【感想・ネタバレ】映画ビジネスのレビュー

あらすじ

2024年、『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞視覚効果賞を、『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション賞を受賞するなど、日本映画が世界的な注目を集めています。さらに2024年の国内興行収入ランキングでは、上位10作品のうち8作品を日本映画が占め、その勢いが顕著です。本書は、17年間にわたり映画業界紙の記者として第一線で取材をしていた著者が、映画産業の仕組みと現状を徹底解説する一冊です。製作から配給・興行、二次使用まで、映画ビジネスの全工程を網羅し、業界の最新動向や課題、未来の展望までを詳しく解説します。さらには、著者が取材のなかで目撃した映画業界の驚きエピソードも満載。映画ビジネスについて楽しく学ぶことができます。

■目次
序章 アメリカを席巻した日本映画業界の現状について考える
第1章 プロデューサー・監督から学ぶ映画制作の世界
第2章 製作方式から学ぶ映画作りの世界
第3章 洋画から学ぶ映画配給の世界
第4章 伝説の宣伝マンから学ぶ映画宣伝の世界
第5章 映画の誕生から学ぶ映画史の世界
第6章 ポップコーンから学ぶ映画館の世界
第7章 Netflixから学ぶ二次使用の世界
第8章 アニメ映画から学ぶ海外展開の世界
第9章 DXから学ぶこれからの映画の世界
終章 夢のある、世界に誇れる映画ビジネスであるために
読者特典 映画を語るならこれを観よ! 必見映画250

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Posted by ブクログ

エンタテインメントのビジネスは、一般の人には非常に分かりづらいと思う。
業界の中にいると当たり前の慣習が、外から眺めると非常識に見えたりする。
逆もまた然り。
だからこそ「そこが魅力」とも言えるのも事実だったりする。
これでもだいぶ薄れてきたのだが、「ザ・芸能界」の怪しさは、今でもゼロにはなっていない。
華やかに見える裏側の、ドロドロした部分に魅力を感じて、その世界にハマってしまう人もいるくらいだ。
身体に悪いと分かっていても、酒や煙草を止められないのと似たようなものか?(違うかも?)
元々は「興業」から始まったとされる映画業界。
それが昭和の時代には、テレビ局やレコード会社、芸能プロダクションを巻き込んだ「ザ・芸能界」に発展し、世の中を席巻した。
巨額の利益を、ごく限られた人たちの世界で分配していたのだから、その関係値は非常に濃密で、「一言さんお断り」「裏切者は許さない」という暗黙の掟が構築されたのも必然と言えたのかもしれない。
そして今、そんな「ザ・芸能界」が、インターネット・スマホ・SNS時代になって、大きく開かれて変化しようとしている。
オープンになればなるほど、怪しい部分はドンドンと浄化され、急ピッチで健全化が図られていく。
今でも自信を持って「真っ白」とは言えないのかもしれないが、間違いなく昔の形態とは違ってきている。
そして今の時代は「ザ・芸能界」よりも「エンタメビジネス」と言った方がしっくり来る。
時代に合わせて、変化せざるを得ない状況なのは間違いない。
そういう過去からの、変化の歴史があったとしても、「エンタメビジネス」の本質は外側からは理解しづらい。
今でも根底に流れる本質が見えるからこそ、その奥深さに感銘し、ハマっていくのだと思う。
普通のビジネスと違う点は様々あるが、大袈裟ではなく、それが人々の人生に影響を与えるものだからだろう。
単純なお金儲けだけを考えると、エンタメビジネスはとても非効率だ。
どんなにヒットメーカーであろうと、作品の打率が3割あればすごいこと。
投資に対してのリターンが低すぎる。
下手をすると、1作の大ゴケで、会社が倒産してしまうほどの損失を出してしまう。
さらに言えば、山のものとも海のものとも言えない企画の段階で、投資を決定する必要がある。
キャッシュアウトが先行して、資金が回収されるのは映画が公開されてから数ヶ月後。
配信や放送など別次利用の収益が入るのは、さらにその後だ。
キャッシュフローの効率も極めて悪いのが、エンタメビジネスの難しさである。
そんな難しい仕事でありながら、人生を壊してしまうほど悪魔的に魅力がある仕事とも言える。
華やかな一面が、奇跡を感じるかのように美しい面があるからだ。
その美しさに魅了され、人生を懸けてのめり込んでしまう。
それだけに、非常に閉ざされた世界であるし、その仲間内に入ることが、実はものすごく大変だった。
しかし時代の流れによって、その辺りも大きく変化しているのは事実である。
今後エンタメビジネスがどう変化していくかを考えると、なかなか面白い。
様々な識者の論説やテクノロジーの進化を勘案すると、今後の未来がどうなるかは、ある程度帰結される点が見えてくる。
本書はそれらの話というよりは、まさに映画ビジネスという「基本のキ」、エンタメビジネスの中の一部について、より掘り下げた解説をしてくれている。
前述の通り、一言でエンタメビジネスと言っても、その幅は非常に広い。
本書に代表される映画もそうだが、音楽、演劇、テレビドラマ、テレビバラエティ、アニメ、などなど、ジャンルでも全く異なるビジネス展開がある。
それらが、世界を巻き込むインターネット・スマホ・SNSの時代にどう展開されているのか。
全体を理解することは、これは相当に難しい。
エンタメというと、どうしても「面白い番組を作りたい」や「大きなイベントをやりたい」という、クリエイティブの部分に目が行ってしまう。
しかし、我々はビジネスマンである以上、それら手法はどうあれ、ビジネスとして収益を成り立たせる必要性がある訳だ。
意外とこのビジネス部分、端的に言えば「ビジネスモデル」であるが、それを理解している人が同じ業界内であっても少なかったりする。
これはエンタメのビジネスモデルそのものが、非常に複雑だからだ。
パッと見の印象だけでは、なかなか収益の本質が見えてこない。
そういう意味でも、実は「映画ビジネス」こそが基礎中の基礎。
最初にエンタメのビジネスモデルを学ぶ上で、最適な教材だと思う。
業界のルールは特徴的かもしれないが、一般の方も知っていて全く損はない。
解説されると、意外に感じる部分も見えてくるだろう。
基礎を学ぶことがどれだけ大事なのか。
館アベレージも、上映回数も、ブッキングについても、解説されると、映画ビジネスの仕組みがよく分かる。
少なくとも、公開館数と映画制作費・PA費、興行収入の関係などは頭に入れておくと便利だ。
これからは世界が益々エンタメ化していく。
限られた業界内に止まらず、他の業界も巻き込んでエンタメ化が広がっていく。
なぜ自治体が、ゆるキャラを展開しているのか。
成功している自治体と、失敗している自治体の差は何なのか?
旅行業はすでにエンタメ業界の一部と言ってもいいかもしれない。
教育だって、間違いなくエンタメ化が進んでいく。
自動運転の世界では、エンタメが非常に重要なパーツとなる。
もしかすると医療だって介護だって、エンタメ的世界が広がっていくのかもしれない。
「エンタメ」とは何なのか?
これからビジネスでは非常に重要となる知識だ。
まずは基礎中の基礎である「映画ビジネス」から学んでいくことをお薦めする。
本書は映画ビジネスの仕組みについての解説であるが、他業界の方こそ読んでほしい。
自身のビジネスに、エンタメの世界観がどう融合されていくのか。
そんなことも想像しながら、学んでほしいと思っている。
(2025/6/5木)

