あらすじ
手術患者の取り違え、投薬ミスによる死亡事故、手動遮断機の操作ミスで起きた踏切事故――あらゆる「ミス=間違い」は、人が関わることで生じている。しかし、生身の人間である以上、間違いを100%なくすことは不可能だ。なぜ、どのように間違いは起こるのか? そのミスを大惨事につなげないためにはどうしたらいいのか? 世の中にDXが浸透する現状もふまえ、最新の知見をもとに徹底分析。
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Posted by ブクログ
北九州市立大学の名誉教授である松尾氏の、「エラー」に関する著作。ヒューマンエラーやシステムエラーから生じる重大な失敗から本質を学び、人間の認知の誤解をいかにシステムとリンクさせてエラーを無くしていくかについて、分かりやすく記載した本。人間である以上ヒューマンエラーは避けられないために、多くのエラーから傾向を分析し失敗をなくしていくことが必要である。一個の重大事故の裏には、29個の軽微なエラーが潜んでいるということ(ハインリッヒの法則)を理解して、ヒヤリハットがあればそこに、重点的な改善を施すべきである。エラーはやむを得ないものではあるが、減らす努力は常日頃からしておくべきである。また、事故というのは単独で起こるものではなく、複数の要因、複数の人間が絡んで発生するのが常である。そのため、日頃から周囲とコミュニケーションを取りながら、認識の齟齬を無くしていくことも第一歩である。
Posted by ブクログ
人が関わるところにヒューマンエラーが発生する。
システムや社会が複雑化するなかで、リスクを完全にゼロすることはできないからこそ、ヒューマンエラーへの理解は不可欠となる。
ヒューマンエラーの入門書としてとても読みやすいと思うが、事例がもう少し一般の方にも馴染むものだったら広く読まれるようになったと思う。
Posted by ブクログ
ヒューマンエラーの原因と、対策を検討する際に留意すべき点について、コンパクトにまとまっている。
新しい視点として、ITをアシスタントとして用いることが当たり前になった時代だが、それに伴い、今までなかったリスクもあることや、ゼロリスク・完璧な対策はあり得ないのという前提にたち、レジリエンス・ダメージコントロールの視点が重要であることを強調している。
Posted by ブクログ
日常の小さなミスから大きな事故まで、間違いがどのように発生し、どのように対処できるかを学ぶことができました。特に、ヒューマンエラーを防ぐためのシステム改善や、注意力の限界を認識する重要性についての考察が非常に興味深かったです。具体例が豊富で、読み進めるうちに「なるほど」と思う場面が多く、おもしろかったです
Posted by ブクログ
ぽかミスの解決策は示されていない、というか完全な解決はないということだ。中盤までに紹介される間違いの事例は、変な言い方だが、味わい深いものだ。これらの事例を知るだけでも、この本を読む値打ちがあると思う。
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●「ヒューマンエラーをなくすことはできない。とくにエラーを起こしたことに本人は気づけない。だからエラーであることに気づかせて、最終的にうまくいくようになればいい」が本書の主張。
Posted by ブクログ
オペミス防止策のまとめ入門的な本。
【目次】
はじめに
第1章 ヒューマンエラーがもたらす事故
手術で患者を取り違えた事故【事例1-1】/複数のエラーが生じて事故に至る/どうすべきだったか/リストバンドの装着ミス【事例1-2】/ITやDXは新たなヒューマンエラーを生み出す
第2章 ヒューマンエラーとは
キャッシュレス決済での失敗【事例2】/本来できたはずなのに/エラーとそうでない場合の違い/ヒューマンエラーの定義/モノや機器と関わるからエラーが生じる/AIも万能ではない
第3章 エラーをした人は悪いのか?
