あらすじ
最期に交わした会話、柩に供えたアップルパイ、死後に読んだ父の手記……そうやって、父の死について書いていくうちに起きた心境の変化は、私の、あるいは、私の哲学の核心に触れるものだった。
哲学者の著者が、父の死をきっかけに書き綴った、喪失と回復の道のりを優しくたどるエッセイ。
「どうしてじいじは死んじゃったの?」
息子の問いに、私はうまく答えることができなかった。
大切な人を亡くしたとき、私たちはどうやってそれを受け止めたらいいんだろう?
【装丁・装画】鈴木千佳子
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Posted by ブクログ
現象学を中心にした哲学を専門とする著者が、自身の父親の死をライトモチーフにした「群像」での連載をまとめたエッセイ集。SNSの書評が気になって読んでみた。
静かで淡々としたまなざしのなかに、親愛や知性が見え隠れしていて、いい文章を読んでいるなぁという心地がした。
お酒が好きだったお父様との記憶をたどり、未知である「死」への不安にゆらぐ息子さんの瞳をみつめ、そこから湧く泡沫をすくいあげるように綴られている。
死ぬというのは、なんなのか。いつか訪れるであろう身近な人との別れを想像し、さまざまな思いが込み上げた。