あらすじ
米国、ロシア、サウジアラビアの三大産油国の動向とともに、近年の脱炭素化政策の功罪、ウクライナ戦争の影響などを解説することで、今後のエネルギー産業の将来を展望します。
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Posted by ブクログ
石油連盟に所属し、日本の中東石油資源確保に従事してきた著者が、エネ研移籍後分析活動を行っており、定年に当たりこれまでの知見を総括した地政学・経済学分析書。スタンダード・オイルに始まり、第一次世界大戦前にはBP、ダッチ・シェルグループなどの石油メジャーが石油価格をコントロールしていたのが、第一次オイルショックでOPECに価格決定権を譲り渡し、1985年以降のダンピングによる石油価格下落がソ連崩壊を招いたという分析は見事である。ソ連でもロシアでも石油(のちに天然ガス)のモノカルチャー経済構造を、石油を安価で圏内に供給できていたからこそのロシア経済圏であった。石油価格暴落のなかでバルト三国の独立をみとめ、ソ連が崩壊したのを見ていたプーチンは、自分の修士論文で石油供給による経済支配力を強く認識していたものと思われる。シェールブームが過ぎ去り、コロナ後に石油・天然ガス価格が高騰した2023年はなるほど、ウクライナを攻めるのに外政介入がむつかしく、石油利権を強化できる絶好のタイミングであったろう。2016年にはOPECはOPECプラスに移行し、G20が石油価格をコントロールするようになった今、中東に石油供給を依存し続けている日本は、中東と運命共同体を辿らざるを得ないのであろうか。
サウジ王家の力関係を分析した書物も少ないなかで、王位継承のメカニズムにも触れていたのは目に新しかった。