あらすじ
私たちの脳内には860億個のニューロンがあり、
ニューロン同士が正確に繋がることで、コミュニケーションを取っている。
ニューロンとニューロンの繋がりは、ケガや病気によって変化してしまう。
また、成長の過程で繋がりが正常に発達しなかったり、全く形成されなかったりすることもある。
そうした事態に陥ると、脳機能に混乱が生じて、
自閉スペクトラム症、うつ病、統合失調症、パーキンソン病、
依存症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など
精神疾患の原因となる。
こうした脳の混乱がどのように生じるかを研究し、その治療法の可能性を探ることは、
私たちの思考、感情、行動、記憶、創造性がどのようにして脳で生み出されているのか、
その解明にも繋がっていく。
神経科学者たちの研究成果、精神疾患の当事者や家族の声、治療法の歴史を踏まえながら、
ノーベル賞受賞の脳科学の第一人者が心の病と脳を読み解く。
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Posted by ブクログ
THE DISORDERED MIND
WHAT UNUSUAL BRAINS TELL US ABOUT OURSELVES
【目次】
まえがき
第1章 脳障害からわかる人類の本質
脳神経科学と精神医学のパイオニア
ニューロン──脳の構成要素
ニューロンの秘密の言語
精神医学と脳神経科学の隔たり
脳障害に対する現代の研究手法
遺伝学
脳イメージング
モデル動物
精神障害と神経障害の隔たりを埋める
第2章 人類のもつ強力な社会性──自閉スペクトラム症
自閉スペクトラム症と社会脳
社会脳の神経回路網
自閉スペクトラム症の発見
自閉スペクトラム症とともに生きる
自閉スペクトラム症における遺伝子の役割
コピー数の変異
デノボ変異
突然変異の標的となる神経回路
モデル動物からわかる遺伝子と社会的行動の関係
今後の展望
第3章 感情と自己の統一感──うつ病と双極性障害
感情、気分、自己
気分障害と現代精神医学の起源
うつ病
うつ病とストレス
うつ病に関与する神経回路
思考と感情の断絶
うつ病の治療
薬物療法
精神療法──話す治療
薬物療法と精神療法の組み合わせ
脳刺激療法
双極性障害
双極性障害の治療
気分障害と創造性
気分障害の遺伝学
今後の展望
第4章 思考、決断、実行する能力──統合失調症
統合失調症の主な症状
統合失調症の歴史
統合失調症の治療
生物学的治療法
早期介入
素因となりうる解剖学的異常
統合失調症の遺伝学
欠失した遺伝子
過剰なシナプス刈り込みを引き起こす遺伝子
統合失調症における認知症状のモデル
今後の展望
第5章 自己の貯蔵庫である記憶──認知症
記憶の探求
記憶とシナプス接続の強度
加齢と記憶
アルツハイマー病
アルツハイマー病におけるたんぱく質の役割
アルツハイマー病の遺伝学的研究
アルツハイマー病のリスク因子
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症の遺伝学的研究
今後の展望
第6章 生来の創造性──脳障害と芸術
創造性の展望──〈芸術家〉
〈鑑賞者〉
創造的なプロセス
創造性の生物学的基盤
統合失調症の人の芸術
プリンツホルン・コレクションの統合失調症の名匠たち
サイコティック・アートの特徴
サイコティック・アートが現代美術にもたらした影響
他の脳障害と創造性
自閉スペクトラム症と創造性
アルツハイマー病の人の創造性
前頭側頭型認知症の人の創造性
生まれながらに備わっている創造性
今後の展望
第7章 運動──パーキンソン病とハンチントン病
運動系の驚異的な技能
パーキンソン病
ハンチントン病
たんぱく質折りたたみ異常に起因する疾患の共通点
たんぱく質の異常な折りたたみに関与する遺伝子研究
今後の展望
第8章 意識と無意識の感情の相互作用──不安、PTSD、不適切な意思決定
感情の生物学的基盤
感情の解剖学
恐怖
恐怖の古典的条件づけ
不安障害
不安障害の治療
意思決定における感情の役割
倫理的な意思決定
サイコパスの生物学的基盤
今後の展望
第9章 快楽の原理と選択の自由──依存症
快楽の生物学的基盤
依存症の生物学的基盤
依存症の研究
他の依存症
依存症の治療
今後の展望
第10章 脳の性分化と性自認
解剖学的な性
ジェンダーに特異的な行動
ヒトの脳における性的二型
性自認
トランスジェンダーの子どもや思春期の若者
今後の展望
第11章 今も残る脳の大いなる謎──意識
心についてのフロイトの考察
意識についての認知心理学的考察
意識の生物学的基盤
グローバル・ワークスペース
相互関連か因果関係か?
意識の生物学的基盤に関する総合的な展望
意思決定
精神分析と新しい心の生物学
今後の展望
むすびの言葉──一巡してまた初心にかえる
謝辞
訳者あとがき
Posted by ブクログ
久しぶりに「読んでよかった」と素直に感じられた作品でした。著書が精神医学の高名な教科書を書いていてそれが版を重ねているということで、原文も平易なのでしょう。それを訳者が意識してか、訳文も平易で、読んでいてとても分かりやすかったです。プリオン、パーキンソン病、ハンチントン病に関する知識を得られたのも、嬉しかった。
ただまあ脳科学とやらに懐疑的なわたしは、読んでいてちと複雑な気持ちに。「脳科学に限らず、さまざまな観点から精神疾患を検討している図書」が謳い文句だったようなので、読んでみたのですが。
精神分析から脳科学に進んだ研究者もいるのですね。