【感想・ネタバレ】本をともすのレビュー

あらすじ

二〇二二年四月の開店以来、早いもので三年という時間が経過した。毎日、決めた時間に店を開けて、夜が訪れると店を閉める。単純な日々の繰り返しのようでいて、実際はそうではなく、毎日何かが発生する。バタバタするときもしょっちゅうある。

店を開けたあとはお客さんを待つ。基本的にはただ待つ。考えれば出版社に勤務していたときも待つ仕事が多かった。著者から原稿を、カメラマンから写真を、外に撮影に行けば、雲に隠れた太陽がふたたび顔を出すまで待つこともあった。だからなのか、待つことは嫌いではない。

二十五年の会社員生活を経て開業した葉々社は、本屋と出版社を兼務している。本を売りながら、本を作ってもいる。ふたつの出版社に所属していた頃は、仕事が忙しすぎて、自分自身がどんな仕事に向いているのか、真剣に考えたことはなかったように思う。これまでずっと雑誌や書籍の編集に携わってきたのだが、営業の仕事にはいちども就いてこなかった。本屋の仕事を始めてみて、自分はもしかすると営業に向いていたのではないかと感じている。リアルな場所としての本屋、イベント出店、オンラインストアをはじめ、毎日いろんなお客さんとのやりとりがある。本の話を聞いたり、仕事上の悩みについて相談を受けたり、日々、さまざまな年代のお客さんの人生に少しだけ触れている。まだ、三年程度しか本屋の仕事をしていないけれど、五十歳にしてたどり着いたこの職業は、天職なのかもしれない。いまはそう思っている。それほどまでに本屋は楽しいし、やりがいもある。

本書は、私が葉々社を開業するまでと、開業してからの記録である。毎日、どんなことを考えながら本屋の仕事を継続してきたのか、また、目の前に立ちふさがる課題に対して、どう向き合ってきたのかについて、具体的な数字を示しつつ振り返っている。

本屋が好きな人、本がないと生きていけない人たちのことを想像しながら原稿を書いた。本書をきっかけにして、全国各地に小さな本屋がもっと増えていくことを願っている。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

本屋開業の流れや実績が赤裸々に書かれていて、とても参考になった。本屋という存在の考察も興味深い。どこに行っても同じ本があるのは、ある意味どこでも手に入れる事ができる普遍性の提供でもあり、有り難い。売れてるんだな、人気なんだな、と思う反面、本当に面白いのかな、持ち上げすぎじゃないかな、と思ったりもする
本屋って難しいな。でも視野を広げるのに本屋は最高で最適な価値ある場所だと思う。

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

本という存在への深い敬意と愛情が行間にそっと息づいており、読み進めるうちに心がほのかに温まっていくのを感じました。
平易な語り口ながらも、ふと立ち止まりたくなるような言葉が随所に織り込まれており、読後には「出会えてよかった」と素直に思える一冊でした。

今度の休日には、静かな時間の流れる葉々社を訪れてみたくなりました。

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2025年08月04日

Posted by ブクログ

本屋で働いた経験があるわけではない小谷さんが、本屋をやり、自分の理想の選書、場所づくりを追い求めつつ、同時にそれを経済的にも成り立たせるよう尽力していく様子が丁寧に誠実に書かれている。
小谷さんはご自身を「読書家ではない」と書いており、本屋をやりつつそのように言うことは勇気がいるのではないかと思うが、しかしよく考えれば確かに、たくさん本を読むから本屋をやるわけではない。本を人に届けたい、あるいは本を通して人に何かを伝えたい、価値を作りたいと言うことが、本屋であることの中核なわけで、そういう意味で、世の中で言われる「本の虫・活字中毒的な人」が自分の趣味でやるのとは全然違うのである。
自分自身も昔から大量に本を読んでいたクラスタというわけではないので、「自分がたくさん本を読むから」と言うことだけでない、本屋をやることの意味みたいなものを考えることができてよかったように思う。
本書の中では、開店初年度からの売り上げ冊数など詳らかに書かれているが、 本屋、はじめましたのTitleの事業計画と実績と同様に、数字として参考にできるものは多い気がする。
あとは、選書の際に、出版社で「ここからは仕入れない」と決めているところがある、と言うのも面白い。ヘイト本など差別を助長するような本を出している出版社はお断り、と。そう言うのは、独立系書店でこそやれる良い取り組みだなと思う。

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2025年06月09日

Posted by ブクログ

東京にある独立型書店 葉々社の誕生したきっかけや開店してからのことが記される。独立型書店の始めたいと思っている人におすすめで、私も少し興味がある。
この本にはお金事情(売上や費用、粗利)が詳細に書かれていて大変参考になる。参考になると同時に、本屋を生業とすることの大変さが分かる。実際に葉々社は最初の2年は赤字とのこと(個人経営の書店で黒字にするのは恐らくかなり大変)。本が薄利多売な商材ということを痛感する。
それでも私は独立型書店が好きで、自分の家の近くにあったら良いのにと思うし、自分で開けたらなんて素敵なんだろうと思う。
大きい書店も好きだけど、情報量の多さに疲れてしまう。小さなスペースに店主が選び抜いた作品が並ぶ独立型書店だとそんなことは起きない。そんな所が好きだ。

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2025年03月15日

Posted by ブクログ

小谷さんのルーツとこだわりがよくわかる一冊。流行りの本は売らない、大手取次とは組まない、など、こだわりたくさん。出版業界が元気をなくしていく中で、どうすれば生き残れるのかを全力で考えているのが目に浮かぶ。すごい人だ、応援したい。

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2025年07月25日

Posted by ブクログ

脱サラからの本屋さん…大変そうだけど楽しそうに生きてますね〜
流行りの本は入れないとかすごいな〜自分だと給料が増えるなら!という気持ちで入れてしまうんだろうな…

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2025年06月07日

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