あらすじ
外科医から70歳近くで訪問診療医となった著者が見てきた、700人超の生老病死。自分が死ぬということを認識しないまま亡くなる患者がいかに多いか。一方で、自らの人生に深く根差した死を実現する人もいる。多死社会のなかで、いかに自分の老いと死にきちんと向き合っていくか、豊富な実例をもとに考察する。
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Posted by ブクログ
著者は在宅医療に携わる、森鴎外の孫息子。
第1章の1では、著者の経歴が語られる。
最近の読みやすい文体ではないので、ややかしこまった印象である。
高齢者の看取りについて、実際の患者の最期が挙げられている。
私はまだ人生100年とすれば、死ぬにはだいぶ若すぎてピンとこない。
だが、これから先、間違いなく死はやってくるし、高齢になるまで生きていれば、介護難民となる可能性だってある。
決して関係のない話ではない。
在宅死を望んでも、介護する家族が拒む場合があるそうだ。
そして病院はあくまで医療を提供する場である。
だから、本文中で女性医師が言うように、救命、延命をするはずの場所としては、「死」についてのあり方は、心情や倫理観に照らし非常に難しい問題を孕むのだろう。
本文ではあまり触れられていないが、在宅死は変死扱いになることも気になる。
事件性の有無を確認するのは致し方ないとしても、近年の変死の増加(都内前年比3000体以上)を考えると在宅死への何らかのアプローチが必要ではないか、と思う。
しかし私は医療、介護従事者等ではなく、これといった必要な手立てが思いつかない。
ただ、「介護と医療をシームレスに提供する包括的なヘルスケア」(113頁)が必要というのは理解しやすい。
しかし実際はまだまだ医療と介護のシマ争いや、介護職への理解の乏しさや低賃金重労働などクリアすべき問題が多い。
喫緊の課題について、政治家任せではいけない。
主権者は、わたしたちだ。
死は誰にも等しくやってくる。
見ないことにはできないし、その時考えるのでは遅きに失する。
本書は当初おもっていたものとは少々違っていたが、死を考え、介護について知ることができた事は大変有意義であった。