あらすじ
シリーズ累計50万部突破!社会派ヒューマンミステリーの金字塔、ついに最終章へ
在りし日の友情と恋。立ちはだかる悔恨と贖罪。
選ぶべき自分は刑事か、友か――
災害公営住宅への移転に伴い解体作業が進む仮設住宅の一室で見つかった他殺体。発見場所は出入り口がすべて施錠された完全密室、被害者は町役場の仮設住民の担当者だった。宮城県警の笘篠誠一郎刑事と蓮田将悟刑事は仮設住民と被害者とのトラブルの可能性を想定し、捜査にあたる。そこで遭遇したのは、蓮田にとって忘れがたい決別した過去に関わる人物だった――。
生活保護制度を題材に、佐藤健さん主演で映画化された第一作『護られなかった者たちへ』、震災からの復興とその闇ビジネスを描いた第二作『境界線』に続く、シリーズ累計50万部突破*の「宮城県警シリーズ」最新作。復興が進む被災地に根ざす人々の間で激しく揺れ動く心情と人間模様を描きながら完全密室トリックの謎に迫る、著者渾身のヒューマンミステリーにして、人気シリーズ三部作、堂々の完結編。
あの日、流された絆があった。
*単行本・文庫・電子書籍を含む。
【内容】
一 解体と復興
二 再建と利権
三 公務と私情
四 獲得と喪失
五 援護と庇護
エピローグ
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
今回は笘篠ではなく蓮田が主人公。
宮城県警三部作、これがラストらしい。
笘篠の相棒、蓮田は震災で家族を失うことはなく、本当の意味での共感ができず、罪悪感を感じていた。南三陸の仮設住宅で男が死体で見つかる。その男は仮設住宅にまだ残っている人の家を訪ねて公営住宅に移住するように勧めている人だった。そしてこの死体は密室で見つかった。蓮田の幼馴染たちが事件に関わってくる…
このシリーズも最後かあ。
笘篠推しだったので、蓮田は少し物足りないかなあ。
このシリーズ、笘篠の妻子が震災で亡くなっていることが前作、前々作でわかるのだけれど、笘篠と妻の最後の会話が描写されていて、笘篠が悔やんでも悔やみきれない思いを抱えていることが分かる部分がある。
同じようなことを私も経験していて(震災ではないが)、最後だと分かっていたら、あの時あんな風に受け答えしなかったのに、と今もなお後悔している。
そういう思いが重なるから、このシリーズ応援していたのだけれど、最後なのかあ。またも出てきた五代。彼も美味しいところを持っていくよなあ。前作のほうが関わりが多かったけれど。
今作に関しては沙羅の気持ちがいまいち納得いかない。貢と添い遂げる、っていうのはいいとしても、父親が歪んでいるのを認識しながら貢を放置していて、それについて何か罪悪感を抱えたりはしないのか?いや抱えているなら、なおのこと貢と別れる選択をするのではないのか?と思ってしまう。
知歌と沙羅は元カノと今妻だけれど、知歌が呼び出して、すぐに来る貢に関しては両方とも、思うところはないのか?
Posted by ブクログ
「被災地の復興は政府の方針であるばかりでなく、国民の総意といっていい。撤去される瓦礫、誕生する新しい街、戻って来る住民、よみがえるにぎわい。どれもこれも活気に満ちた事象だが、新しいものが生まれる影にはいつも破壊と消滅がある。そして大抵の者は消え去るものを歯牙にもかけない。」
被災者の心理的経過は、被災直後の「茫然自失期」、被災者同士が強い連帯感で結ばれる「ハネムーン期」、被災者の疲労や忍耐が限界に達してやり場のない怒りにかられたり、落ち込んで喪失感を抱いたりする「幻滅期」、そして、地域作りへの参加により自信が向上する「再建期」の4つに区分されるそう。「幻滅期」に自殺者が増えることは過去の震災研究から言われていることであるが、東日本大震災の被災自治体ではこの「再建期」においてもまた自殺率が全国平均を上回ったことが、精神面で被災者/支援者支援に携わる中、宮城県沿岸部の市区町の自殺死亡率の推移について研究を続けていた精神科医・大類真嗣さんにより明らかにされた。その理由を「経済的支援が終わり、生きづらさを抱える人の精神的負担が重くなった可能性がある。仮設団地でできたコミュニティーが分断されたことも大きい」としている。
この作品では、まさに多くの被災者が前を向き、また歩き出そうとするこの再建期に精神的負担を抱え立ち上がれないもの、まだ前に歩みを進められない者など、復興の陰に黙殺される「消え去る者」にスポットを当てている。
