あらすじ
病気のために高原の町で暮らすことになった美桜。放課後の校庭で、ある男の子と出会った瞬間、なぜかなつかしい気がして涙があふれた。その時に見た満開の桜の幻は、いったい何…? 彼の名前は、直生。反発しあいながらも、ふたりの心は固く結びついて…。ある日、美桜と直生をつなぐ不思議な「事実」が明らかに。ふたりの出会いは、生まれる前からの「運命」だった…!? 時を超えてよみがえる想い。桜の下でかわされた、永遠の約束とは?
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Posted by ブクログ
折原みとさんが25年以上前に書かれた『桜の下で逢いましょう』の自作リメイク小説です。たとえば冒頭の夕陽に照らされた木造の旧校舎が金色に照り映えるあたりの描写力など、他の野いちごジュニア文庫では見ないような分量の情景描写であり、ジュニア小説でもこれくらい雰囲気の演出があっていいよなぁと私は思います。が、一方で主人公の彼氏が、主人公に心中を提案する終盤の流れは、今読むと結構ギョッとしてしまいます。自分が子どもの頃読んでいた『時の輝き』や『2100年の人魚姫』など、主人公や、その愛する人が命を失うという瀬戸際に追い込まれる、折原みとさんの描く悲劇的な話が堪らなく好きだったのですが、最近そういうのあんまり見ない気がしていて、久々に読んであぁジュニア小説ってこういう感覚あったよね?!と隔世の感がありました。現実の社会でも心中事件は減っているとか聞いた気もしますし、何かうまくいかない、解決できない問題にぶち当たった時、ドラマティックな反応を示すより、現実的に話し合って心の問題も治療して対応しましょうというプラグマティックな時代の空気を反映しているのでしょうか。ハマる子はハマるかも、という小説です。