あらすじ
「日本人と蛸の交響は歴史・文学・美術はもとより,祭りや芸能,信仰・伝承,はては民話・玩具・食文化まで,いたるところから聞えてくる.善かれ悪かれ日本人の感情によほど訴える生き物」,それがタコ! その魅(魔)力に「吸いつかれて」七十年余.カニ先生が全国津々浦々,機会あれば集め続けたタコ百般に関するタコ談義の集成.
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Posted by ブクログ
文化人類学者のカニ先生が若い頃から興味を持っていた、
タコに纏わるあれやこれやを語る日本のタコ文化エッセイ。
・はじめに
I 蛸「八」変化 II 関東の茹で蛸・関西の生蛸
III 蛸信仰と日本人 IV 神出鬼没の蛸
V 縄文人は蛸を食べていたか――蛸の考古学と私
・あとがき――蛸に魅せられて七十年
主要参考文献一覧、初出一覧、図版出典一覧有り。
古今東西で強者とされた、蛸。
特に日本には、蛸に纏わるあれこれが様々存在している。
蛸足の数と伝承。ひょっとこ口の起源。
「狂斎百狂 どぶけ百萬編」の考察。蛸の色。
弥生時代からの蛸食は西高東低。田植えの行事での蛸。
蛸を食べる国と食べない国。
日本の蛸信仰は、蛸薬師や蛸地蔵など。その神事と伝承。
霊験譚、神や仏と蛸の関係、蛸猿の仲。猫と蛸の土人形。
明治時代の蛸釣具とイシャリのこと。
蛸には骨が無いので貝塚には残らないが、
縄文の三内丸山遺跡から蛸の「口器」が出土したことなど、
遥か昔から、日本人と蛸の吸い付かれたかのような関係が
多数語られます。その個々の話が面白い。
ただ、寄り道があちこちに現れるため、
迷路に陥った感じも否めませんが。
特に興味惹かれたのは、千葉県の道切りの風習。
ある場所までは辻々の木にわら製の蛇を這わせているのが、
海に近づく地域では網つり、又は縄つりに変わり、
わら蛸を吊るすというもの。房総と海との関わりが色濃く
現れていて、興味深く読めました。