あらすじ
解剖学とは、どんな学問だろうか。メスやピンセットで人体を直接取り扱う原始的な学問という印象とは裏腹に、その対象は私たちにとってかけがえのない切実なものであり、科学者は自然にどのように立ち向かい、自然科学という知の体系を導き出せるかという本質的な問題が集約されている。解剖学という枠組みなしには、人体は無秩序な肉塊にすぎない。本書は、こういった無秩序な自然を整理し、秩序だてて記載する営みである「自然誌」の視点から、解剖学の歴史と、解剖学者が抱えてきた問題のさまざまを考察する。
16世紀のヴェサリウスによって始められた近代的な解剖学は、現代医学の成立にあたってどんな役割を果たしたのか。兄弟ともいえる学問分野、生理学とはどんな特徴によって分かれたのか。
生物の形態には、いったいどんな意味があるのか。それを探究する際に現れる機能論と先験論という立場の対立。そして比較解剖学と進化論の関係や、物質論と顕微解剖学の関係など、論点は多岐にわたる。
さらに、解剖学者がたえず気にかける「形態と時間」の関係――個体発生と系統発生の重複するイメージや、教育と研究の関係まで。
解剖学の歩みをたどりながら、自然科学がもたらす成果だけではなく、自然そのものに目を向ける自然誌的な視点が、人間にとって必要なことではないか――と問いかける深い洞察の書。〔原本:『からだの自然誌』東京大学出版会、1993年刊〕
目次
はじめに 3
第一章 ヴェサリウスとハーヴィー:医学の基礎としての人体解剖学
第二章 解剖学と生理学:人体についての自然誌と自然哲学
第三章 生物形態の意味(一):解剖学における機能論と先験論
第四章 比較解剖学と進化論:生物科学における事実と解釈
第五章 生物形態の意味(二):顕微解剖学と物質論
第六章 生物界における階層性:多様性と反復可能性の問題
第七章 解剖学と時間:個体発生と系統発生
第八章 解剖学の現在:人体という自然をめぐって
学術文庫版のあとがき
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Posted by ブクログ
養老孟司氏の「形を読む 生物の形態をめぐって」に関連する書籍として、購入して読んだ。書籍の内容としては近代的な「解剖学」がどのように生まれたのかの経緯・背景を最初に解説し、その後、人体における「自然誌」と「自然哲学」に分類して解説している。
著者としては「自然誌」と言われる自然界にある物事を記載し、無秩序な自然を整理&秩序だって記載する営み、としているが、それと対比させられる「自然哲学」はそれらの事柄を基に自然界を支配する法則性を解明する学問と位置づけている。
解剖学はどちらかといえば「自然誌」としての取組みであるが、それから派生した生理学等は「自然哲学」としての取り組みであり、結論としてはどちらも必要、という形になっている。(この辺りはこれまで多くの議論があった内容を、「解剖学」として改めて議論している感がある。)
また、その後の解剖学の系譜として「機能論」「形式論」「物質論」としての議論の経緯を説明しており、顕微鏡の発達も相まって「物質論」が台頭してきた経緯を説明している。
全体として、解剖学として全体だけを見ていても顕微鏡サイズだけを見ていてもそれぞれの限界があること、また、「機能論」や「物質論」にとらわれてもまずいということ、最後には解剖学としての教育的な観点も記載しており、著者が言いたいことを出来るだけ盛り込んでおり、言いたいことが多数ある状態になっていると感じた。
(読者の方も言いたいことをすべてくみ取れているかは微妙だと感じた。)