【感想・ネタバレ】春休みに出会った探偵はのレビュー

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Posted by ブクログ

いくつか身近で起こる???な事件をするりと解決しちゃう近所の探偵さん、今津さん。なぞもなぞでなるほど〜ととても納得できるものばかり。よかった!

p.267 あのとき今津さんは、「君たちの言う帰れるところって、いつでも子どもに戻れて、優しい親が待っている家なんだろうね。心配しなくていい。ほとんどの人が持っていないから。家があったとしても寛容な場所とは限らない。灼熱の砂漠とか酷寒の荒野かもよ」と言った。
今津さんがお母さんの弟ならば、「寛容な場所とは限らない」とは、北海道の自分の家を指しているのだろうか。そこはお母さんの実家でもある。
灼熱の砂漠や酷寒の荒野を魔えにするような、とても居心地の悪いところだとしたら、お母さんは離婚した後、どうしていたのだろう。

p.270 がとても難しい。
「うまくしゃべれなくて。今何か言ったら、ひどいことを言いそう。自分で自分がすごく嫌いになりそうな、ひどい言葉。だから何も言えなくて」
「無理して言わなくてもいい。取り繕った上辺だけの言葉を聞かされる方がしんどい」
「そうかな」
「そうだよ」
「でも、いつまでも黙ったままじゃいられないでしょ。今にもこぼれそうな縁まで盛り上がったコップの水を、手に持って歩いている気分」
根尾は橋の欄干から流れゆく水面をじっと見つめ、しばらくしてから言った。
「コップを大きくすればいい」
「どうやって」
「安住さんも勉強しなよ。いろんなことを学んで、本を読んだり人と会ったりしていると、たぶんコップは大きくなるんだ。飛んでも跳ねても水はこぼれなくなる」花南子は欄干の上に自分の両手を出した。重ねた左右の指の間に、小さなガラスのコップが見えるような気がする。受け止め切れない、もしかしたらの現実が、なみなみと注がれている。
ニュースや漫画などの創作物でしか見たことのない身体的特徴、それについて自分は偏見は持ちたくないと思っていたし、そういう人がいても分け隔てなく接するつもりだった。心ない言葉を投げつけるような人間を嫌い、つねに公平でありたかった。
思うのと実際の行動はたぶんちがう。心もちがう。他人事と自分事でも大きくちがう。

今の自分は小さな小さなコップしか持たず、今すぐ川面に叩きつけたい衝動をこらえるのがやっと
だ。
「安住さん、おれたちまだ十五歳だよ。変われる余地だけは山ほどあるよ。少なくともおれは、春休みの前と後ではずいぶん変わった。来年の春休みまでにはもっと変わっているかもしれない。今がすべてじゃないよ」
「私も変われる?変われば・・・・・・」
今津さんのことをもっとちゃんと考えられるようになるだろうか。
春休みになるまで、今津さんとは口を利いたこともなかった。一•二号室に引っ越してすぐ五月さんが入院してしまい、直井さんの件で初めて関わりを持った。そのあと庭先に不審者が現れたので花南子が不安を訴え、解決に一役買ってもらった。川端さんのときは中学生コンビを危ぶんで、今津さんの方から事件の詳細を調べてくれた。
もしかしたら向こうからすると、予定外に近づきすぎたのかもしれない。それで五月さんが退院してすぐアパートを出た。そっと静かに離れていくつもりだったのに、火事が起きて危険な部屋に飛び込まざるをえなくなった。花南子と呼びかけ、母親について話してしまった。その直後から行方がわからない。
今津カホルという名前を使っていたわりに、徹底して関わりを避けていたのは、正体を知られたら娘は母親を失うとわかっていたからか。
娘。あの人にとって自分はどういう存在だったのだろう。
自分は母親をなくすのだろうか。

p.272 花南子はあきれたり笑ったりして、重ねていた左右の指をぱっと開いた。イメージの中のガラスのコップは川面に落ちることなく、放たれた鳥のように羽ばたいていく。
いつか両手で、父親ではないもうひとりの親を掴めるだろうか。南に咲く花のように強くたくましくなって。
自分はなくさない。自分の中の大切なものを。

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2024年05月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中2の花南子は父親が海外勤務になり、曽祖母の経営するアパートで暮らす事になる。だが、曽祖母の五月がギックリ腰になり入院していまう。そんな中、宛先不明の封書が届き、同級生の根尾と共に偶然出会った興信所の調査員・今津と共にご近所で起きた謎を解いて行く…

大人では出来ない中学生ならではの聞き込みなど、ちょっと危なっかしいけれど中々の探偵ぶりの二人でした。
今津の正体が判った時、少ししんみりしてしまいましたが、根尾の存在に救われた気がしました。

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2024年05月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

親の離婚により父娘2人暮らしだったが、その父の海外赴任に伴いひいおばあちゃんである五月のアパートに越す花南子。同級生の根津といろんな問題を、調査員の今津が度々助けてくれながら謎解きする。今津の正体が意外で興味深い。なるほど見守ってくれてるのか、と。それを知って、また続編が出るといいな。花南子たちの成長も見たい。

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2024年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【収録作品】きらきらを少し/ここだけに残ってる/マイホームタウン/おばあさんがいっぱい/ここから上がる

中学2年生の花南子は、両親が離婚した後、父親と二人暮らしだったが、その父親が海外に赴任することになり、曾祖母の営むアパートの一室で暮らすことになる。
そして、近所に住む同じクラブの根尾と共に、さまざまな事件に関わっていく。その過程で同じアパートに住む調査会社の調査員・今津と出会う。今津は渋々ながら彼女たちの頼みに手を貸すが。

花南子と根尾の好奇心にはヒヤヒヤさせられるが、一つ一つの事件の背後にはなかなかヘビーな問題が隠れている。
自分たちの置かれている状況にめげず、前向きに進もうとする二人はまぶしい。そして、自分の中にある偏見に気づいた花南子の柔らかな感性も好ましい。

すべてが明らかになり、花南子がずっと守られていたことがわかる最終話は温かい気持ちにしてくれる。今津は優秀で、真面目で、温かい人である。五月のバイタリティは見習いたい。

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2024年05月02日

Posted by ブクログ

ふんわり柔らかな感じのハートフルなミステリーをよく書く大崎梢さんの作品だから、今回もそんな感じかと思ったが、最後に「えーっ!」ってなった。

そんな展開にしなくてもいいのに…。そのままな感じで終わらせればよかったのに…。時代に合わせたのか。

一般書というよりはYA向けかな。

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2024年04月25日

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