あらすじ
『サロメ』『幸福な王子』『ドリアン・グレイの画像』など多くの著作と数々の警句で知られる「世紀末芸術の旗手」オスカー・ワイルド。アイルランドに生まれ、オックスフォード大学在学中から頭角を現した青年期に始まり、同性愛裁判に敗北し、保守的なイギリス社会から追放される晩年まで。「私は人生にこそ精魂をつぎ込んだが、作品には才能しか注がなかった」――どの作品よりも起伏と魅力に富んだ彼の生涯をたどる。
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Posted by ブクログ
『オスカーワイルドの軌跡』より、こちらを先に読んでおけばよかった。作品論は少なく、ワイルドの生き様がよく分かる。もっとも単なる評伝ではなく、当時の変質論を中心とする思想史を背景にワイルドの生涯をたどっている。現代の庶民の感覚からすればクズ以外の何者でもないワイルドだけど、だからこそワイルドの美意識は永遠なんだ。
本当かどうか分からないけど、ドレフュス事件の周辺にワイルドがいたっていうのには驚いた。
Posted by ブクログ
新書だけど、かなり情報量が豊富。一般に流布しているワイルドの「殉教者」としてのイメージを相対化するのが狙いらしい。ダグラス卿に対する二枚舌とか、性科学に対する関心とその利用とか、あとドレフュス事件との意外な関わりには驚かされた。日本ではあまり馴染みのない「変質論」(当時の脳科学みたいなもの)にも多く言及していて、ヨーロッパのゲイ文化史の教科書としてすばらしい。