石の発掘を中心とした古人類学とDNAの研究の分子生物学の結果がクロスして来ることによって、さまざまな事実がわかってきていることが本書でわかった。
筆者は「これまで現れては消えた人類全体を300ほどのジグソーパズルにたとえると、まだわれわれはそのうちの30片ほどのピースしか手に入れていない」という。しかし数百万年前からの人類の歴史のなかでの「30片ほどのピース」までわかってきていることは驚きである。
最初の人類は700万年前中央アフリカに生まれたらしい。「サヘラントロプス・チャデンシス」。脳の大きさはわずか350cc。直立歩行するサルのようなものか。脳容量が大きくなるのはずっと後のことだったようだ。
440万年前の熱帯雨林のアフリカでの「アルディピクス・ラミダス」。乾燥化によって森林にパッチ状の草地が広がり始めたことによって直立二足歩行が生まれたのだろうか。
古人類学一家のルイス・リーキーとメアリ・ルーキーの夫妻の物語もおもしろい。次男リチャード・リーキーも古人類学者だ。アフリカの大地での発掘生活と最先端の発表の生活を想像するとすごいとしか言いようがない。まさに、ドラマだ。
現代人につながるホモ属が250万年前に東アフリカに登場し、はじめて石器を使用し、そして肉食を開始し、それにより脳が大きく拡大した。そして200万年前に、ホモ・エレクトスが派生したという。本書では、発見された多くのホミニンについて、さまざまな特徴やわかってきたことが詳細に書かれている。どれも興味深く読めた。
また、ネアンデルタール人との係わり合いについても多くのことがわかってきているが、ネアンデルタール人が遺伝子調査の結果赤毛で白人だったとの報告には驚く。
本書は、とても古いヒトの物語だ。学術的で専門的な内容であるが、素人でも充分楽しめる内容となっている。それは、われわれには、自分達がどこから来たのかという好奇心があるからではないだろうか。その好奇心の前には専門家も素人も関係なく知識欲が前面に出ると思うからである。
本書によると古人類学のジグソーが埋まりつつある。その全容がいずれ明らかになることを思うと、ワクワクする。ヒトはどこへ行こうとしているのかは、まだわからないが、少なくとも、どこから来たのかはわかる可能性があると考えるだけでも興奮する思いがする。本書を高く評価するとともに、おもしろかったと言いたい。
Posted by ブクログ
電子書籍で購入。
ホモ・サピエンスに至るまでの進化過程には、さまざまな人類が存在していたことは、折に触れ放送されるドキュメンタリーで知ってはいても、名前は複雑だし時代の前後関係がわからないので、手元で確認できるレビューが欲しかったのだか、まさしく本書は最適で、2010年に発表された論文も網羅しており、新書としての特長も十分に生かしている。
自分の理解としては、人類進化の大きなターニングポイントは直立二足歩行と石器であったようだ。本書ではさらっとしか触れられていないが、直立二足歩行はナックル歩行から進化したものではなく、人類へと舵をきった大きな分かれ目であった。
もう一つのポイントは石器(オルドワン文化)で、筆者はこれこそがホモ属の特徴と考えているようだ。興味深いのはその分かれ目は、脳の大きさではなく、文化的指標であって、脳の大きさはそれに付随した現象なのかもしれないということだ。実際、フロレシエンシスの発見は脳の大きさと進化の方向性が乖離しうることを示している。ある種の文化的発明がその後の進化を決定づけたと考えるなら、なんとも戦慄する話である。
「2001年宇宙の旅」でキューブリックはモノリスに触れた類人猿が骨を道具として使うようになったシーンを描いているが、本書の意見に依れば、石と石を打ち合わせて石器ができることを発見した瞬間が、巨大な跳躍に対応することになろうか。
最後に電子版について。電子版は図表の解像度が嫌がらせのように悪く、最初の年表が読みにくいのには閉口した。また、なぜかカッコ内の文字が他の文字より大きくなっていて気が散った。こういう本では年表を見返すことが多いので一覧性の悪い電子本ではしおり機能がないとキツイ。改良を希望。
Posted by ブクログ
ある程度予備知識があって読むともっと楽しめたかもしれない。人類史は今後もどんどん新しい発見がされて、定説が塗り替わっていくんだろうということはよく分かった。