あらすじ
現代の新しい音楽を世に発信させるべく、活動の地を求めて京都にやって来たヴァイオリニストの屋島稜水(やしまりょうすい)。演奏家としてオリジナル性を求めて、伝統音楽と現代音楽のあり方の模索を始める。そこで、演奏団体の設立と企画を進めようと、大学時代の異性の友人、田上由梨の協力を取りつけながら、メンバーを勧誘していく。
種々の機会を経て出会った邦楽奏者、声楽家、作曲家で構成されたユートピアの世界に舞い込むさまざまな現実との遭遇。気の合わないメンバーとの人間関係や自己の気の弱さからくるメンタルに悩みつつも、稜水は結束を呼びかけていく。
迫り来る数々の課題、トラブル、そして音楽関係者による金銭詐取に遭遇しつつも、1年後に市内のホールでの開催に漕ぎつけるが......
記念すべき初の演奏会のゆくえは果たしてどうなるのか? そしていっしょに活動していた由梨から、ふと漏れたひと言。精神疾患に悩みながらも、現代音楽を追求する夢を抱く若き青年の人生のプロローグを描いた青春小説。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ネット知人で2度ほどお会いしたこともある現代音楽作曲家/小説家、横田直行さん/栗山丈さんの小説作品。今年2024年の刊行。
若いヴァイオリニストで、現在を生きる同時代の音楽<現代音楽>の演奏普及を目指して、京都に移り住み演奏家団体を立ち上げ、「第1回定期演奏会」を実現するというストーリー。
そんなテーマなだけに、私的にはとても面白く、一気に読んでしまった。
主人公は鬱っぽいメンタルの持ち主であるわりには、ずいぶんと他者へのコミュニケーションが得意なようだし、演奏家たちとのコネクション形成もうまく行き過ぎている感じもないではなかったが、私自身が1年2ヶ月ほどをかけていわゆる作曲個展コンサートを準備し、実施した経験とオーバーラップする面もあって、楽しんで読んだ。
最後の架空のコンサートの描写はなかなか圧巻で、興奮するものがあった。
栗山丈さん、ありがとうございました。