【感想・ネタバレ】赤紙がきた猫 1巻のレビュー

あらすじ

猫と幸せに生きる、それがわたしの戦争――。昭和19年2月、太平洋戦争のさなかに東京から北海道へと嫁いできたたまさん。慣れない土地と夫婦生活…孤独な環境だったたまさんは、ある一匹の野良猫・チャペとの出会いによって救われる。だがその頃、北海道では猫を毛皮としてお国に差し出す「猫の供出」が計画されていて…。

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Posted by ブクログ

『チハヤリスタート!』に続いて、ここ最近わたしの中でヒットが飛んでいる芳文社。

本作もとっても良い。

そう、史実として、戦時下に毛皮供出の対象として飼い犬、飼い猫も徴発されたのである。

東京から函館へ嫁いできた主人公の〈鈴野たま〉さんはおっちょこちょいな、あどけなさの残る女性。
旦那は7歳歳上で、目が悪いため兵役検査は丙種合格扱いの〈黒尾史郎〉さん。

会話もままならずにギクシャクした2人であったが、結婚二日目にして大きな転機を迎える。
大雪の夜中に、外からか細い何かの音が聞こえてくる。
「ニーー」(p24)
思わず雪を掘り返すたまさん。
雪の中から出てきたのは子猫だった。

子猫は夫婦の飼い猫となった。
名前は〈チャぺ〉、道南の言葉で「猫」という意味である。

2人と1匹の暮らしはなんやかんやで楽しくて微笑ましく、たまさんは妻として、史郎さんは夫として少しずつ家族の絆が芽生えつつあった。

特に史郎さんは、長男ながらも出自が妾の子ということで引け目がある上に気も弱く、また丙種合格という当時としては不名誉な体調という肩身の狭さもあり鬱屈していたが、たまさんとチャぺとの生活を「俺は幸せだ たまとチャぺがいてくれっから」(p111)と、かけがえのないものとしてみとめているのである。

が、正にその矢先に赤紙が史郎さんの元に届く。
戦況の悪化と共に離れ離れになることとなった新婚夫婦と、知らぬところで供出対象に決定した猫。
「猫を飼うことが悪になる時代に 私は猫と生きると決めた」(p4)
強い女性の物語。

どうしたって悲劇的な展開が待っていると思うのだが、心を強く持って2巻へ進みましょう。
ああ、史郎さんの帰りを待つチャぺの後ろ姿(p168)がなんと健気なことか…。

伏線として、史郎さんのいとこ〈寅之介〉の「…俺はだめだ 史郎兄も知ってるだろ前に…」(p159)の真相とはなんなのか。

シリアスな題材ながらも、ちょっとドタバタコメディタッチを織り交ぜつつ描かれた1巻。
どんなストーリーが待ち受けているのかな。


1刷
2025.8.31

0
2025年08月31日

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