あらすじ
戦後、日本が国連に加盟し、冷戦終結後ついに国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派遣が実現して以降も、派遣の是非をめぐる論争は絶えなかった。国際社会からの要請、政治家たちの思惑、自衛隊員の安全確保――その水面下ではいかなる政治的議論がめぐらされてきたのか。歴代首相、外務省担当者などのやり取りに焦点を当て、特に現在のPKO政策の根幹となった自民党政権時代の論争を紐解き、国連加盟から約六〇年に及ぶ葛藤と苦悩の歴史を複眼的に浮かび上がらせる。
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Posted by ブクログ
カンボジア、モザンビーク、ゴラン高原、東ティモール、ハイチ、南スーダンと継続した日本のPKO参加をめぐる政治的な駆け引きと交渉を、主に外務省文書・資料と政権内部の証言・資料によって追跡した内容。時系列的に整理された記述はよくまとまっていてありがたいし、紹介・利用された文献も多く、リファレンスとしても有用。
欲を言えば、冷戦期から始まっていた検討段階を含め、日本外務省を軸とした国内調整の面がクローズアップされたことで、国連内部での「平和構築」ミッションの位置付けの変化や、防衛庁(省)=自衛隊内部での「国際協力」要請への対応といった相関が見えにくくなっている点。国連側の窓口となっている外務省の立場からの議論が続くことで、じっさいのPKOの現場が抱えた矛盾という論点も後景化されている。だが、それはまた別の専門家の立場から見ていかなければいけないのだろう。