あらすじ
ごみとは何か――。SDGsというワードが浸透し、プラスチックごみ問題がクローズアップされ、フードロス問題が叫ばれる今日、ごみは「解決すべき問題」として取り上げられることが多い。だが、私たちとごみの関係を、そのポジティブな面も含めて正面から考えることが見過ごされてきた。
私たちの日常生活に密接した「生活文化としてのごみ」に着目して、ごみとモノの境界がどこにあるのか、時代によってその境界がどう揺れ動いてきたのか、ごみとモノの価値の違いとは何なのかを、多くの雑誌や資料、フィールドワークから多角的に検証する。
「祖父の形見の壊れた時計はごみなのか」から説き起こし、高度経済成長期の家電やプラスチックの普及によって新たなごみが「発見」され、日常から「排除」されるようになったプロセスを浮き彫りにする。そして、ごみ屋敷の当事者への1年半以上の調査から、ごみとモノの境界と価値の関係性を明らかにする。
ごみとモノの境界を丹念にたどり歩き、「ごみか、モノか」という二極化した捉え方に異議を唱え、所有者の痕跡などから私たちとごみとモノの緩やかな関係性の再構築を宣言する。フリマアプリの浸透など、今日のリユースの流れにもつながる視点や論点を提示する、ごみをめぐる知的冒険の書。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
とても良い本です。
話の運びや注釈が丁寧で、社会学の概念導入でも置いていかない優しさを感じます。
個人的にはゴミ屋敷のフィールドワークの話がとても刺さりました。社会学的な整理を踏まえつつゴミを溜めてしまう人へ導入される視座はケア以外の何物でもないと感じました。ちょっとグッときました
Posted by ブクログ
こんまりの言葉は、「ごみにならざるをえないごみたち」を捨てる苦しみ、罪悪感に苛まれている現代人への免罪符。
ごみが好き、興味がある、という筆者の渾身の博士論文(を基に書かれた本書)、期待以上にとても面白かった。
Posted by ブクログ
論文としての体裁が表に出すぎている(ように感じられる)のが残念。
昭和の高度成長に伴うごみ問題への行政の取り組みといった歴史部分は、文化史としてある程度は把握している部分もあれどきちんと学んだ機会はなく参考になる。消費文化の裏面としてのごみという概念についての掘り下げとして、ごみ屋敷を取り上げつつ質的調査として考察を進めているが、行儀の良い結論にまとまってしまっているのも論文らしらを感じた。