【感想・ネタバレ】磯崎新論のレビュー

あらすじ

2022年12月28日に91歳で亡くなった世界的建築家・磯崎新。
「デミウルゴスの化身」たらんとした「アーティスト/アーキテクト/アーバンデザイナー」が求めた〈見えない建築〉とは何か?
群像連載の前人未到/正面突破の決定版「磯崎新論(シン・イソザキろん)」がついに単行本化!

「それゆえわたしはここで、たとえ無謀ではあっても、アーティスト/アーキテクト/アーバンデザイナーの全領域の総体をテクストとしてまるごと扱い、自分なりの磯崎新(ルビ:デミウルゴス)像をくっきりとした輪郭で描くことを選ぶ。「シン・イソザキ論」という、庵野秀明の『シン・ゴジラ』や『シン・エヴァンゲリオン』をもじったような別名の併記は、磯崎最初期のSF的マニフェスト「都市破壊業KK」における「SIN/ARATA」という二体の分身への自己分裂に対応している。それをルビで表わすこともまた、この種の分裂状態を象徴する磯崎特有の書体の擬態(ルビ:もどき)である。「シン」は間違っても「真」ではなく、「磯崎新論(ルビ:シン・イソザキろん)」という表記はむしろ、みずから「新(ルビ:SIN)」なるもの─他者─であろうとする自覚の表現なのだ。」(本文より)

※電子書籍版では一部図版の掲載を割愛しております。

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Posted by ブクログ

磯崎新を歴史化する初の試みで、大変な労作。
著者に心から感謝です。
意外と読みやすい(飽きない&だれない)本ですが、図版が殆どないので少しイメージが湧きにくく、また本文だけで650ページ超えの大作なので、しっかり読み込むことはできなかったというのが本当のところ…それでも読んで良かったし、面白かったです。
建築家としては相当恵まれた出自の磯崎新ですが、永遠に満たされない方法で創作せざるを得なかった、芸術家タイプの人だったようです。
磯崎新というと作風からコスモポリタンなイメージですが、日本建築(和様建築?)の強烈な原体験を持っていて、それが晩年にも現れます。
著者はデミウルゴスと表現していますが、ようするに建築家である前に文人でした。
一般に、建築家は自作を正当化するために書いたり語ったりするわけですが、磯崎新の場合は存在論的不安(建築家という他者)から夥しい言説を生産し、それが意図せず磯崎新への批判や理解を難しくして、孤高の存在へと追いやってしまった…晩年にはある程度の決着をつけているようにも思えますが、やはり建築界や社会、国家は安住を許してくれず、最後まで自分自身と闘い続けた人だったのだと思います。建築という一種の呪いから目を背けず、引き受けて闘った人なのかなと。
そんな孤高の文人のドキュメントが本書です。

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2025年01月03日

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