【感想・ネタバレ】事件の涙 犯罪加害者・被害者遺族の声なき声を拾い集めてのレビュー

あらすじ

前橋高齢者連続強盗殺人から京都アニメーション放火殺人まで
重大事件に関わった人たちの知られざる、もう一つの物語
※本書は2022年6月発行の書籍『日影のこえ』(小社刊)を
加筆・修正し、文庫化したものです。

日の目を見ることができなかった声なき声を
見知らぬ男に恋人を殺された青年の顛末、
貧困が原因で2人を殺めた死刑囚の告白、
校内のいじめによって自殺を余儀なくされた娘を持つ父親の苦悩、
事故により最愛の人を亡くした遺族の闘い。

本書は、
マスコミが決して伝えない事件のその後を追った
You Tubeチャンネル『日影のこえ』を、
さらに深掘りし書籍化したものだ。
犯罪加害者、被害者遺族、
関係者の“声なき声"に耳を傾け浮かび上がってきた
報道とはまた異なる、
9つの重大事件のもうひとつの真実。


■目次

・中野劇団員殺人事件
ある日突然、恋人を殺された男の絶望と追及と再生の6年半

・千葉小3女児殺人事件
「日本とベトナムをつなぐ架け橋になりたい」保護者会会長に殺された愛娘の意思を継いで

・大阪21歳女性刺殺事件
多重人格者の男に娘の命を奪われた母もまた乳がんでこの世を去った

・前橋高齢者強盗殺人事件
生きるために2人を殺めた土屋和也死刑囚と、自分のためにに我が子を捨てた母とのいびつな絆

・京都アニメーション放火殺人事件
父、兄、妹が自殺。犯人・青葉真司の身の上に起きていた死の連鎖

・八王子中2女子いじめ自殺事件
この世界が、もっと不登校にやさしい世界だったら

・三島バイク交通死亡事故
夫を事故で亡くしても、私は被害者にすらなれなかった

・目黒5歳女児虐待死事件
なぜ気づけなかったのか。近隣住民の苦悩は今も続く

・大阪姉妹殺人事件
2人の仇討ちのため、私は犯人の山地悠紀夫を本気で殺そうとした

■著者 高木瑞穂
ノンフィクションライター。1976生まれ。
月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。
主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。
著書に『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』
『覚醒剤アンダーグラウンド「日本の覚醒剤流通の全てを知り尽くした男」』(彩図社)、
『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生"12人の生告白』(大洋図書)ほか。
X/@takagimizuho2
YouTube『高木瑞穂ちゃんねる』

「日影のこえ」事件記者を経験後、
現在ドキュメンタリー番組の制作などに携わるフリーの映像作家、
我妻憲一郎主幹のYouTubeチャンネル。
2020年これまで積み重ねてきた取材のツテをもとに、
後輩カメラマンと2人でYouTube用の動画制作を開始。
これまでに「メディアが報じない事件のその後」をテーマに当事者が語る短編ドキュメンタリーを多数公開。
全国的な重大事件から新聞の片隅に載って終わってしまった事件などを多様に取り上げている。Xアカウント @hikagenokoe

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

事件の詳細を追求する作者の努力に敬服します。様々な人間模様や、その事件の奥に潜んでいる社会問題を明らかにしてくれていると思います。
ただ読んでいると、全く食材の意識のない犯罪者などの人間性を開いて、とても憤りを感じる。
犯罪によって被害を受けた方、また、その家族、そして理不尽な幼少期を過ごした犯罪者など、少しでも幸せを感じられるように生きてほしいと願うばかりである。

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2025年01月05日

Posted by ブクログ

高木瑞穂+YouTube「日影のこえ」取材班『事件の涙 犯罪加害者・被害者遺族の声なき声を拾い集めて』鉄人文庫。

2022年発行の『日影のこえ』を加筆・修正、文庫化。

中野劇団員殺人事件、千葉小3女児殺人事件、大阪21歳女性刺殺事件、前橋高齢者強盗殺人事件、京都アニメーション放火殺人事件、八王子中2女子いじめ自殺事件、三島バイク交通死亡事件、目黒5歳女児虐待死事件、大阪姉妹殺人事件の9つの事件の被害者遺族と加害者の裏側に迫るノンフィクション。