国や自治体が本来の役割に則り大局的見地に立ってハード面の再開発・復興を最優先することはやむを得ないこと。ただ、国や自治体では行き届かないソフト面(生活面・精神面)でのサポートを民間のボランティア団体の善意と持ち出し頼みにせず、それを担う専門知識を持った人員の育成や金銭的なバックアップを行うこともまた国や自治体にしかできないこと。
地震大国日本において、東日本大震災の被災は誰にとっても明日は我が身。にもかかわらず、阪神淡路大震災から何度大きな地震が起きようとも、その度に浮上するのは同じような問題ばかり。台湾地震の際、台湾の防災体制の確立ぶりには、日本の体制との差をはっきりと見せつけられた。その鍵となるのが災害時に備えた平常時からの官民協力、連携。 頻繁に災害時の研修や避難訓練を実施しているそう。その中で各ボランティア団体の強みを把握し、災害時状況に合わせた団体をピックアップ、派遣するという非常に合理的な仕組み。平常時からの連携は、被災地を食いものにする悪辣な団体を浮き上がらせ、排除することの一助にもなるだろう。
日本の地方自治制度下で、台湾の国家規模の防犯体制をそのまま取り入れることには様々な弊害があるのだろうけれど、大災害時には結局は国が主導を握らざるを得ない現状、他国の良い政策を何とか取り入れて一日も早く、大災害に強い国になってほしい。
Posted by ブクログ
三陸の魚を専門に扱う魚屋さんでランチしたあと読んだ一冊。宮城県警3部作の最後。
中山さんが講演会で「このシリーズは被災してない自分が書いていいのかと思っていて、自分から今回で終わりにしてほしいとお願いした」ようなことを言っていた。そう言いたくなる気持ちが少し分かるような作品。
ミステリーとしてどうかよりも、被災した人たちの置かれた状況や心情がひたすら心に残る。
被災地が舞台だからか、シリーズ通して、殺した人・殺された人よりもっと悪い人というか存在がいる気がしてちょっとモヤモヤする。
制度って、こぼれる部分もあるし完璧じゃないけど、外に出てしまえば「大いなるもの」と同等のパワーを持つんだなと改めて戒める気持ち。
Posted by ブクログ
話としてはまあ面白かった。 が、いくら親身になっていたとしても、赤の他人の殺人を庇うかなと疑問。被害者の妹も天涯孤独に
若歌が貢を利用したのも後味悪い おカネの為に別れた腹いせにもとれなくもないし
それにしても苫篠さんはすごいな 頑張れ蓮田
Posted by ブクログ
東日本大震災から7年経った仮設住宅のお話
役場の復興事業担当職員の遺体が仮設住宅の密室状態で発見、仮説撤去スケジュールをすすめる仕事がら住民とのトラブルか?
笘篠刑事の感じている「被災者で無事だった後ろめたさ」(共感は難しいが)いつまでも囚われ捜査の最中もぐるぐると痛々しい刑事だったが、ストーリーの中心テーマだった、笘篠と幼馴染の関係にヒビが事件を複雑に・・・読むべし
それにしても震災後の復旧に関わる行政のが「復興」と言い出すことで被災者ではなく利権に予算が吸われて、暮らしを取り戻すべき人には何も当たらない理不尽さに怒りを覚える作品だった
Posted by ブクログ
宮城県警シリーズ、好きなんだよなぁ。
東北の震災という大きなテーマが走りつつ、シンプルに殺人事件を解決する部分もおもしろい。
登場人物も味があって、いい奴もいれば悪い奴もいる。
必ずしもハッピーエンドだけでは終わらないというのを、登場人物たちにまつわるエピソードだけでなく、震災の存在がひそかにずっと示し続けている。
今回のお話では、震災で家族を亡くした者・そうでない者の間に存在する溝に着目していた。
家族がみんな生き残ったから、という申し訳なさは感じなくてもいいのではと思うが、実際にはそうはいかないのだろう。
失ったものの唐突さについて、到底納得いかない。あまりにも運の要素が大きすぎる。
こう思うと、人なんていつどんな形で分断が生まれるかわからないものなのだと思ってしまった。
中山さんが描く殺人事件に関しては、一筋縄では犯人に辿り着かないところがやっぱり好きだ。
そして、最後は人に対してポジティブな感情で終われるところも。
このシリーズは最終章ということで、笘篠さんにもう会えないかと思うと寂しいが、中山さんの描く素敵な人物との新たな出逢いに期待したい。