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2025年09月20日

Posted by ブクログ

映画やその業界について包括的に書かれた本
私は全然コアな映画ファンではなく、映画館で見る映画の本数もこの本に書かれている平均かそれ以下というくらいです。なので、正直、監督とプロデューサーの違い(違うことはわかるが具体的にどう違うのか説明はできない)とか、映画によって監督・脚本家・カメラマン・俳優とそれぞれ評価される人が違っててややこしいな、と思ってました。
本書を読んで、映画はまさしく総合芸術であると思いまいた。ひとつの作品を完成させるには、専門技術はもちろん、個性豊かな人達と一緒に一つの作品を完成させるためのコミュニケーション能力が必要不可欠なんだな、とあらためて実感。
本書の最後のページには読者特典として、筆者おススメの映画がテーマ別に250本(多すぎる気もしますが笑)まとめられてます。この中から気になるものをちょこちょこ見ていくのも楽しそうだな、と思いました。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

「単なる映画好き」ではなく「映画ビジネスに携わりたい」人向けの本。よくある映画評論とか、オススメ映画を語るものではなく、映画にまつわるお金や組織のことなどがわかる。
産業としての映画は、AIやネット配信などとの兼ね合いもあり、今後どう変化していくのか先が見えない感もあるが、一時代を築いた文化としては、やはり不動の地位があるものだと思う。

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2025年10月13日

Posted by ブクログ

業界知識がある程度ある人にとっては目新しい情報はないが、体系的に網羅されており、また分かりやすく易しい文体で書かれているため、ざっと全体像を掴みたい人には良い本。
シネフィルというよりはライト層向けの入門書。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

あまり映画のこと知らないけど、業界について網羅して知りたい人向けだった。自分としてはあまり新しい情報はなかったかな。再確認みたいな感じで読みました。

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2025年08月06日

Posted by ブクログ

映画において作品・芸術の側面と同じか視点によってはそれ以上に重要な興行・商売の側面。まさに『鬼滅の刃』が日本新記録を叩き出しているタイミングで読めたので面白かった。

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2025年07月26日

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