鉄人文庫にしては硬派な内容だった。

毎日のように殺人事件や虐待事件、交通事故、性的暴行や猥褻事件、いじめ事件のニュースばかりが目に入るような気がする。日本人のモラルの低下なのか、以前では考えられないような事件の報道に慄く毎日だ。

中野劇団員殺人事件。馴染みの無い事件だった。美人劇団員の女性が自宅で全裸状態の絞殺遺体となって発見される。彼女と同じ劇団に所属し、付き合って2ヶ月という男性が自らも警察に疑われながら事件の真相を追う。加害者は被害者の近隣に住む37歳の男で事件後に実家の福島県矢吹市に逃げていたと言う。加害者は事件について詳しく語らぬまま、無期懲役の刑が確定する。

千葉小3女児殺人事件。ベトナム人の女児が保護者会の会長の男に殺害されるという悲惨な事件だ。加害者の男は殺人を否認したまま無期懲役となる。今の世の中、LGBTQとか多様性とか言うものだから、幼児性愛者のような異常者がこうした犯罪を犯すのだろう。被害者遺族の両親は現在、福島県二本松市の岳温泉でベトナム料理店を営業している。

大阪21歳女性刺殺事件。多重人格、解離性同一性障害などと言う精神疾患は本当に存在するのだろうか。少なくとも自分の身の回りでは見聞きしたことが無い。重大事件の犯人が心神耗弱や多重人格といった精神疾患の類を訴えるのはよく聞く話だ。この事件の加害者も多重人格を訴え、理不尽な殺人を犯していながら懲役16年という軽い刑が言い渡されている。

前橋高齢者強盗殺人事件。高齢者2人を殺害し、現金7千円とリンゴ2個を奪った加害者の男は死刑判決を受ける。加害者の男は26歳の発達障害で産まれてから不遇の境遇にあったと言う。最近、高齢者を狙った特殊詐欺や強盗事件が増えている。弱者を狙った卑劣な犯罪者の増加は社会の歪んだ変化とモラルの低下によるものなのだろう。

京都アニメーション放火殺人事件。記憶にも鮮烈に残る36人もの生命を奪った無差別殺人事件。加害者の男の歪んだ動機には驚いた。アニメやゲームにのめり込み過ぎると現実と虚構の境目が見えなくなるのだろうか。自らも重度の火傷を負い、九死に一生を得た加害者には死刑判決が下されている。色々な意味で遣る瀬無い気持ちになる。

八王子中2女子いじめ自殺事件。最近のいじめはSNSなどまで使い、より陰湿で過激になっているように思う。いじめによる自殺した被害者の遺族が幾ら司法に訴えようとも学校側が謝罪をするに至るまでで加害者当人までは罰せられない場合が多いように思う。

三島バイク交通死亡事件。信号無視の乗用車とバイクの衝突事故。バイクの男性は死亡し、乗用車の運転手はバイクが急に右折して来たことが原因と主張する。被害者遺族は死亡した男性に過失が無かったことを主張するが、SNSによる誹謗中傷を受ける。嫌な世の中になったものだ。

目黒5歳女児虐待死事件。幼い子供は親に頼るしか無いのは当たり前のこと。それにも関わらず、ネグレクトや虐待事件も最近はよく耳にする。大人になり切れていない男女、或いはシングルマザーの彼氏による虐待事件というパターンが多いように感じる。マスコミがそういうイメージを抱かせるような報道をするためなのか、それが事実なのか。

大阪姉妹殺人事件。姉妹を強姦し、殺害した加害者に被害者の関係者が自らの手で復讐したいと思うのはよく理解出来る。しかし、YouTubeやテレビドラマや小説で事件を題材に歪んだストーリーに仕立てるのはおかしい。酷い話だ。

定価946円
★★★★

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2024年06月29日

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