あらすじ
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韓国読者が選ぶ2023年 若い作家1位! 2024年 韓国でドラマ化 決定!
凛々しい娘、美しいおじさん、珍妙なおばさん。韓国で注目の気鋭作家が、家父長制の先の家族を描いた”これから”のホームコメディ! この小説は家父長でも家母長でもない娘が家長(家女長)で主人公。厳しい祖父が統治する家で生まれた女の子・スラがすくすく育って家庭を統治する。作文を家業に家を興した娘が、一家の経済権と主権を握る。?家父長の家では決してありえないような美しくて痛快な革命が続くかと思ったら、家父長が犯したミスを家女長も踏襲したりする。家女長が家の勢力を握ってから、家族メンバー1に転落した元家父長は、自ら権威を手放すことで可愛くて面白い中年男性として存在感を表す。スラはどの家父長よりも合理的で立派な家長になりたいと思っているが、スラの家女長革命は果たして皆を幸せにすることができるだろうか。
著・文・その他:イ・スラ
1992 年、ソウル生まれ。有料メールマガジン「日刊イ・スラ」の発行人。ヘオム出版社代表。大学在学中からヌードモデル、文章教室の講師として働き、雑誌ライターなどを経て2013 年に短編小説「商人たち」で作家としてデビュー。著書にエッセイ集『日刊イ・スラ』(原田里美、宮里綾羽訳、朝日出版社)、『私は泣くたびにママの顔になる』、『心身鍛錬』、『まめまめしい愛』、『とにかく、歌』、『すばらしき人生』、インタビュー集『まじりけのない尊敬』、『新しい心で』、『創作と冗談』、書評集『君は生まれ変わろうと待っている』、共著に書簡集『私たちの間には誤解がある』(以上すべて未邦訳)などがある。インスタグラム: @sullalee
翻訳:清水知佐子
和歌山生まれ。大阪外国語大学朝鮮語学科卒業。読売新聞記者などを経て、翻訳に携わる。訳書に、キム・ハナ、ファン・ソヌ『女ふたり、暮らしています。』、キム・ハナ『話すことを話す』『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』(以上、CCCメディアハウス)、朴景利『完全版 土地』、イ・ギホ『原州通信』(以上、クオン)、タブロ『BLONOTE』(世界文化社)などがある。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
イ・スラによる『29歳、今日から私が家長です。』は、先日KBOOKラジオで紹介されていた一冊。著者が、今月開かれるKBOOKフェスティバルにも参加するとのことで、早速読んでみた。
イ・スラは、2018年に著作『日刊イ・スラ』が韓国で爆発的な人気作となった新鋭作家だとか。
本作『29歳…』は、日本では今年の4月に出版となった新作。
著者と同じ名前の主人公スラが、自ら出版社を立ち上げ、母を調理師、父を清掃夫として雇用し、三人で会社をきりもりする日々が綴られる。
社長でもあり、「家長女」でもあるスラ。
家長と社長が長女になったとき、どんな関係性がそこには生まれるのか。軽やかに、日常を織り交ぜながら物語られていく。
ときにはお互いの理解や敬意が足りなかったり、言葉が足りないこともある。
でも、互いに理解できないことがあるということを理解すること、常に互いを尊重することが、どんな関係でも大切であることが、父と母、友人たちとのやりとりや小さな出来事の中に、織り込まれて語られる。
従来の家父長制では軽んじられてきた女性の尊厳、男性たちに押し付けられてきた「強さ」。「家長女」になれば、簡単にそれらを飛び越えていけるという単純な話ではなく、模索しながらも新しい形を共に作っていく、その中で確認し合う互いへの愛を描いた物語。
一見新しい何かに思える題名の作品だけど、根源的で普遍的なものを語っているように思う。
男性が威張ってなくて、女性や子どもが対等に尊重される関係性って未来がある、そんなふうに思わせてくれる。
家事に追われて日々くたくたになっている私には、そっとなぐさめられるようなエピソードもあり、ぽろぽろ泣いて読んでしまった。
韓国では若手No.1の人気作家となった著者。
これからどんな作品を読めるのか楽しみだ。本作はドラマ化も決定したとか。読みながらドラマになったら面白そうだなと思ったいたから、そちらも楽しみ。
Posted by ブクログ
娘スラが社長で母ボキと父ウンイが従業員で、娘が家長の家族の物語。
淡々とした語り口が心地良くて、ユーモアがあって明るくて時にちょっと泣ける。こんな家族っていいなと思える。3人の暮らしぶりは著者の自伝的要素が含まれており、エッセイを読んでいるように気楽に読めて楽しい。
イ・スラさんの書く文章が本当に素敵で惚れた。
