あらすじ
辻原登、髙樹のぶ子、角田光代の選考委員3氏の全会一致で選出された第15回日経小説大賞受賞作は、江戸時代後期の奥州を舞台に繰り広げられる極上の歴史ミステリー。
時は江戸時代後期、文化文政の世。遠州浜名藩主の四男、部屋住みの響四郎と町方の女房との根津権現での出会いから物語は始まる。互いに名も身分も明かさずひとつになり別れた。
響四郎は羽州新田藩に継嗣として迎えられることになっていた。外様とはいえ大藩である羽州藩支藩への異例の末期養子は、幕閣の出世頭である浜松藩主・水野忠邦の斡旋によるものだった。新田藩が預かる幕府直轄の島では、蝦夷地の花として知られる浜茄子が咲く。小藩とはいえ譜代の響四郎に白羽の矢が立ったのは、その秘密を探らせるためでもあった。
響四郎に江戸から付き従ってきた浜名藩士が、次々と島で不審の死を遂げる。沖合で見られる怪異現象がささやかれ、忍びや隠密が暗躍する島で何が起こっているのか。その真相が明らかになったとき、そして一夜の情事で刻まれた恋の行方は……。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
2024年をもって最後となる『日経小説』受賞作。選者の一人、角田光代氏が「候補作のなかで『紅珊瑚の島に浜茄子が咲く』がダントツにおもしろかった」と表しているが、その通り。
この小説を書くためにいったいどれだけの資料を読み込んだのだろうか?また、土地の描写もリアルで!架空の「華島」の情景は読んでいて瞼に浮かんでくる。
時代ミステリーとしてクオリティは高く、クライマックスに向けての仕掛けはお見事。そして、この作品は登場人物がスーパースターではなく、苦悩の中で果たすべき役割を見出だしていく姿に打たれるものがある。更には、先が読めるとは言え、素敵なエンディングが待っている。
読後感、爽快な佳作である。