【感想・ネタバレ】工作・謀略の国際政治 - 世界の情報機関とインテリジェンス戦 -のレビュー

あらすじ

ガザ紛争、宇露戦争、中国、北朝鮮の動向、読み解く鍵は情報戦である!
国際政治における各国のインテリジェンス組織の裏面を詳細に解読する!

●別班ブームと日本の実情、ガザ紛争、ウクライナ戦争、中国の監視システム
北朝鮮の暗殺組織 インドvsパキスタンの過激な情報機関、キューバ情報機関
ドイツ特殊部隊の闇、日本赤軍とシリア秘密警察

世界の混迷のカギを解き明かすのは、やっぱり諜報!

世界各地で緊張が高まるこのような状態は今後も長く続くが、そんな時代を生き抜くには、軍事的な防衛力と同じくらいに必要なものがある。
情報戦を勝ち抜く力だ。
実際、ウクライナでの攻防でもガザ紛争でも、探り合いの攻防で敵対する相手を出し抜くとともに、相手陣営の内部を心理的に揺さぶり、さらに国際的な世論までも味方につける高度な“情報戦”が行われている。
そして、その情報戦を担っているのが、米国のCIA(中央情報局)やNSA(国家安全保障局)、ロシアのFSB(連邦保安庁)やGRU(参謀本部情報総局)、あるいはウクライナのGUR(国防省情報総局)やイランの「イスラム革命防衛隊コッズ部隊」、イスラエルの「モサド」や「シンベト」、中国の「公安部」や「連合参謀部情報局」、北朝鮮の「国家保衛省」や「偵察総局」といった各国のインテリジェンス組織だ。
ここで言うインテリジェンス組織とは、国の安全保障のために情報を収集・分析する情報機関のことで、彼らは諜報機関でありながら、同時に相手陣営を惑わしたり誘導したりする秘密工作機関でもある。
自国民を監視・弾圧する独裁国家では、しばしば恐怖の「秘密警察」の顔も持つ。
こうした組織の活動は非公開が原則なので、あまり日々のニュースでは報じられないが、現代の国際政治では非常に重要な役割を担っている。
こうしたインテリジェンス組織の仕組みとウラの活動に目を向け、国際報道で漏れ伝わる関連情報を繋ぎ合わせることで、現代国際政治の深層の一端に迫ってみたいというのが、本書をとりまとめた目的だ。
情報戦という言葉自体はよく聞くが、現実の国際紛争で実際のところ、それはどうなっているのか。具体的な紛争の局面での動きを追ってみようと思う。(はじめにより)


【目次】
第1章ハマス軍事部門vsイスラエル情報機関 ~インテリジェンス戦争としてのガザ紛争~
第2章 知られざる情報戦 ~ウクライナ戦争の深層~
第3章 習近平の恐怖の監視システムとスパイ・ネットワーク
第4章 金正恩「独裁体制」の源泉 ~北朝鮮の暗殺組織~
第5章 問題だらけの「日本の情報機関」
第6章 暗躍する世界の情報・公安機関
第7章 世界最強のインテリジェンス大国=米国情報機関の全貌


【著者プロフィール】
黒井文太郎(くろい・ぶんたろう)
1963年、福島県いわき市生まれ。
福島県立磐城高校、横浜市大文理学部国際関係課程卒。
講談社入社。週刊誌編集者として勤務。同退社後、フリージャーナリスト(NY、モスクワ、カイロを拠点に国際紛争取材専門)。
帰国後、月刊『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て軍事ジャーナリストに。
著書に、『北朝鮮に備える軍事学』『イスラムのテロリスト』(講談社)、『日本の防衛7つの論点』『謀略の昭和裏面史』(宝島社)、『イスラム国の正体』(ベストセラーズ)、ほか多数。

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Posted by ブクログ

世界のインテリジェンス機関の具体的な活動イメージや日本のインテリジェンスの問題点に関心がある方に読んで欲しい一冊。

各国のインテリジェンス機関の体制や機能の説明を織り交ぜつつ、直近でホットな話題である紛争でのインテリジェンス機関が果たした役割や失敗などの事例紹介もあり、インテリジェンス機関の動きをイメージしやすい内容となっている。
この本を読めばいかに各国がインテリジェンスを必死にやっているか、その結果国を守ることにつながったり、逆に国民を危険にさらすことになるかが分かる。

2023年10月から始まったイスラエルのガザ地区での紛争については、イスラエルインテリジェンス機関の失敗を取り上げている。過去のハマスの攻撃サイクル(戦力再建サイクル)より短いタイミングでのイスラエル側への攻撃や意表をつく攻撃手法に対して、イスラエルのインテリジェンス機関は兆候を捉えきれなかったし、捉えていても重要性を分析しきれていなかったと見られる。
そして1200人が殺害され、200人が拉致された。

ウクライナとロシアの戦争において、ロシア苦戦の背景には米国のCIA等のインテリジェンス機関から提供されるロシア軍位置情報、電波通信情報、ハッキングや工作員が取得した情報等により、ロシア軍の攻撃を予見してウクライナ軍の防空システムや航空機を移動することで攻撃を回避し、結果的にロシア軍が航空優勢を確保しきれていないことが考えられる。
また、ロシアが得意なディスインフォメーションないしプロパガンダについてもウクライナ側の情報通信インフラが生きていることで効果は限定的だった。この背景にも米国支援によるウクライナのサイバーセキュリティの強靭化が考えられる。
ただし、ロシアの「どっちもどっち論」でウクライナにも非があるような宣伝手法についてはある程度の効果を発揮していることは忘れてはならない。
ウクライナのインテリジェンスの努力が国家を守っていると言える。

中国は習近平体制以降インテリジェンスに関する改革をしており、反スパイ法(スパイ行為だけでなく批判や思想も取り締まれる)、国家安全法(将来の可能性も含めて取り締まれる)、サイバーセキュリティ法(ネット利用実名化による監視)等の法整備をしており、あらゆるデータから国民を監視している。また、2015年から組織改編をしており、国内と国外あるいは軍事と政治経済のインテリジェンス担当機関の棲み分けを整備している。

日本は防衛省の電波情報についてはある程度高いレベルにあり、防諜やテロ対策については警察が対応しているが、対外情報機関の機能は弱い。
情報コミュニティというインテリジェンス関連省庁の連携概念はあり、国際テロ情報収集ユニットという対外情報機関の萌芽はあるが、省庁間の主導権争い等が阻害している一面もあるし、得票につながらない施策に本腰を入れる政治家は少ない。

各国はインテリジェンスについて必死さを持って改革や運用をしているが、日本には単純に必死さや努力が足りないと感じた。

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2024年12月05日

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