あらすじ
「百万円を二百万円にするのはたやすい」
そう嘯いて他人様の懐に平気で手を突っ込み、
意表を突いたケントク買いで万馬券を掴み取る――。
ギャンブルの神様に魅入られた、“ろくでなし”の自伝的長編小説
「30年前の新人が、新人のまま現われた。
馬とデラシネの日々と、ギャンブルの陥穽と
黄昏の中に立つ影に、活路はあるのか。
この小説の放逸な人生の底にあるのは、書くという行為の業である。」
――北方謙三
「破天荒なこの男の物語世界はくやしいほどにまばゆい。
映画の嘘を凌駕した凄味があるからだ。
こいつとは簡単につき合わないほうがいい。」
――高橋伴明（映画監督）
ショウコから百万円を受け取り、（福島競馬場のメインレースの）３枠６番のソウルスピリッツの複勝に張った。
「見ていろ。６番の馬が三着にくれば金になる」
ショウコは府中の馬場をふりかえって戸惑う。
「どういうこと？ 馬、走ってないじゃない」
「ここのレースじゃない」
（中略）
しばらくして東京競馬場の帯で束ねられた百万円が七束と、端数の三十万円を受け取る。ＪＲＡの手提げ紙袋にそれをしまってもらった。
ショウコはその場にへたり込んで紙袋に手を突っこみ、札束を数えながら、泣いた。
「なんで……なんでこんないい加減な男が簡単にお金を作れちゃうのよ……」
――本文より
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
クズだ。
帯に書かれているとおり人間のクズ。
こんな奴が近くにいたらと言うか決して近づけないように立ち回るだろうと思う。
一方で遠巻きに見ている分にはこんな面白い題材もないだろう。
なにより酒場での話のタネには困らない。
これが自伝的だというからおどろきだ。
こんな生き方ができることへのうらやましさもある。
いくども無一文になりかけながら逆転の大穴ゲットで危機を回避。
ほんのすこしの反省の後、ギャンブルに舞い戻る。
その性懲りのなさ、明日を考えない無鉄砲さに興味深々。
身近な人々を徹底的に裏切り続け、裏切られた人々もある意味あきらめの境地で、引きずらない特別な関係もうらやましい。
どの登場人物も生き延びることに重きを置いていないのは、作者の人生観が反映しているからだろう。
麻雀ではないが平成版麻雀放浪記といったところか。
ひさびさに巻置く能わず読み切った。おすすめ本
