あらすじ
2024年1月20日未明、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小型月面着陸実証機SLIMが月面着陸に成功した、と発表した。その後、世界初のピンポイント着陸に成功したことが明らかになり、2台の自律型小型ロボットによる画像データ送信にも成功した。
我が国の宇宙開発を担うJAXAのルーツを遡れば、戦後ゼロからロケット開発に取り組んだ東京大学の糸川英夫研究室に行きつく。本書は、日本の宇宙開発の父で、次々にイノベーションを生み出した天才・糸川英夫(1912~1999)のイノベーター人生に焦点を当てた評伝である。
以下は、本書「はじめに」から。
「2003年5月に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられたJAXAの小惑星探査機「はやぶさ」が、長い苦難の末、小惑星「イトカワ(ITOKAWA)」に着陸してサンプルを取得した後、2010年6月13日にオーストラリアのウーメラ砂漠に無事帰還したのだ。世界初の地球・小惑星間の往復飛行の達成であり、世界初のサンプルリターンの成功として、大きく報じられた。(中略)「イトカワ」と命名したのは、糸川さんがかつて所属した東京大学宇宙航空研究所(現JAXA)の後輩たちだった。「はやぶさ」が打ち上げられて3カ月後の2003年8月のことだ。」
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Posted by ブクログ
糸川英夫さんの生い立ちと数々の開発の経緯がわかりやすく纏められている本です。どの時代においても、前向きに取り組み、そして開発に求められているもの、取り組むべきものはしっかりと把握している。その姿に感銘を受けました。
創造性組織工学のスキームはしっかりと、ノートに書き込みました。まずは、ここからの10年間、何をすべきか改めて考えたいと思います。
Posted by ブクログ
「ロケット開発の父と言われ、60過ぎてからバレエを習う、という人物がいた」という事実をネットのどこかで目にし購入しました。しょうもない理由ではあったのですが、糸川さんが自分の理想の年の取り方をされているなと思い、考え方に良い影響があるだろうということで読ませていただきました。
本書に頻出する糸川さんの創造性組織工学とは何か、私にはまだ端的に表現することができないのですが、一点だけ明確に理解できたのは日本人の特性に合わせた方法論であって、米国のシステム工学とは対置した考え方である点です。
日本人は相対的に何が得意で何が得意ではないのか、論理と情緒を共存させる組織設計・思想・考え方は日本独自の視点だと感じます。そこには、経済も文化もグローバリゼーション一辺倒になる危険性に気付き始めた昨今、日本人が日本人らしく生きぬくヒントが詰まっているような気がしてなりません。