【感想・ネタバレ】僕たちは言葉について何も知らない 孤独、誤解、もどかしさの言語学のレビュー

あらすじ

國分功一郎氏・千葉雅也氏 推薦!
最注目の言語哲学者、一般書デビュー。

人間は言葉を操る魔法使いである。その恐ろしさと可能性。
我々はまだ「言葉が何をなし得るか?」を知らずにいる。
——國分功一郎 (哲学者、『暇と退屈の倫理学』著者)

言葉を使うのは難しい。なぜなら、言葉には、人を動かし、現実を変えてしまう不思議な力があるからだ。
本書は、「言葉の力」とは何かを、哲学的な視点から丁寧に説明してくれる。
——千葉雅也(哲学者、『勉強の哲学』著者)

「言葉は人の心を救いもすれば、生涯消えることのない傷を負わせることもできるものです。
誰もが言葉の持ち主なのに、どうにもうまく使いこなせない。
言葉とはいったい何なのでしょう。(「はじめに」より)

【目次】
第1章 人間の言葉は魔術だ
第2章 「言語化」の手前
第3章 あいまいさが生む言葉の本質
第4章 空気、皮肉、げんかつぎの言語学
第5章 聞き手をコントロールするコミュニケーション
第6章 誤解のメカニズム
第7章 文化の尊重と、個人の尊重
第8章 自分らしさの言語学
最終章 「月がきれいですね」が「あなたが好き」になるとき


なぜ「言語化」に長けた僕たちは、これほど孤独なのか?


【目次詳細】
第1部 理論編:言葉の本質

第1章 人間の言葉は魔術だ
言葉には知られた顔と知られていない顔がある
人は生まれながらに他者を必要とする
第一の見かた:言葉は記号である(論理的)
第二の見かた:言葉には含みがある(心理的)
第三の見かた:言葉は〈場〉である(相互作用的)

第2章 「言語化」の手前にあるもの
論理のおおもとに心理がある
知性の裏にある「白衣効果」
知的な大人は「こども」みたいだ
こども心はいつも小さくなっている
人間は理性的? 悪い冗談はやめてくれ

第3章 あいまいさが生む言葉の本質
言葉の黄身と言葉の白身
言葉のあいまいさが誤解もクリエイティビティも生む
言葉の意味は「核」+「ゆるやかな領域」
概念の変化:愛には、憎しみと区別のつかない瞬間がある

第4章 空気・皮肉・げんかつぎの言語学
言葉に含みをもたせるのはなぜか
あいまいな言葉がなぜ生き延びるのか
空気を読む力と、ことばのあいまいさ

第2部 応用編①:嘘、誤解、もどかしさ
第5章 聞き手をコントロールするコミュニケーション
想起する言葉をコントロールすること
「わかる人にはわかる」言葉?
「鳥」から何を想像させるか?
なぜ「優しい嘘」は許され、「誤解させたなら謝ります」はモヤるのか

第6章 誤解のメカニズム
なぜ誤解は起こるのか
「誤解してしまう言葉」の特徴
誤解を利用する戦略的コミュニケーション

第3部 応用編②:生きるに値する孤独な世界
第7章 文化の尊重は、個人の尊重
なぜ個性のない言葉が「個性」を生むのか
文化を尊重することは、個人を尊重すること
言葉はダウンロードして使う
個人の経験の積み重ねが文化になる

第8章 自分らしさの言語学
本来の自分を言語化するには、「述語」に注目せよ
「人間活動」というレッテル貼りの効果
本来の自分を言語化するには、「述語」に注目せよ
違和感から始めよ
自分の中での自分の不在
主語より述語——「傷」より「痛い」に注目する
一般化とかけがえのなさ

そもそも「みんな」にあなたは含まれてない
「レッテル」があなたを比較可能にする
痛みは美しい

最終章 「月がきれいですね」が「あなたが好き」になるとき
孤独感の正体
「みんなでいる安心感」という孤独
「月がきれいですね」が「あなたが好き」になるとき
孤独(Solitude)の先に孤独感(Loneliness)の解消がある
死んだ人ともわかりあえる
「今、役に立つか」は未来の役に立たない
ほんとうの幸せとは何か
人は本来独りである
言葉を大切にする人が幸せをつかむ

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Posted by ブクログ

本題とは離れるがサルトルが提唱した、愛の概念についての新たなものの見方(p.91)が面白かった。相手から愛されたいと思われたいっていう気持ちは、愛(するが故に生まれる感情)だけど愛(しているなら相手の気持ちを自分でコントロールしたいと考えるべき)じゃない。といった内容。つまり、愛という言葉は矛盾を孕んだ概念であると。

一つの単語の概念を突き詰めて考えると、矛盾を孕むことさえあるんだなと言葉の奥深さを学べた。

全体的に難しかったが、最終章手前の、孤独と孤独感の違いを語っていた章が1番読みやすかったかな。宇多田ヒカルさんの活動休止のエピソードを例に挙げていたが、ひとりで自分を見つめ直す時間って改めて大切なんだなと感じた。

