あらすじ
『ラスダン』サトウとシオ最新作は、心が読める女子高生名探偵!?
人の心が読める能力をもった女子高生・大葉香夏子。この能力を探偵として使えば最強なのでは!?
難事件も華麗に解決して一攫千金待ったなし! と意気込むものの――残念ながら香夏子はバカなのだった!
「トリックも真犯人も分かる。だけど――証拠がどこにもないのよ!」
ああっ、読心能力者なのに頭がわるい! 本当に探偵できるのか!?
密室の怪事件、遺言書逸失事件、奇妙な見立て殺人事件――犯人の秘密はお見通しなのに、肝心の証明方法が全っ然わからないんですけど!
ミステリーのお約束を無視して犯人の心を直接読んじゃう、掟破りの新・謎解きコメディ開幕!
※電子版は紙書籍版と一部異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
正統派ミステリではないけれど、このタイトルのラノベとあらすじにしては思ったよりミステリ要素がある!という印象。
そして頭脳明晰という訳ではないけれど、案外機転が利く主人公が、何とかして事件解決につながる情報を真犯人の内心から引き出そう!とする様子がとにかくコミカルで面白かったです。
多くを語るとネタバレになってしまいこの作品の真の面白さを享受できないと思うので、ミステリ風ラノベコメディーを読みたい人はネタバレを仕入れず即読みに行ってほしい!
Posted by ブクログ
本作は一見、軽妙なタイトルとユーモラスな設定で読者を誘う。しかし読み進めるうちに気づかされるのは、その構造の巧妙さと、ミステリというジャンルへの誠実な眼差しである。
心が読める――この能力は本来、探偵譚において“終着点”に置かれるべきものだ。犯人の内心がわかれば、物語はそこで終わってしまう。だが本作はそこを出発点にする。真犯人の特定は容易い。問題は「それをいかにして証明するか」。この一点に物語の焦点を絞った構図は、思いのほか骨太で、論理と社会性を内包している。
主人公・大葉香夏子は、決して愚かではない。むしろ能力面では圧倒的に優れている。しかし“わかる”ことと“証明できる”ことの間には深い断絶がある。そこに横たわるのは、法や倫理、他者への説明責任といった現実的な壁だ。本作は、その断絶をコメディの装いで描きながら、真実とは何か、正義とは何かという問いを静かに浮かび上がらせる。
会話は軽やかで、展開もテンポよく進む。それでも物語の根底には、能力に依存する危うさと、論理によって世界と向き合う困難さが流れている。読後に残るのは単なる爽快感ではなく、「知っているだけでは足りない」という示唆だ。
超常的な力を持ちながら、それでも地道な証明の壁に阻まれる主人公の姿は、どこか現代的でもある。情報が溢れる時代において、真実を掴むことと、それを社会的に成立させることは別問題だ。本作はその構造を鮮やかに可視化している。
軽快さの奥に、理性と責任への眼差しを宿した一冊。
娯楽としての面白さを備えつつ、読者にささやかな思索の余地を残す、成熟したエンターテインメントである。