あらすじ
自民党議員による政治資金パーティー裏金問題は,安倍派をはじめとした派閥が解体された今も,決着を迎えてはいない.政治責任が問われることのないまま,うやむやになってしまうのか.――告発の火付け役である著者が,裏金問題の本質を抉り出し,ウソを見抜く技を提供する.真の政治改革に向けた問題提起の書!
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Posted by ブクログ
著者は、「政治資金オンブズマン」という組織を作ってこの政治とカネの問題に専門的に取り組まれてきた方でした。これまでにも何度も問題化しては、鎮静化され、制度改革も試みられてきたけれども抜本的な改革には至らず今日の状況があるということが分かった。
そして、著者が強調していたのは、政治家の政治資金について私たちが監視し、著者が行ってきたように刑事訴訟を通して説明責任を追及していくことの重要性と有効性。
著者が代表を務める「政治資金オンブズマン」では、政治を監視する方法として、政治家、政治団体の刑事告発や政治資金改革の提言を行ってきているとのこと。そうした数々の経験から、著者は、簡単に問題が解決するわけではないにせよ、客観的な証拠をもって挑めば、検察側も無視できないこと、報道機関の取材と事実解明につなげることもできる、そして今回のように、世論や政治家自身に影響を与えることができる。
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著者が指摘しているのは、抜け穴だらけの政治資金関連の法制度。
1994年に一度改革が試みられたけれども、今でも政党が政治家個人に寄付することが合法で、さらに政党交付金という新しい制度によって、政党の資金繰りがさらに潤い、不透明な資金の幅を広げている。
まず、政党から政治家個人への寄付は合法という点について、
1994年の政治資金規正法改正では、企業献金を完全廃止せず企業や労働組合からの寄付は政党と政治資金団体に対して認めた。政治家個人の資金管理団体に対しては年間150万円までを限度とした。政党についても5年後見直しを決めた。そして1999年、政治家個人への資金管理団体への企業や労組などからの献金は禁止、政党へは禁止されない。
裏金問題が表に出た昨年、その対応として自民党は改革独自を2024年5月に国会に提出。その後他党と協議し修正、6月の衆院特別委員会で賛成多数可決。内容は、政党が国会議員や地方銀ら「公職の候補者」への寄付は禁止、「政策活動費」名目での「公職候補者」への支出は可能。
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この「政策活動費」によってこれまでも党内幹部に大きな資金が流れているため、根本的な解決にはならない見通し。
紹介されている著者らが明らかにしてきた実態は、これまで自民党内部では、「組織活動費」「政策活動費」という名目で幹事長らに巨額寄付をしてきていること。具体的には例えば、2017年、二階幹事長に14億近く、2022年「政策活動費」の14億円中、合計10億近く茂木幹事長に流れている。というのが通例。著者らが説明を求めた2000年代前半からはこの額は下がってきているらしく、例えば1999年だと62億円中48億が、各国会議員に与えられていたとされる。
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政治資金パーティーも重要財源。
1回のパーティーで20万円以上の購入者、個人会社、政治団体の明細提示が必要で、それをかいくぐる方法はいろいろある。
で、このGS並みの国営巨額ボーナスや集めたお金が何に使われているか、という点では、
ひとつはプライベート使用、もうひとつは、賄賂、が主に考えられる、とのこと。
そして政治資金の報告制度制度自体も、不透明なお金の流れを可能にしている。
そもそも政治家自身が自分たちのルールを作っている時点で、抜け穴はきちんと確保されてきていることがたくさんあるのだろうと思う。
税金で民主主義の国家運営の健全性を蝕むというのは、悲しい構造になっているんだなーと思った。
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同時に改革された選挙制度も、小選挙区制になったことでこの政党交付金が議会で過剰代表される与党に過剰に配分されている。
具体的な数値で言うと、総計年250億円ぐらいあって、自民党は2023年には約160億円もらっている。これまでの党の財源を眺めても、この政党法付近が党収入の7割ぐらいを占めていたりする。著者は、この状況について、政党が国営化している、と指摘し、この政治とカネの問題も含め、議会制民主主義の在り方が問うています。
__選挙の得票数の比率と比べて特定の政党ばかりが過剰に議席を得ている、つまり過剰に代表されている状況は、議会主義であったとしても議会制民主主義とは言えません。
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これまでも政治とカネの問題は尽きなかった中で、著者は、今回の派閥の裏金問題は、派閥全体で何億円もの裏金を作っていたという点で、議員側だけで裏金を作っていた過去事件とは次元が違う、と論じられています。
政治資金収支報告書からどのように収支の整合性を調べたり、不透明な金の流れを見つけたりするかについても、丁寧に紹介されています。多くの不正が溢れている状況であり、地方の資金の流れなどもまだ監視・確認しきれていない部分が多いとのことです。
日本は政治家の説明責任を問う文化は弱めだと個人的に思いますが、
金額や距離、ことが大きくなると無かったことになってしまう不都合な矛盾が、人間全体の生き方の心理としてあるようにも思います。
そして、政治とカネ、というけれど、政治はカネ、なのではないか…と思ってしまう。
今の日本政治からカネを抜いたら何が残るのだろう…というホラー。