【感想・ネタバレ】このドキュメンタリーはフィクションですのレビュー

あらすじ

作り手の作為を見抜くと、ドキュメンタリーは悪魔的に面白い。『映画を早送りで観る人たち』の著者による、令和の新しいドキュメンタリー入門書! あなたの部屋にカメラが設置してある状態での“普段の生活”と、カメラがない状態での“普段の生活”は、絶対に同じではないはずだ。『さよならテレビ』『ザ・コーヴ』『主戦場』『映像の世紀』『水曜日のダウンタウン』……。数々の作品を通し、ドキュメンタリーの加工性に迫る!

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Posted by ブクログ

反語的な題名から、事実(ファクト)を伝える手法、ドキュメンタリーのあり方について解説する。流行語大賞「ふてほど」が不適切報道と揶揄されるように、ファクトを伝えるメソッドについて考えさせられる一冊。

カメラマン監督等の作者の視点が入った時点で純粋なノンフィクション作品はあり得ない。ドキュメンタリー作品も然り。
それをあくまで事実と勘違いする人の多いことか。

本書はドキュメンタリー映画についてが中心だが、新聞、テレビの報道も同様に撮影した素材を取捨選択した作為が含まれている。果たしてどれだけの人たちがそのことに気づいているのだろうか。兵庫県知事のリコール再選からマスコミとSNSの公平性か論点となりつつある今、本書は実にタイムリー。

マスコミ、SNSその他反乱するネット記事、情報を入手しやすい時代だからこそ正しく判断する能力を誰もが持つべきだと思う。

「歴史とは何か」のE.H.カーにつながる重大なテーマを投げかけた一冊である。

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2024年12月07日

Posted by ブクログ

本書で取り扱われるドキュメンタリーの幅の広さにまず驚くし、各章抜かり無く読み応え抜群で面白かった。バラエティ番組、プロレス、そしてフェイクドキュメンタリーまで言い及ぶことによってくっきりと浮かび上がるドキュメンタリーの本質。

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2024年11月09日

Posted by ブクログ

 広辞苑 第七版には、ドキュメンタリー「虚構を用いずに、実際の記録に基づいて作ったもの。記録文学・記録映画の類。実録。」とかかれているそうです。
 しかし、著者はこう言います。「ドキュメンタリーは虚実ないまぜ、意図と作為の産物である。」「ドキュメンタリーは虚実皮膜(だから面白い)、被写体も作り手も本心を隠しているかもしれない(から面白い)。」と。

 広辞苑の説明とはずいぶん異なりますw
 たとえ実際の記録に基づいて作ったものだとしても、切り方、つなぎ方は製作者の意図によるものであり、そこには製作者が視聴者に伝えたいことがデフォルメしてまとめられています。ワイドショーの記者がインタビューをして、都合のいい発言を部分部分繋げるのと大差ないのかもしれません(極論)。
 ドキュメンタリーの被写体にしても、写るということで、カッコつけたり、盛ったり、逆に控え目にしたりするかもしれません。ニュースでインタビューを受けたら、サービス精神が発揮されるのと似たところがあるかもしれません(偏見)。実際の記録だとしても、編集される限りドキュメンタリーは「作品」なのですね。

 著者は、ドキュメンタリーの作為性を「お笑い」や「プロレス」の構造と比較して、酷似性や手法を語ります。また、意図的なものと分かった上で、見る側の楽しみ方にも言及しています。
 この本を読んで、ドキュメンタリーに対して納得するか、ガッカリするかは、あなた次第です。この本を読むか読まないかも、あなた次第。
 そして、わたしのレビューを信用するかどうかも。。。

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2024年12月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ドキュメンタリーが、より恣意的である、ということは百も承知。それを、分かりやすく実例を通じて解説してくれている。

やはり鑑賞済の作品は良く分かる。
『主戦場』などは、なるほど、と大きく首肯しながら読んだ。

また、被写体との距離、関係性の濃淡で捉え方が異なってくるという指摘も面白かった。
確かに、日本人が撮る日本の姿と、他国の人による切り取り方は明らかに異なるだろう。
それが、何を意図し、結果、何が見る側に伝わるかは、送り手の予想を超えることも、ままあろうかと思うが。

見る側は、そうした、制作サイドの意図や、被写体との関係性や、見せ方の技巧をよく吟味しつつ作品を理解する必要があるし、結局、作品は、送り手と受け手の共作とも言えるものである、という思いを新たにする。

ドキュメンタリー、セルフドキュメンタリー、モキュメンタリーに加え、お笑いの現場にまで言及したのも意外性があった。「しこみ」はどこまでフィクションかという議論は面白い。
確かに、笑いは、現場で起こる予想外のハプニングが一番、笑える。笑わせることを意図した制作サイドにとって、そのファクト(ハプニングという事実)は、どこまでフィクションか? なかなか、興味深い、問題提起だ。

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2024年10月24日

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