『日刊イ・スラ』も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
家父長制の時代が音を立てて崩れていく。そんな予感させる物語だった。29歳で両親を雇って家長になったスラ、心からかっこいい。家父長制という言葉が死語になり、《男女参画社会》が本当の意味で成立することを心から望む。
p.210 ともかく、それが印刷だというスラの答えはもっともだ。作家を生み出した技術の歴史は、数千年前から大きな変化を伴いながら流れてきた。スラの職業も、木版印刷術と活版印刷術とデジタル印刷術の発明によって可能になった。無垢浄光大陀躍尼も直指心体要節もグーテンベルク革命も、重要な情報を一気に広めたいという欲望から出発したはずだ。おかげで、物語を作る人たちの功績を何度でも複写することができるようになった。一度書かれたすばらしい物語は、一日二日経ってもハエはたからない。何百年経っても生命力を失わないような作品が、スラの書斎に並べられている。
しかしそれは、ボキの世界では決して当たり前の話ではない。
p.213 玉葱で涙を流すように、ティタはときどきたいした理由もないのに泣きだした。
しかし、ナチャもティタも深刻に考えなかった。ティタの涙は二人に楽しいひとときを与えてくれさえした。小さい頃、ティタは悲しい涙と笑いの涙を混同していた。泣くのは喜びを表現する方法だとティタは思っていた。
p.218 ボキは小説の最後のページを閉じる。「甘くて苦いチョコレート」は、ボキが高校を卒業して以来初めて完読した小説となった。本を読むのに午後をすべて費やすなんて、とボキは自分自身に驚く。そして本というものに驚く。
「本ってやっぱりすばらしいね」
その事実を長い間忘れていたかのように、ボキがつぶやく。ボキの頭の中に鮮やかに、小説の中の文章が蘇る。
「ティタのおばあちゃんがこう言うんだけど、私たちは皆、心の中にマッチ箱を一つずつ持って生まれてくるんだって。でも、一人ではマッチに火をつけることができないってね」
「そうそう。ろうそくの火は結局、他人だって話だったよね?」「うん。一人でめらめら燃えることのできる人は少ない」
「そうだね」
「誰も読んでくれないとわかってて、原稿が書ける?」
「ううん」
「あたしだって同じよ」
ボキは自分を少し理解して、つまり自分と少し近づいた状態で書斎を出る。書斎を出てキッチンに行く。夕食を作る時間だ。ほとんどの人は本を読まなくても生きていけるし、生きていかなければならないけれど、ごはんはそうはいかないからだ。にもかかわらず、一食の食事は一編の文章ほどありがたく思ってもらえないことがある。
だけど、キッチンについての文章だけで満たされた本もあることを、今日のボキは知っている。自分に似た女の子が、来る日も来る日も料理をする小説がどれほどエキサイティングで、エロティックで、マジカルで、輝かしいものであるかということも。
p.298 テレビの前に集まった家族に囲まれて幼少期を過ごしました。テレビ画面には、いつも家族ドラマが映し出されていました。他人の家でくり広げられるさまざまな出来事に、わが家の人たちは本当に何度も泣いたり笑ったりしました。泣いて、笑う大人たちのそばで、家族という小さな単位の社会を幼いなりに学びましたが、それを自分も踏襲したいのかどうかは、よくわかりませんでした。あのころに見たドラマに清々しさと名残惜しさの混じった気持ちで別れを告げ、この『家女長の時代』(税理)を書きました。これは私がまだ見たことのない形のホームドラマです。
家族の世話と家事を無償で提供していた母たちの時代が去り、愛と暴力を区別できなかった父たちの時代が去り、権威を握ったことのない娘たちの時代も去って新しい時代がやってくることを願って書いた物語です。家父長の「父」を「女」に置き換えてみると、興味深い秩序が生まれました。その秩序が体験できる機能をこの小説に持たせたかったのです。凛々しい娘と美しいおじさんと珍妙なおばさんが、互いから何を学ぶのかということに興味津々だったし、三人が失敗と挽回をくり返すことで良いチームになってくれることを望みました。
こんな物語をテレビで見たいと思って書きました。
このささやかな一冊の本が家父長制の代案になることはないでしょう。ただ、無数の抵抗の中の一つの事例になればいいなと願うばかりです。長くて根深い歴史の流れに明るく抗う人物をこれからも書いていきたいと思います。新しいやり方で関係を結ぶ家族の物語だけでなく、家族という呪縛から軽やかに解放される物語を書いてみたいという思いもあります。愛と権力と労働と平等と日常についての学びは、いくらやっても尽きないみたいです。この学びを長く続けられるよう、少しでも長い歳月が私に許されることを望みます。
Posted by ブクログ
読書記録61.
