あらすじ
ぼくらが生きてきた時代と作品
若者に媚びない作品ガイド
アニメ第一世代、ライトなオタクを自任する元書店員が、アニメの変遷にあわせ政治・事件・文化・風俗など時代の動きをワシづかみにする! 作品が生まれた時代を生きた著者の血肉のある作品史――出版業界を生きたものしか語れない、書店業界20世紀後半の裏面史でもある異色作。21世紀アニメについても「偏向的おすすめ作品一覧」でフォロー。
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Posted by ブクログ
著者とほぼ同世代なので鉄腕アトムから始まり次々とアニメがブラウン管(薄い液晶画面なんてそれこそアニメの中のテクノロジーでした!)から溢れかえるテレビアニメカンブリア期みたいな時代の興奮を思い出しました。リアタイ視聴しかないので、何を観て何を見ないかの判断…兄妹でのチャンネル権の争い…習い事の時間との葛藤…そもそもの親がテレビを見ていい時間の総量規制…女の子アニメへの距離感…そしてチャンネル数が少ない地方にとっての大都市への憧れ…いまや一億総オタク化して自分の好きなコンテンツに向かっている時代から見ると、なんとも不自由な季節でしたがこの黎明期が日本のアニメクリエティブの源泉だったのだと思います。(もちろん双子のクリエイティブとしての特撮との同時進行も忘れちゃいけない!)そしてその世代がこのジャンルを卒業しそうで卒業しなかった、というまだこの時はわかっていなかった現象がその後の日本のメンタリティをつくって行ったのだとも思いました。初めは鏡面対象性と感じましたが、やはりガンダムとの距離感で違う人生になっていくことを感じました。研究者や創作者の語る歴史、とは一線を画して視聴者の歴史はかなり新鮮でした。なので著者の実人生との絡み合いが極私的で面白かったです。成田空港の管制塔占拠の思い出とか、組合活動の話とか、アニメの歴史と社会の空気の混在感が読みどころです。安彦良和の「革命とサブカル」に代表されるようにあの頃の理想主義とアニメの関係が、視聴者としてのポスト団塊の世代にはシルクスクリーンのように複写されているように思えます。まったく違うけど映画「いちご白書」とユーミンの『「いちご白書」をもう一度』の関係を感じました。この本「60歳からはアニメ三昧」という題で、ちょっと損していると思います。