【感想・ネタバレ】わが投資術 市場は誰に微笑むかのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

非常に読みやすい語り口の本なので実質2日程度で一気読みした。

昔の野村證券のえげつない営業方法などもサラッと触れられていておもしろいが、

本質はやはり「投資術」のところだろう。

ヘッジファンドのマネージャーなので、当然レベルの高いリサーチを行っているんだろうけれど、実質的な投資方法は割安な株を見つけてロングで保持して機会を待つ、というシンプルな方法である。しかし、言うは易く行うは難し。

また、ショートについては勝ち負けが激しくて、自らも認める失敗したショートの話も盛り込んであるのが面白い。やはりプロでもショートは大変リスキーな投資(投機)術なのだとわかる。

個人投資家で大きなリスクを取るべきでないような人が空売りなどの信用取引をするのはかなりリスキーな行為だということがわかる。最近もさくらインターネットの株を信用買いして多額の含み損を抱えていた人がツイッターで話題になっていたが、リスクが高い。

シンプルな投資法と書いたが、実際には泥臭く会社訪問などをおこなって時間をかけてリサーチした結果投資しているのだろうということが端々から伝わってくる文章である。

章立て構成は

1章はイントロ、3章が投資術といった感じで、4〜7章以降はファンドの自伝的な内容になっている。2〜3章で説明された投資術の具体例という形になっていて読みやすい。8章には素人向けにやってはいけない投資が説明され、最後に日本株がどうなっていくかの見立てが書いてある。

# 日本株について

印象に残ったのは、コロナのような大きな下げ相場では全力で買う、ということである。もし未曾有の危機が起きて、株価が大きく下がった場合、あり得るシナリオは、日本や世界が破滅するか、回復するかである。破滅するならどうせ死ぬので買おうが買うまいが関係ない。しかし、回復するならば、かならず高くなるので買いなのだ、という意見である。まぁ実際には現金をある程度確保して未曾有の危機をやり過ごす必要があるためオール・インはできないわけだが、たしかにそうだ、と思える考え方であった。実際に、コロナ危機直後に大きく相場が下げたときに買った人たちは今大きな含み益を得ているだろう。

ここからあり得る未曾有の危機は、

- 核戦争
- 東海・関東大震災
- COVID-19以上の大震災
- 地球温暖化の加速

などが挙げられるという。

実際には、暴落したときだけ買うことは難しい(いつ来るかはわからない)ので、常に市場を見ていて、暴落したとき「も」買うのがよいという。

日本株を取り巻く予想としては、

- 日本の実質GDP成長率は0
- 超高齢化+あまり外国人は増えず、労働人口は減り続ける
- インフレ率は0~2%。スパイラル的なインフレは起きない。
- 金利は上がらない。上がっても10年国債で2%、短期で1%
- 為替は円高が進む 120円/USD
- 米国の金利が低下、日本は変わらず
- 上場企業の収益成長率はインフレ率程度
- 増配・自社株買いは続く
- 新NISAで個人投資家増える。政府は株式市場にネガティブな政策が取りづらくなる。

問題は、内需の縮小。そのために、「消費者余剰を取りに行くビジネス」、価格差別化のビジネスに注目と述べていてる。

- 芸能や野球のファンクラブ
- ディズニーランドのプレミアアクセス
- お薬のタイミングで価格が変わる航空券
- 投げ銭ビジネス

また、海外進出は日本人の英語の下手さ(というか海外との文化的つながりの薄さ?)のために、日本企業だけでは難しいとする。いかに技術を持っている企業が海外進出を狙ったとしても、日本人のビジネスマンだけではできない。そのため企業統合が重要だと説く。

# 投資術について

投資術は、「割安小型成長株」投資であるという。

小型株が良い理由は

- 割安株が多い
- 独自のリサーチがしやすい
- 機関投資家が持っていない
- アナリストがカバーしていない

からである。

しかし、小型株が割安な理由は正当な理由があり、まずは流動性が低いからである。

他に

- 価格決定力がない(下請け)
- 参入障壁の低さ
- 優秀な人材がいない
- 二代目社長が馬鹿
- 世間の関心が低く、不祥事を起こしやすい
- TOBしにくい株主構成→経営者が堕落
- 粉飾決算のダメージが大きい
- 海外進出のリソースがない
- 相続のために安く抑えている
- オーナー社長の引退時に莫大な退職金

などがある。

しかし、そのため小型株には周りが安いせいでつられて安いものがあり、そういったものが狙い目であるという。

まともで自己資本比率の高い中小企業不動産株などは狙い目だという。

こういった割安小型成長株は、「バリュエーションのはしごを登る」

どこも注目していなかったのに、成長が始まるといちよし証券が目をつけてレポートを書き、その後注目する証券会社の格が上がっていく(SBI,大和・岡三、みずほ、野村證券・外資)。

買い手が、個人や小型株ヘッジファンドから、投信、日本株投信、海外小型株投信、一般HFなどにあがっていく。

PERは、当初5程度だったものが、20ぐらいまで徐々に上がっていくという

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2024年03月25日

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