29歳、今日から私が家長です。
作家・出版社の長としての娘が両親を社員として雇い、書店との受注処理や在庫管理など出版社の業務と共に、父は掃除洗濯、母はその才能を活かし料理台所仕事を担当し月給を得て、娘である社長が給料(専従者給与)として支払う
家事労働を外注して対価を払うのは当然だが、それを両親に支払うという循環
妻や嫁が担う家事労働にも対価が生まれる
社員と社長として敬語で話し合う日常に、フィクションではあるが自伝的要素もあるという事で、実際のご両親を描いているように思えて楽しみに読んだ
韓国料理に関心の深い私が特に興味を深めて読んだのは、台所仕事を受け持つボキ氏(母)が実家に行って行うキムジャン、テンジャン(味噌)作りのための出張手当の章
『労働の対価はお金で支給するが、中にはお金を払ってもらなかなか買えない労働もある』p84
ボキ氏がいなくなったら誰が味噌を作るのか?
新しい形の家族の物語でもあり、私にとっては韓国の食文化を守り繋いでいく為の考えを深める一冊でもあった
Posted by ブクログ
斬新!
「風の時代」をめちゃくちゃ反映している人物設定。
著者は占星術を意識しているのだろうか!?と思うほど、占いの型にハマった人間関係です。
この作品では「風の時代の」のこんなところが盛り込まれていました。
・個性、個人、といった個を大切にする
・合理的な考え、ものの見方
・今までの家族の在り方を刷新
世の中では「風の時代」と騒がれて、「フリーランスにならないといけないのか?」「独立しないといけないのか?」ムードが漂っているらしいですね。
それは集団(会社とか組織)に所属するのではなく、「個を大切にする」=個人で何かをやらないと、と読み解く方が多いからなのかもしれません。
それも一意見ではありますが、「個」を大切にする方法ってそれだけではないと思うのです。
この本の家族のように、自分や家族にとって心地よい「個」を大切にする方法もあるのだと思いました。
まず、登場人物の紹介から。
(登場人物もめちゃ12星座の特徴が色濃く出ている)
・スラ
作家
水瓶座っぽい。
一家の大黒柱。
家族の在り方を一新し、合理的に物事をみて判断。
新しい風を取り込むのが上手い。
・ボキ
スラの母親
蟹座っぽい。
母性愛強し。共感力が強い。
信頼ある人と心がつながっていればよい。
常に大切な人の事を考えている。
・ウンイ
スラの父親。
おとめ座っぽい。
自分が表舞台に立つというよりも、サポート役が向いている。細かいところに気が付く。若干神経質で完璧主義なところも。
この家族、何が変わっているのかというと、スラが会社の社長でその従業員として両親が所属しているのです。
なので、スラからボキとウンイは給料をもらってます。
お金を稼ぐ人がTOPでそれをサポートする人が従業員。
社会の構造を家庭というプライベート空間に取り入れた斬新さよ!
(こんなの読んだことがない!感動しました)
この風変わりな家族関係は、スラの合理的なモノの考え方と当たり前と思われていた家族の在り方を一新した革命力あってのものだと思うのです。
「みんな得意な事をして、協力しながら生きていけばいいじゃない」
スラの「個」を大切にする考え方はこういうことだと思うのです。
近い将来、この家族の形が増えるかもしれないですね。
※四十も過ぎると斬新なものを目にする機会はそんなにないのですが、久しぶりのヒットです。
この書籍はドラマ化されるみたいです。
誰がスラを演じるんだろう??
気になるところです。