【感想・ネタバレ】それでも、生きてゆくのレビュー

あらすじ

2011年のドラマ「それでも、生きてゆく」シナリオ全11話と、著者あとがき、製作陣座談会も収録した決定版!

14歳の夏、友人の文哉に妹を殺された洋貴。一方、兄の文哉が殺人を犯したことで、以降、名前を変え住む場所を転々とする日々をおくる妹・双葉。
事件から15年後、ある思いを抱え洋貴のもとを訪れた双葉は、洋貴の父から兄が8年前に医療少年院を出たと聞かされる。ともに文哉を追い、事件に向き合ううち、やがて二人は互いに惹かれあってゆくのだが――。
被害者遺族と加害者家族の双方を丁寧に描きながら、彼らの日常を掬い上げることで究極のラブストーリーとして多くの視聴者の胸を打った傑作ドラマ「それでも、生きてゆく」。全11話のシナリオ完全版と、脚本・坂元裕二×プロデューサー・石井浩二×演出・永山耕三×主演・永山瑛太&満島ひかりによる録りおろしの座談会、書き下ろしあとがき、ドラマの初期の企画書まで収録した、決定版。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「それでも、生きてゆく」は僕の最も好きなドラマであり、坂元裕二という脚本家にハマった作品である。
もちろん、「わたしたちの教科書」や「Mother」を観て、おぉ、何かいいなって思ってはいたんだけど、このドラマは、毎週、真剣に観て録画を2回くらい見直して、ってくらいのめり込んだ。今でも、満島ひかりの野茂英雄をマネするシーンや風間俊介の背中にドロップキックするシーンとか覚えている、っていうか全話録画してあるので、たまに観たりするのだ。

坂元裕二のドラマの本質は「がんばっても、伝わらない、理解し合えない」という諦観を前提として、それでも、いつか、ほんの少しだけど、いいことがあるかもしれない、と思わせてくれるところなのだ。
生きていると、とにかく、何だかなんだ、思い通りにいかないことが多い。むしろ自分の望んだようにモノゴトが進むことの方が少ない。言い換えると3勝7敗くらいの人生なのだ。
そんな僕たちに対して、「いつ恋」の音(有村架純)は『努力ってときどき報われる』と言う。そうなのだ、時々、なのだ。ほとんどの場合、努力は報われないのだ。だけど、もしかしたら、大成功とはいかないまでも何かいいことがあるかもしれない、と思うからこそ、生きていけるのだ。坂元裕二は、時に手紙というツールを使ったりして、僕たちをそんな気持ちさせてくれる。

最終回の二人の台詞が本当に「珠玉」だと思う。
【洋貴】
そしたら、僕ら、道はまぁ、別々だけど、同じ目的地、見てる感じするじゃないですか。それ、すごく嬉しくないですか。
【双葉】
私が誰かと繋いだ手のその先で、誰かがあなたの手を繋ぎますように。

この本の魅力は、巻末の4人(坂元裕二・石井プロデューサー・瑛太・満島ひかり)の座談会、そして坂元裕二のあとがきにある。そこにはこんなことが書いてあった。これを読むだけで、この本を買う価値がある。
【石井P】
本当に真面目に作らなきゃいけないという思いでやっていました。その一番の理由は、坂元さんがこのドラマに取り掛かる時に「本当にヒリヒリするドラマを作りたいんだ」と言ったことなんです。
わかりやすいハッピーエンドにしなくてもいいので、ちょっとでも明るい未来の兆しが見えるところで終わるということさえ約束していただければ、僕は全力でこの企画を通します。
見た人がタイトル通り「やっぱり生きていこうかな」と思えたドラマなんじゃないかと。

【坂元裕二】
心を込めて書いたらちゃんと誰かに届くんだなって思うんですよね。

【あとがき】
このあとがきを書くにあたって、当時のメモ帳を開いてみたんです。記憶になかったんだけど、一行目にこんな言葉がありました。
“がんばってもがんばっても”
振り返ってみると、洋貴と双葉をはじめとする登場人物たちに共通する言葉だなと思います。
がんばってもがんばっても、報われない。
がんばってもがんばっっても、届かない。

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2024年03月23日

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