【感想・ネタバレ】きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイするのレビュー

あらすじ

〈メタルギアソリッドV〉と一族の戦禍の歴史が解け合う魔術的冒険ほか、痛みと笑いに貫かれた新世代イスラム・マジックリアリズム短篇集。全米図書賞最終候補、O・ヘンリー賞受賞。

ビデオゲームのマップに入り込み、アフガニスタンの故郷で殺されようとしている叔父を救出に向かう少年(「きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする」)、配達され続ける息子の肉片を縫い合わせていく母親(「差出人に返送」)。パレスチナの囚人解放を求めてYouTubeでハンガー・ストライキを拡散する大学生たち(「ハラヘリー・リッキー・ダディ」)。いつまでも死ねない老女を見守る天使と地球(「ヤギの寓話」)。サルに変身し反乱軍を率いることになった青年の数奇な運命(「サルになったダリーの話」)⋯⋯。

9・11以後の数多の瓦礫をさまよう亡霊を、神話的な笑いで紡ぐ戦争文学の新地平。最注目作家による傑作短篇集。

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Posted by ブクログ

1992年生まれのアフガニスタン系アメリカ人、ジャミル・ジャン・コチャイによる連作短編集。

ゲームが好きならこのタイトルと表題作は惹かれるものがある。かくいう自分もここ数年はゲームはめっきりプレイしなくなったが、かつては結構なゲーマーであった。
当然『メタルギアソリッド』シリーズも熱中した口で『ファントムペイン』発売時には寝る間も惜しんでミッションをこなしていた。
この表題作は、アメリカに住むアフガニスタン系アメリカ人の少年が、無職の父を助けるために貯めていたバイト代を、その日発売日だった『メタルギアソリッドV』に充ててしまう。早速帰ってプレイすると、広大でリアルな世界が彼の眼の前に開かれ、熱中してプレイしていく。だが次第にミッションが亡くなった少年の叔父を助けるものへと変わっていき、というもの。
マジックリアリズムな表現の面白さと、アフガニスタン系の作者だからこそ感じるゲームで描かれるイスラム系の扱われ方、描かれ方、その受け止め方が新鮮だった。
『メタルギア・ソリッドⅤ:ファントムペイン』はまた違うのだが、エドワード・W・サイードの『イスラム報道』は欧米メディアによるステレオタイプなイスラム系のイメージを批判していたが、映画やゲームの世界でもその影響は結構強いのかもとか思ったりした。

他に気に入ったのは『ハラヘリー・リッキー・ダディ』という作品。
ボンクラな大学生リッキー・ダディが同じ大学のパレスチナ人女子ナビーラに恋をする。彼女のことを知るためにパレスチナ問題を調べまくっていく。
ある日ナビーラにはパレスチナで抵抗運動をしている恋人ユスフがいることを知る。リッキー・ダディはユスフのこともツテを使って調べていく。するとユスフはイスラエルの刑務所に罪状もなく収監されていることがわかる。ユスフはイスラエルに罪状を要求するためにハンガーストライキを実行するのだが、リッキーもハンガーストライキを行う。次第にハンガーストライキが大学のイスラムコミュニティから、アメリカ全土、世界と広がっていく、という話。
大学寮でバカ騒ぎをしてるだけだったリッキー・ダディが恋をしたことで想像もできないところへ連れて行かれる作品で、その飛躍も含めて素晴らしかった。

どの作品もそこまで長さはないのだが、短くまとまった中にそれぞれ光るものがあり、そして痛みがある短編集だった。

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2025年04月15日

Posted by ブクログ

それなのに、あなたがたはどこへ行くのか?
──クルアーン 81章26節
 
 
YouTubeチャンネル『けんご小説紹介』でスケザネさんが紹介していた本作。
そのタイトルのキャッチーさに興味を擽られ購入。

いざ、読んでみると…世界観を理解するのがなかなか難しい短編集でした。
表題作になっている『きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする』と『サルになったダリーの話』は個人的に好き。

だけど、全作イスラム文化圏をバックグラウンドにした短編集であり、それらの文化や宗教観、そしてイスラム圏の寓話なども用いているということで、それらをある程度知っている方が読みやすそう。

アフガニスタン側から見た、戦争文学とも呼べるような作品の数々。
最後の翻訳者による解説を読むと、結構納得することが書いてありますね。理解というか納得というか…ページを読み進めていくのに些か時間がかかりました。

イスラム・マジックリアリズム。いやー、ちょっと特殊だったな。





〈メタルギアソリッドV〉と一族の戦禍の歴史が解け合う魔術的冒険ほか、痛みと笑いに貫かれた新世代イスラム・マジックリアリズム短篇集。全米図書賞最終候補、O・ヘンリー賞受賞。

ビデオゲームのマップに入り込み、アフガニスタンの故郷で殺されようとしている叔父を救出に向かう少年(「きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする」)、配達され続ける息子の肉片を縫い合わせていく母親(「差出人に返送」)。パレスチナの囚人解放を求めてYouTubeでハンガー・ストライキを拡散する大学生たち(「ハラヘリー・リッキー・ダディ」)。いつまでも死ねない老女を見守る天使と地球(「ヤギの寓話」)。サルに変身し反乱軍を率いることになった青年の数奇な運命(「サルになったダリーの話」)⋯⋯。

9・11以後の数多の瓦礫をさまよう亡霊を、神話的な笑いで紡ぐ戦争文学の新地平。最注目作家による傑作短篇集。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

短編集
アメリカからアフガニスタンへの思いをのせて,いろんな形での文章,文体のアプローチが面白い.
現実のゲームプレイが妄想と混ざり合って進む表題作,どんどん届く宅配便の「差出人に返送」突然サルになった息子と母を描いた「サルになったダリーの話」が良かった.

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2025年05月23日

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