あらすじ
「好き」ってどんな気持ち? 「付き合う」って何をするの? 多様な親密さのありかたを学び、私たちの社会と恋愛の関係を考える。
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Posted by ブクログ
中学生くらいの女の子と著者による対話という体の形式で、恋愛について考える本。タイトルは「「恋愛」ってなんだろう?」となっているが、内容としては、性の多様性にまつわる基本的な性理論や、恋愛という文化の歴史、諸外国と日本の現在の恋愛文化の実情に関する良質な入門書。10代向けのレーベルだけあって、ちょうどいいくらいの難易度にまとまっているので、性や恋愛にまつわる知識を頭の中でまとめるのに、すごくよかった。
個人的には、人を愛するという心理的なこと、性的な関係を結ぶという生物的なこと、社会的に夫婦であるということが認められる社会的なことの三つを、一つのつながりとして考える「ロマンティックラブ・イデオロギー」の歴史的な成り立ちが分かるのが、とてもためになった。明治時代までは、性的な関係についてどのように考えられていて、その後、どういう歴史を経て、今の自由恋愛、性的関係、結婚が結びつく考え方に変わっていったのかがよく分かる。
体裁的にも、ちょっとライトな恋愛相談的な雰囲気で進んでいくが、「ロマンティックラブ・イデオロギー」に限らず、しっかりと学術的な感じを保った用語の解説を交えながら、恋愛についての考え方を教えてくれる。最初は、「法律上の性」「性的指向」「性自認」「性表現」の違いから「LGBTQ+」の分類の考え方に始まり、「カミングアウト」「アウティング」「ルッキズム」といった問題について端的に解説してくれる。次には、「告白」の各国事情から、「恋愛」の進め方が一つの文化であることを教えてくれて、「性規範」から現代の「デートDV」が起きるメカニズムを解説したりしてくれている。最後には、「同性婚」に関する結婚制度や子どもの親権といった議論もする。
とにかく、内容は重厚である。ただ、それが中学生との対話形式でキャッチーに読めるところがいいところ。
最終的に、これが恋愛である、という結論を出すわけではなく、自分たちの身の回りにある恋愛について考えるためのヒントをくれる。身近な恋愛関係を少し違った見方で見れるようにしてくれるいい本だった。