あらすじ
美しく整った容貌とは裏腹に、他人を傷つけることを厭わない松嶋理利は、それゆえに『櫻丘寮の悪魔』と呼ばれている。そんな彼を、愛情をこめて『リリ』と呼ぶ生徒がひとりだけいた。松嶋の従兄であり、櫻丘寮の寮長も務める斎木志鶴だ。誰をも信じることのない松嶋にとって、志鶴だけは信じることのできる存在であり、志鶴がいるからこそ、松嶋は生きていることができたのだ。そのはずだった──、志鶴のある言葉を聞くまでは…
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Posted by ブクログ
『私立櫻丘学園寮シリーズ』三作目「櫻丘寮の悪魔」と呼ばれる松嶋理利のお話。
見た目は美少女だけど、口を開けば毒しか出てこない松嶋が唯一心を開いているのが
ひとつ年上の従兄斉木志鶴。松嶋のことを愛情をこめて『リリ』と呼ぶ。
子供の頃からお互い深く愛し合っていながらも、重すぎる過去に囚われ、それぞれが贖罪のような気持ちを抱いている。
償いの気持ちといっそ壊してしまいたいと願うほどの執拗な愛情が心の中で相反する志鶴の静かな狂気。
志鶴に重い十字架を背負わせていることを自覚しながらも、愛ゆえに真実を話せず、その手を離せないリリの冷たく燃える情熱。
いっそ、壊してほしい。その狂おしい愛の業火で焼かれてしまいたいと切望するリリと相手を想うあまりやさしさで情熱を覆い隠す志鶴。
壊れ物みたいにやさしくされればされるほど、心が遠くなるもどかしさ。
読んでて痛い・・・。苦しくなる。嫌なお話ではないけれど。
時間軸が何度も移動するのでその辺がちょっとわかりづらい。
表現も結構抽象的で『志鶴の禁忌』『志鶴が初めてリリの絵を描いた時のエピソード』などは
はっきりとした言葉で言及していない箇所もあるので、実際何があったか想像力が必要です。
本作を読んで、1作目で烏丸旭に必要以上につらくあたるリリの気持ちがすごく理解できた。