【感想・ネタバレ】川まつりの夜のレビュー

あらすじ

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おじいちゃんの家にひとりで遊びにきたリュウ。にぎやかな音で、夜中に目覚めたリュウは裏口の扉を開けると外はおまつりで大にぎわい。わたがしやさん、おめんやさんに金魚すくい……でも、どこかへんみたい。かつて川だった通りで起こる不思議なお話。

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Posted by ブクログ

 子どもの持つ瑞々しい五感で捉えたのもの、それは、かつて目に見えるかたちで存在していたものの恩恵を受けていたものたちが、複雑な胸中を秘めながらも歌い上げた、ささやかな喜びの声だったのかもしれない。


 夜中に開催された不思議なお祭りは、最初こそ、ちょっと奇妙で怖い印象があったけれども、次第に増してきたのはやるせない哀愁感であり、そうさせたのは、おそらく私たち人間なのである。

 テーマとしては昔から取り上げられてきたものなので、てっきりこのような民話があるのかと思ったら、岩城範枝さんのオリジナルだそうで、時の経過と共に変わってしまったものからでも変わらないものを感じられることによる、『あの頃は良かったな』で終わるのではなく、そこには何度取り上げてもいいくらい大切な、この星で生きているのは人間だけではないということを教えてくれる。

 そして、その恩恵は人間も受けられた筈なのに、利便性を追求しすぎたあまり、今のような尋常でない暑さを引き起こしたのかもしれないと思うと、私が毎日暑さに苦しんでいるのも、ある意味自業自得というわけで、まさに罰当たりなことをしたのであろう。


 私たち人間よりも、遥か昔から、この星で生きている様々なものたち。

 どんな目にあっても、彼らは恨むわけでもなく、こうして寄り添って人間の心に染み入る感覚を共有してくれることには、共生できる可能性だって教えてくれているのに。

 出久根育さんの幻想的で淡い涼しげなグラデーションは、かつてのそれだったら、きっともっと涼しく感じられたであろうに、その本来の素晴らしさが見返しだけにしか表れていないのが残念で、本書のように、まずは知って感じることから意識が変わることを、自分達の祭りを楽しみながら、考えてみるのもいいかもしれない。

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2024年08月02日

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