【感想・ネタバレ】岩波書店の時代から ――近代思想の終着点でのレビュー

あらすじ

1960年代からポストモダンの時代を通じ岩波書店で多彩な出版活動を展開した大塚信一に、同じく編集者だった堀切和雅が問う――脱魔術化され、人間の精神が寄る辺をなくした近代において学問や芸術は何と格闘してきたのか。河合隼雄・中村雄二郎・大江健三郎・山口昌男・宇沢弘文・木田元・磯崎新らとの仕事を組織しつつ、何を理解しようとしてきたのか。近代の思考もまた新手の魔術だったのではないか。我々はなぜ地球的破局に向かう終着点にいるのか――人類の思想史を対話でたどる。 【目次】はじめに 堀切和雅/第1章 「敗戦」のアンビバレンス/第2章 「近代」という問題群をまるごと問う/第3章 日本近世・準備された逆説/第4章 言語と「場」、そして意識/第5章 「主体」の観念、以前/第6章 「心」──変性するもの/第7章 ポストモダン思想の淵源/第8章 リアリズム・ニヒリズム・ファンタジー/第9章 トポスと人物/第10章 思考空間としての社会/第11章 「場所」から考える/第12章 脱魔術化と再魔術化/第13章 生・ロマン・崇高/終章 いま、破局に至るのか/あとがき 大塚信一/人名索引

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Posted by ブクログ

堀切和雅さんが岩波書店の大先輩である大塚信一さんと対談をして、戦前から戦後を生き抜いた著名作家の言動を例に出しながら、両人の自説を繰り広げた本。読み終わると「日本人いや人類の道は、これで良かったのか?」と壮大な感慨が浮かんでくる。
堀切さんは1960年生まれで私の年齢に近いので、自分が生きてきた時代は、日本全体の歴史からするとどんな時代だったのかが概ね理解できる。
大塚さんの回顧録とも言える内容だが、近代の日本の思想史の履歴を紐解いて、今現在の日本の問題点をあぶり出している。
今、宗教は科学によって消滅したように見える。しかし、それに代わって人知を超えた大災害が神の啓示の代行をしているのでは?としめくくっているのが印象的だった。
また、河合隼雄さんは、古事記とかを自説に取り入れているのに、最後まで天皇制に関しては発言しなかった、という話があり、考えてみると、著作などからは河合さんは、天皇制は必要悪と考えているように思うが、それを全面に出した論文はない、これを河合さんの保身術とみるかは、意見の分かれるところだろう。1980年から1990年はこころの時代と言われ、その潮流に、河合隼雄さんがちょうど乗った、言わば時代の寵児的人物だったという話もあった。
この本は、大塚信一さんの溢れ出る知恵に触れることができる良書だと思う。
堀切さんは対談の前後で予習復習をして大塚さんの話題に追従し、問題提起までしている、その真面目さが大塚さんの胸襟を開いて複数回の対談を成立させたのだと思う。

以下この本の中で大塚さんが紹介してくれた本でとても参考になった。
「神々の沈黙」 意識の誕生と文明の興亡 ジュリアンジェインズ 柴田裕之訳

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2024年10月02日

Posted by ブクログ

ポストモダン時代の生き証人、もとい出版社側の人間の視座がどういうものだったかが垣間見えるのは、表に出る側の思想家や作家のそれとは違ったものがある。
得るものというべきか、咀嚼に苦しむ感がないでもないが、対談形式のおかげでそういった難解さもひとまず読み終えられたのはよかったか。

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2024年07月28日

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