【感想・ネタバレ】ぼくがぼくであることのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

児童文学の最高傑作。何度でも読みたい。私が大人になってから理解した「私は私であること」がこんなにも分かるように描かれている。

5人兄弟の中で一人だけ出来が悪いと毎日小言を聞かされている秀一が、夏休みの十数日間の家出を経て「僕」の自由は誰にも侵せないことを知り、教育ママの城が崩壊するまでの話。読み始めは、母にガミガミ叱りつけられ妹に告げ口され、学校では廊下に立たされと萎縮してしまいそうな主人公・秀一に共感した。成績が悪いと言っては一時間も小言を聞かされ、隠したテストを見つけられては他の兄弟と比較され、兄弟にはバカにされ、母親の行き過ぎた教育ママぶりに友達もできない。本当に秀一を勉強ができるようにさせたいのなら、誰かが勉強を見るようにさせたり他の兄弟と比べることをやめて彼が前進したら褒めたり、秀一のペースに合わせて行動を起こすべきだろう。なのに一方的に叱りつけ感情をぶつけるだけで、これでは秀一がくさるのも当たり前だ。
そんな秀一も夏休みにどことも知れない田舎の家に泊まることで変わってくる。いや、変わったのでなく、元々の秀一の性が出てきたのだろう。嘘をつきたくない、お礼はきちんとする、これらは秀一から自然に出てきたものだ。
そうして清涼になり自宅に戻った秀一を待っていたのはいつもの母と、世界の見方の変わった自分だった。そう、母は理不尽である。誰も自分の自由を縛ることはできない。あれだけ疎ましく感じていた妹も動物園のサルのように感じる。母は哀れだ。
他の兄弟も母を疎んでいることが分かり、母の牙城は崩壊する。本当に家出から戻ってからの世界の見え方の移り変わりが見事。環境は何も変わっていない。ただひとつ、「僕が僕であること」。昔の出来事は関係ない。子供にとっては今が全てなのだ。大人だからと言って子供を好きなようにしていい訳ではない。私は私、あなたはあなた、私とあなたは違う。そんな当たり前だけどはまってしまうと抜け出すのが難しいことを秀一と夏代は知る、知っている。同じ人間ではないからしたいことも違うし、衝突するかもしれない。でもそれがごくごく当たり前のことなのだ。

本との出会いは縁である。この本に出会えて良かった。解説で紹介されていた本を次は読みたいと思う。
本当にこの本は心が洗われる。子供の頃に出会い繰り返し読みたかった。今読んでも遅いという意味ではなく、それだけ確かなものを残す本だから。

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2014年01月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

子供向けの読み物と思って油断した。

兄弟の中で、ひとり、出来が悪いと母に毎日小言を言われる主人公、秀一。兄の良一、優一、姉の稔美、妹のマユミ。ほかの兄弟は、成績もよく、母の小言を言われる事がない為、秀一だけが一人、母の小言を受ける事になる。

この本が書かれた当時の時代背景が、今とは違うから、「全学連」などという耳慣れない言葉も出てきて、少々分かりづらい部分もあるけれど、この本の世界に引き込まれる。

妹のマユミの告げ口から、母との言いあいになり、軽い気持ちでした家出が大きな事件になり…。

ここまでめちゃくちゃな母親はないだろう、と思いながらも、これに近い母親はきっといるだろうと思う。
この母親がしたこと(秀一宛ての手紙を勝手に読んだり、秀一が受け取れないような細工をしたり、秀一が出した手紙を盗んだり)は、今の時代なら子供の人権を踏みにじる行為として完全に非難されることだろうし、あんな結末にはならないんじゃないかと思う。
母親は子供から訴えられてもしょうがない行為をしているし、この本が書かれた時代だから、こんな母親でも、ある程度容認されてしまっているけど、今なら絶対に許されない。

で、最後まで読んでいった時に、もしかして私、この本を子供の頃に読んだかも知れないと思った。
たぶん、この本を読んだ時に、「親の言う事を聞く事」が正しいという考えは間違ってると思って、各家々に、法律のように決まりを作ればいいのにと考えた気がする。
そうすれば、親が間違った事をしたり言ったりしたら、親も子供に謝らなければならなくなるし、子供が親に対して、言ってる事や、やってる事に矛盾があると思った時に、はっきりと言う事が出来る。
親は親であるから正しいのではなくて、親でも間違う事はあるし、その時は、相手が子供でも謝らなくちゃダメだよな、と子供ながらに思った。

そして今、私は親になっているけど、あの頃の、子供の頃のに抱いた気持ちを、忘れずにいるかというと、忘れてはいないけれど、実行できているかというとそうでもなくて。
親でも子供に謝るべき時は謝らなくちゃならないけど、年を取ると、素直になれなくなる。変なプライドが高くなったり。でも、気をつけなくちゃ。

時代背景が違うから、今の時代ならとても考えられないほどの酷い事をした母親でも、最終的には家族から受け入れられて、家族が再生していくことを示唆したようなラストになっているけれど、今の時代に同じような設定でストーリーを書いたなら、最後は、母親は自分のした事の報いで、家族から見捨てられてもしょうがないんじゃないかと思った。
この本が書かれた時代に、ここまで酷い母親が存在したのかどうかは分からないけれど、「親の言う事は絶対」という考えの親が存在したであろうとは思う。
今は親と子が、友達のようなフレンドリーな関係になっているから、このような親子関係は考えられないし、そういう親子関係を異常と感じるけれど。

読み始めの、冒険ものかなにかかな、という軽い気持ちが、読み終わった時には、色々な思いが渦巻いていた。
親になって読むと、また子供の頃に感じた思いとは違う思いを抱く。
子供は、これを読んで何を感じるのかなぁ。

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2012年03月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごい。これが児童文学か?小6の子供が主人公なだけで、ただの児童向け読み物とは思えず。「常識や慣習といった束縛にとらわれず、自分の頭で考えてみよう。そのために、外の世界に目を向けよう」という思いがある。
ラスト、自分の家が燃えたのにも関わらず感じてしまうすがすがしさは、やはり今までの束縛が壊れだしたからだろう。結局のところ、何も問題は解決していない(解決しそうな気配はあるけれど)。それでも前向きな気持ちになるのは、自分の頭で考えだした人が行動を始め、今までの束縛から逃れだしたからだ。

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2012年01月22日

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