【感想・ネタバレ】BLマンガの表現史 少年愛からボーイズラブジャンルへのレビュー

あらすじ

少年愛の時代から呼称を変えながら50年以上受け継がれてきた「男性キャラクター同士の恋愛やセックスを軸にする物語」は、巨大なメディア産業の一翼を担うBLへとどのように至ったのか。ポピュラー文化の一つのジャンルとして確立する過程で、表現の型やお約束はどう変遷してきたのか。そもそも、BLをBLたらしめるものとは何なのか。

1970年から2000年に商業ベースで刊行された2,873作品を幅広く数量的に分析して、時期ごとの特徴を浮き彫りにする。とりわけ、ストーリーやキャラクター、カップル、セックスシーンの特徴を比較して、ジャンル総体の傾向を分析する。そのうえで、その背後にある女性を抑圧する社会規範との関連を捉える。

「悲劇から恋の成就というハッピーエンドへ」「女性的な美しさから男性のかわいさへ」などのジャンルの変化を実証的に明らかにして、女性たちが時代ごとの厳しい現実を生き延びるために紡ぎ出してきた表現のダイナミックな歴史をたどる。

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Posted by ブクログ

1970年代から2000年代に至るまでのいわゆるBLマンガを数量的に分析し、主観やポピュラーな作品に頼ることなく傾向を暴き出そうとする研究。
以前BLジャンルは女性によるミサンドリー意識、ホモソーシャル的価値観への抵抗という名目に支えられているという論を見掛けたが、実際に分析してみると一元的にそうとは言い切れない空気感がある。
女性的な価値観から脱却し、従来の性規範にとらわれない「理想的な恋愛」を描く為に作り出された〈男×男〉の物語が、時代を経て一ジャンルとしての確立をみるにあたり、〈能動側〉は男性的、〈受動側〉は女性的な表象を得たという点は興味深い。「一般的な」異性愛のスタイルと変わらない男女の定型に近い形としてひとつの完成をみたのが筆者の言う「ボーイズ・ラブ期」であり、そこからその定型を反転・覆す形で細分化されたのが現在のBL市場と見るべきかもしれない。
東浩紀も再三述べていたが、オタク的サブカルチャーは往々にして定型的なキャラクター・ある特定の「属性」を持ったキャラクターに支えられている。東が分析したそれはいわゆる男性向けであったのに対し、本著で分析された定型は女性向けジャンルにおいても示されるものである事実は興味深い。

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2025年07月24日

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