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2025年06月13日

Posted by ブクログ

言葉の使い方のハウツー本ではなく、アカデミックな視点で言葉の持つ可能性や広がり、概念を検討していて、非常に面白かった。

哲学的な部分も含め、言葉について複数の視点から語られているが、全て実例がついていて想像しやすい。

0
2025年06月08日

Posted by ブクログ

これも最近の自分の中で考えたいテーマ「言葉」きっかけで読んだ本。言葉の意味やイメージは、その人の背景から生まれる。また、それ自体もだんだんと変化していく。経験自体は共有できないことから言葉のイメージが食い違い、誤解につながっていく。その誤解を解消するために、本著では言葉のニュアンスにセンシティブになること、言葉は自分ごとではなく相互作用の力によって昇華していくことを説いている。私自身過去の経験から孤立する時間が長く、そのせいかつい主観で話してしまうことも多いため、今後さらに成長するための課題にしたい。

0
2025年04月29日

Posted by ブクログ

作品紹介・あらすじ

國分功一郎氏、千葉雅也氏推薦!
最注目の言語哲学者、一般書デビュー。
“人間は言葉を操る魔法使いである。その恐ろしさと可能性。 我々はまだ「言葉が何をなし得るか?」を知らずにいる。”
−−國分功一郎・哲学者・『暇と退屈の倫理学』著者)
“言葉を使うのは難しい。なぜなら、言葉には、人を動かし、現実を変えてしまう不思議な力があるからだ。 本書は、「言葉の力」とは何かを、 哲学的な視点から丁寧に説明してくれる。”
−−千葉雅也(哲学者、『勉強の哲学』著者)
言葉は人の心を救いもすれば、 生涯消えることのない傷を負わせることもできるものです。
誰もが言葉の持ち主なのに、どうにもうまく使いこなせない。
言葉とはいったい何なのでしょう。(「はじめに」より)

*****

言語を通じて哲学的な思考をすることで、人間とは、生きるとは、といったような問いに対する答えを導き出そうとしている書籍。
なんて格好いいことを書いているけれど、実はよくわかっていない。というのもそもそもこの書籍を手にした動機が不純だったのだと思う。「なんか面白そう。暇つぶしにでも読んでみようかな」というのがその動機だったのだけれど、「暇つぶし」で読むには娯楽性が足りず、きちんと腰を据えて読むには言語に対する興味がそれほどにはない、といった宙ぶらりんなまま読んでしまったのだ。
いや、言語に対する興味はあるのだけれど、「きちんと腰を据えて」勉強しようという態度に欠けていたのだと思う。以前、「なんか面白そう。暇つぶしにでも読んでみようかな」という動機で読んでみた相対性理論の本が、こんな脆弱な動機にもかかわらず物凄い感銘を受けて、以降何冊か同様の本を読み漁り、ある程度の知識を得た経験があったので、「同じような経験を、今一度!」みたいな期待もあったのかも知れない。残念ながら今回はそんな期待に応えてはもらえなかったようでした。
あくまでも僕側の問題なので、この本に問題があるわけではありません。ちなみに「哲学的」とは書いたけどそんなに難しい内容は書かれていないです。念のため。

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2025年09月20日

Posted by ブクログ

言葉には力があると説く。
誰もが言葉を読み書きできるようになり、多くの造語や曖昧さが世代ごとに増えている。
さて、本著は、言葉とコミュニケーション、人間関係や社会との繋がりについて重要な役目と力があると説いている。本著では、誠実に言葉と向き合い、他者や社会と対話をすることによる重要性を示唆している。
言葉とは単なる情報の伝達だけではなく、感情や場面にも影響を与え、時には暴力となり、時には人を救うものである。言葉という多様な視点で解釈できるものでも個々の状況や環境、心境によっては大きく伝わり方が違い、誤解は避けることはできない。だが、言葉の質と意図と解釈を踏まえて誠実に対話することにより、修正可能である。
本著では、言葉という表現が他者や社会にどう影響するのかを説き、言葉の在り方と使い方を重要性を説き、私たちがどのように言葉と向き合い、付き合い、表現していくのかを教えてくれる本である。

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2025年07月27日

Posted by ブクログ

人は気づいたら言葉をしゃべり、表現し、分かり合えたり、分かり合えなかったりする。その分かり合えなさや言葉の限界・構造はどこに起因するのか。論理学のようなアプローチよりも、あくまでも著者の原体験や実存的なもやもやを出発点に、あらゆる人たちが遺してきた“言葉”を頼りに思索を深めていく。『ことばへの旅』(森本哲郎)という好きな本があるけれど、言葉には余白(筆者はいろんな喩えを交えて迫ろうとする。たとえば、ブドウの種と実とか房とか)があるからこそ、受け手の解釈によって豊穣なイメージが喚起される。それは同時に孤独やもどかしさを生んでしまうのかもしれないけれど、不確定に揺れ続けるからこそ、誰かに勇気や希望を与えられることだってあるのかもしれない。言葉の海の深さと広さに想いを馳せられる一冊だと思いました。

「言語哲学者として研究を重ねるなかで、〈人はわかりあえないのではないか〉という計り知れない不安が、実は〈自分らしさ〉の根拠でもあると考えるようになりました。人はみな誰とも違うからこそ他人を完全に理解できない可能性もありますが、みな他の誰とも違うからこそ〈その人らしさ〉が出てくるでしょう。私は、その違いを見きわめることが、孤独感にさいなまれる人を救うと考えます。」

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2025年07月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった気がする。
でもなんというかこれをちゃんと読むことができなかったのは自分の度量が足らないせいで、もっと集中して深読みしたら受け取れるものがもっと多かったんだろうなって思う。
再読したら違う発見がありそう

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2025年05月26日

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