【感想・ネタバレ】サラブレッドはどこへ行くのか 「引退馬」から見る日本競馬のレビュー

あらすじ

引退馬を問うことは、競馬の未来を問うことだ。

ターフを去った競走馬は、その後どこへ行くのか――?世界で最も馬券が売れる国・日本が抱える「引退馬」という産業課題。我々にとって馬とはどのような存在であるべきか?引退馬を追った映画「今日もどこかで馬は生まれる」の監督を務めた、競馬を愛する著者が、誕生から現役生活、セカンド・サードキャリア、肥育の現場まで、サラブレッドの”命がけ”の一生を、7年におよぶ現場関係者への綿密な取材を通して明かす。繊細で複雑な課題の核心を丁寧に、かつ情熱をもって世に問う、至上のノンフィクション。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

今まで見て見ぬふりをしてきた問題だったので、感じ入ることがたくさんあった。
「引き算」的発想ではなく、「足し算」的発想で支援できるなら、喜んで巻き込まれたいと思った

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2024年12月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

競馬を走れなくなった馬の行先と、その福祉をめぐる話。著者はこの問題に関する映画を自主製作しており、その流れで本書の執筆もされている。
毎年7000頭のサラブレッドが競走馬になるために生まれてくる一方で、4000頭ほどの引退競走馬が食肉として屠畜されていると推定されるという。(このあたりの統計がちゃんとないのも一つの問題なのだろう。)屠畜を免れたとしても、馬の引退後の”余生”は長く、天寿を全うさせるのには経済的な面を含めて課題が多くある。本書では、これらの現状と、それに対する取り組みを多面的に紹介している。

牛や豚が日常的に屠畜され食されている現状にあって、なぜ馬を特別視するのかという意見は多いらしい。それに対しては、「はじめに」で書かれていた引退馬問題の定義に関する一文が著者のスタンスをよく表していると思う。
「引退馬問題とは、家畜として生まれたのに、それを超えた存在となり、その後また家畜として処理されることに対する、競馬ファンを中心とした人々の違和感によって生まれている問題だ」。
家畜や経済動物としての側面と、ペットやアイドルとしての側面が馬にあるから、この問題が生じている。(ウマ娘が流行ったので、アイドルという表現は大げさではない。)ただ、後者の側面を見出す程度は人それぞれだ。
荒川弘の漫画『銀の匙』で、牛や豚を肉にするのは受け入れられるが(乗馬用の)馬を肉にするのは悲しい、なぜなら馬にこれまで注いできたのは乗馬としての愛情であって肉にするための愛情とは異なるからだ。というようなセリフがある。それと共通するものを感じた。人間側がどのような意図で育ててきたかが大事ということだろうか。
このあたりは、自分にはまだしっくり来ていない感覚だ。実際に動物に触れあったり、愛着を持って接してみたりしないと分からないのかもしれない。ただ、自分事としてしっくりこないからこそ、「はじめに」での著者のスタンスが明示されているのは良かった。競走馬に対してそのような特別な感情をもつ人がいることは想像できるし、自分事でないということをある種前提として読むことができた。

本書を読む前に片野ゆか著『セカンドキャリア 引退競走馬をめぐる旅』を読んでいたので、補完したり比較したりしながら読んでいた。『セカンドキャリア』がセラピーホースに焦点を当てており、著者の体験ベースなのに対して、本書は引退馬に関わる様々な面をなるべく多角的に、かつ客観的に捉えようとしているという印象。数字や客観的データが示されているのも良かった。特に、少なくない引退馬が屠畜され食肉になっているという事実を正面から書いているところが良かった。

関係者への取材や統計データなどをもとに構成されている本書だが、著者の思いは最終章に現れている。業界には、引退馬を全頭救うことは不可能(だから少しでも多くの馬を)という認識が広がっているということだが、著者はそのスタンスに疑問を呈しているように見える。また、最近JRAを始めとする競馬業界が引退馬支援に動き出したことを歓迎しつつも、個別のエピソードが美談とされ数の議論がおざなりになってしまうことへの危惧があるように窺える。

以下、メモ的に。
・競走馬のうち、成績が良いなどの一握りの馬ではあるが、種牡馬・繫殖牝馬としての余生があり得る。超一流の馬では、この”余生”の方が現役時代に稼ぐ賞金よりも何倍も経済的インパクトが大きいため、場合によっては早々に現役を引退させてセカンドキャリアにシフトさせるということがある。
・というか、競走馬って人工授精じゃないの?(牛は人工授精らしいので、てっきり同じようにするのだと思っていたけれど・・・?)
・ウマ娘の流行もあって、引退馬への一般からの寄付が増えている。これらは養老牧場、つまり、特に何ら経済的に稼ぐことなく余生を過ごす馬たちのために使われている。
・一方で、乗馬以外の方法で引退馬が稼ぐ仕組みも模索されている。有名馬を見に行ける観光的な道もある。ヨギボーのCMに馬が出ていたことがあったが、あれは牧場がヨギボーとスポンサー提携を結んでいたからだという(出演していた馬も有名な馬らしい)というのを知って驚いた。
・デファクトスタンダード「事実上の標準」という言葉

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2025年02月23日

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