【感想・ネタバレ】戦時から目覚めよ 未来なき今、何をなすべきかのレビュー

あらすじ

人類の”大惨事”は避けられるか?

気候変動、生態系の破壊、食糧危機、世界大戦――人類の破滅を防ぐための時間がもう残されていないのだとしたら、我々は今何をなすべきなのか?パンデミックを経てますます注目される現代思想の奇才が、西欧と世界で今起きている事象の本質をえぐり、混迷と分断渦巻く世界の「可能性」を問う。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 奇を衒ったレトリック、飛躍と逸脱、アイロニーに貫かれたアクロバティックな論理のひとだと思っていたジジェクが驚くほどまともなことを書いていることに驚かされる。それだけこの世界が常軌を逸しているということなのか。本書後半の「テクノ・ポピュリズム」にかんする言及は、まさに日本における「チームみらい」的な政治勢力が登場する的確な説明となっている。

 表紙にスパナと麦とペンを握る3つの拳が書き込まれた赤いシャツを着て写るジジェクは、「グローバル資本主義」という真の敵を見誤ってはならない、そのためにはウクライナの嘘や間違いを果敢に批判しつつ、断固としてウクライナの側に立たなければならない、と繰り返し主張する。なんとか現在のライフスタイルを維持しながら「秩序」を回復させようという怠惰を乗りこえ、プーチンがヨーロッパに作り出そうとした困窮を逆手にとって、生態系壊滅の危機を防ぐ生のあり方と、旧植民地諸国に対する真摯な謝罪を通じたヨーロッパの道義の新たな水準を目指すべきである、そのための「戦時共産主義」なのだ、というのが本書の立場である。
 ここは議論が分かれるところだろうが、ジジェクはポリティカリー・コレクトな自由主義左派はアイデンティティという副次的な矛盾にかかずらわって、実質的な社会関係を変えずに道徳的な権威を保持し続けようとしている点で、「ニセの目覚め」の中でまどろんでいると厳しく批判する。ジジェクからすれば、「ウォーク」左派は、主要な矛盾から目を背け、「ほんとうには変わらない」ために行動していることになる。
 
 上記の分析の当否に加え、本書のスタンスを推せば、イスラエルのガザ侵攻はさらに厳しく批難せねばばならないと思われるが(原著は2023年刊行)、果たしてジジェクは現在のイスラエルの蛮行にどんな言葉を投げかけているのか。

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2026年04月25日

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