あらすじ
「キャリーしてやるって言ってんだけど」
憧れのeスポーツプレイヤーは車いすに乗った少年だった──!
審査員絶賛の第64回講談社児童文学新人賞受賞作、ついに書籍化!
★主な内容
中学二年生の勝生には、最近ハマっているeスポーツのストリーマーがいる。
名前は「lion」。不遜な態度と、見るものを魅了するプレイングから、ついたあだ名は「王様」。
ある日訪れた病院で出会った車いすに乗った少年の声は、lionそのもの。
思わず正体を確かめた勝生に、lionことリオは、「ゲームでキャリーしてやる」という。
ゲームを通じて友情を深める二人だが、ある日、大会の招待状が届き……。
読む者の心を震わせる、「王様」と「家臣」の友情ストーリー!
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Posted by ブクログ
中学二年生の勝生は、ストレスのせいか胃腸が弱り病院に来ていた。会計を待っている間、大好きなゲーム配信者lionの配信をイヤホンで聞いていた。口が悪く、王様のような振る舞いをするlionが最初は苦手だったが、今ではすっかりファンの一人。
ふと、イヤホンを外して会計の呼び出しに耳を傾けていたところ、聞き覚えのある声が聞こえてきた。それは今の今まで配信で聞いていた音とそっくりの人の声だった。
第64回 講談社児童文学新人賞受賞作
さすが新人賞受賞、納得の面白さでした。
オンラインゲーム、撃ち合い殺し合い(Fortniteのようなものでしょうか)、実況配信など、全く自分に馴染みがないものを題材に、しかもどちらかといえばあまりいいイメージを持っていないものだというのに、こんなに面白く感動できる内容だなんて、と驚いています。
勝生主体の文章なので、ハンデを抱えている理王に対してそんなつもりで勝生は言ってないのにな、深読み斜め読みし過ぎじゃない理王、ちょっと卑屈すぎない?って勝生に同情してしまう場面も何度かありましたが、理王にとっては今までの経験の積み重ねで偏った捉え方をしてしまいがちでもあるし、勝生のハンデに頓着のない物言いが却って刺さってしまうこともあるのだなあと、読めば読むほど身体的なハンデについて考えさせられる内容でした。
以前、SNSで炎上した、車椅子の方が映画館で身障者用ではない席へ従業員に運んでもらった話を思い出しました。その流れで、「身障者はいつでも謙虚な姿勢で「すみません」「ありがとう」を言わないといけないのか」という意見をみましたが、まさに理王の言う「俺はいつまで頭下げればいいんだ!」の言葉と重なりました。
私個人の意見ですが、私達健常者はしてもらったことに対して「ありがとう」を言おう、お世話になったのなら「すみません」と謙虚な姿勢でいようと当たり前に学んできて、それを身障者にも強要する、というか、対等であると思う、思わなければと考えるがゆえにそういう姿勢が当たり前でしょう?という考えで身障者と接してしまいがちで、目の前の身障者が朝起きた瞬間から夜眠るまでずっと、感謝の声と謙虚な姿勢を保ち、それを示し続けなければいけない、それが365日続くのだということになかなか気付けないのだと思います。私自身がそうでした。
じゃあどうすればいいのか?という答えはまだ自分の中で出ていません。
このお話の中では、友達の勝生が頭を下げて道を開ける、理王は王様のようにそこを通ればいいのだと結論付けていましたが、現実ではそれも難しいだろうなあと思いました。
物語としての終わり方はとても綺麗で良かったですし、でも現実は…と現実の問題にシフトしていける作品でした。
Posted by ブクログ
ゲームの中の話の分量が多くて、お話が進んでいくのか、心配になったりしたけど、すごくきれいに着地。ちょっと、ラストは駆け足すぎて、なくてもよかったのかな、と思ったけど、そんなことないんだろうな。
この年代の男の子が読みたがる本って少ないから、もっと売れるような装丁にしたらいいのに。