【感想・ネタバレ】鳥かごの詩のレビュー

あらすじ

特別付録、北重人エッセイを収録!

「人間生きていれば、消化しきれず心の奥に残してきたことの一つや二つはある」。
働くことも、生きることも、こんなに真っ直ぐだった。
時代小説に新たな地平を開いてきた北重人が描く、あの頃の風景、そこかしこにあった人情、そして青春。
昭和41年。東京は下町に、奇妙な新聞販売店があった。段ボールで仕切られた「鳥かご」と呼ばれる個室に住み込みで働くのは、風変わりな面々。配達先も癖のある住人ばかり。山形からやってきた受験浪人の康男は、初めての東京、仕事に悪戦苦闘し、恋や事件に巻き込まれていく。
“人生が動き出した時”を描いた、急逝した作家、渾身の青春譜。

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Posted by ブクログ

北重人さんは50歳のころから小説を書き始め、2004年56歳で本格デビューした時代小説の作家さん。それからわずか5年の活動で急逝されました。
同じ頃、同年代で葉室麟さんがデビューしたことになりますが、私は北さんの方が好きでした。
その北さんの唯一の現代長編小説であり、北さん自身の体験を背景にした作品です。

舞台は昭和41年の東京。大学受験に失敗し、浪人を父親に反対された主人公が、家出のように東京に出てきて、新聞販売所に住み込みで働きながら大学を目指す1年を描いています。
ようやく探し当てた受験勉強に必須な個室のある新聞販売所。個室とはいえ、三畳にも満たず、壁はダンボール、住人からは鳥かごと呼ばれる部屋。同居するのは、どこか訳ありの人びと。

たぶん、北さんの中に強く印象に残った事件なのでしょうが、本筋とはかけ離れていて、何故このエピソードを入れる必要があったのかと思う所も何か所かあります。しかし全体に、若者の悩みや人々の優しさをストレートに描き、やや暗さは有るものの、本の帯にある「渾身の青春譜」という謳い文句にふさわしい作品でした。

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2016年07月23日

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