遮断機を上げざるをえなかった開かずの踏切の事故【事例3】/不完全なシステムを人が調整している/システムの問題がヒューマンエラーを生む/人を責めない対策/意味のない「気をつける」対策/注意すると改善されるという誤謬/後知恵バイアスによる指摘―後だしじゃんけん―
第4章 外的手がかりでヒューマンエラーに気づかせる
欠席者を合格にしてしまった入試ミス【事例4】/外的手がかりで防止策を検討/外的手がかりを考えてみることが大事
第5章 外的手がかりの枠組みでエラー防止を整理
インターホンの配線間違い【事例5】/文書で気づかされる/表示で気づかされる/対象で気づかされる/電子アシスタントで気づかされる/人(他者)から気づかされる/外的手がかりの効果と実現可能性/5つの枠組みで防止策を現場で考える
第6章 そのときの状況がエラーを招く
薬の処方ミスによる死亡事故【事例6】/さまざまな背景要因がエラーを誘発/医師のおかれた多忙な背景/モノやシステムの改善によるエラー防止策
第7章 外的手がかりは使いものになるのか
照合せずに輸血をしてしまった【事例7】/外的手がかりは使ってもらえるか?―動機づけ理論―/人の行動は誘因と動因で決まる/外的手がかりは何を防いでいるのか/行為をどうとらえるか――行為の制止、防護、修正/外的手がかりだけでヒューマンエラーは防ぐことができるのか
第8章 IT、DX、AIはヒューマンエラーを防止するのか
人は進化していない/人を介さないことでエラーがなくなる/電子アシスタントによるエラーに気づかせるしくみ/エラーに気づきやすいインタフェースが可能か/ネットワーク上の外的手がかり/人間をどう活かすか
第9章 ゼロリスクを求める危険性
新型コロナウイルスへの対処の異常さ/複雑なシステムには必ずリスクが/Safety-I, Safety-IIの考え方/感染者ゼロを目指すSafety-I、ウィズコロナのSafety-II/人間というシステムに合うのはSafety-II/レジリエンスという考え方/リスクとベネフィットを考える/人工知能がうまくいくのは/エラーに気づいてうまく対処できればよい
おわりに
参考文献
松尾太加志
1958(昭和33)年生まれ。九州大学大学院文学研究科心理学専攻、博士(心理学)。北九州市立大学特任教授(前学長)。著書に『コミュニケーションの心理学』(ナカニシヤ出版)など。
Posted by ブクログ
自分はミスをしやすい人間であり、ミスに対処法を学ぶために購入した。
仕事をしていると多くのミスに遭遇し、ミスに対する安全対策もずいぶんと経験してきた。
ミス防止に対する外的手がかりとして、対象、表示、文書、電子アシスタント、人があることが分かった。
有益な情報だったのは、ミスに対する考え方としてミスは起こり得るものであり、ミスをなくすことには限界があるとし、最終的にうまくいくようにすれば良いという考え方である。
そのために「うまくいっている事例」を学び、エラーを気づかせてくれる仕組みとして外的手がかりを利用する。そして、エラーが起きても大きな被害に至らないようにすることを心得たい。
Posted by ブクログ
「失敗」の例示が豊富であり、イメージがわきやすかった。しかし、簡単に言えることを、わざわざ難しく表現しているように感じ、結局著者が何を主張したいのか分からなかった。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 ヒューマンエラーがもたらす事故
第2章 ヒューマンエラーとは
第3章 エラーをした人は悪いのか?
第4章 外的手がかりでヒューマンエラーに気づかせる
第5章 外的手がかりの枠組みでエラー防止を整理
第6章 そのときの状況がエラーを招く
第7章 外的手がかりは使いものになるのか
第8章 IT、DX、AIはヒューマンエラーを防止するのか
第9章 ゼロリスクを求める危険性
<内容>
さまざまな事例(中には勤務先のものも)を元に、ヒューマンエラーの原因を明確化する共に、最後の章でコロナ禍の状況を実例に、「ゼロリスク」を求めてしまった結果、多くの問題が発生してしまったことを示す。そして「ゼロリスク」よりも「レジリエンス(回復力・弾力性)」が大事だと説く。つまり、起こってしまったこと、もしくは起こりそうになったときに、それを止めるのではなく、エラーが起こっても事態がうまく廻るように、制度やシステムを設計することなのだと。まさにその通りであろう。職場でもミスが出るが、なんか「ゼロリスク」を求めすぎているような気がする。