あらすじ
受刑者たちが、そっと心の奥にしまっていた葛藤、悔恨、優しさ……。童話作家に導かれ、彼らの閉ざされた思いが「言葉」となって溢れ出た時、奇跡のような詩が生まれた。美しい煉瓦建築の奈良少年刑務所の中で、受刑者が魔法にかかったように変わって行く。彼らは、一度も耕されたことのない荒地だった――「刑務所の教室」で受刑者に寄り添い続ける作家が選んだ、感動の57編。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この、題になっているたった一行の詩。
読み取り方は人それぞれ。でも、これを書いた少年のこと(環境や現在置かれている立場、生い立ち)を知ったら。
この1行を書けるのは、この少年しかいない、と思う。
いったい、青い空に浮かぶ雲を見てどれだけの人がその色の意味を考えるだろう。
罪を犯してこんなところにいる少年たち。でも果たしてそれが罪であることを彼らは知らずに育ったんじゃないか。何が良くて何が悪いのか。
どうして、いつもおなかがすいているのか。おかあさん、って殴るひとじゃないのか。
決して彼らを弁護するためにこの詩集が出たわけではないし、被害者がこれを読んだらどう思うだろうか、と考えずにはいられない。
Posted by ブクログ
詩はあまり得意な方ではなかったです。
でもこの本に書いてある言葉には信じられないくらいのバックグラウンドがあると思うと、その余白にとてつもない重厚さを感じます。受刑者たちの気持ちにのまれ初めて本を読んでいて泣いてしまいました。
Posted by ブクログ
自分の将来の夢を明確にしてくれた本。
号泣。自分と重なる所もあって共感したり、自分でも気づいたなかった自分の気持ちが少しわかった気がする。
本来救われる立場の人間が犯罪者になるこの世の中に嫌悪感。誰もが幸せな世界になればいいのに
Posted by ブクログ
彼らがこの世に生を受けた瞬間は真っ白で真っ直ぐな赤子。真っ直ぐさを歪めてしまうのは社会や家庭だ。少年たちは少しの場づくりや、他人からの肯定によりその真っ直ぐさを取り戻していく。そして、これ以上の被害者を出さないために、少年自身のほかに彼らを取り巻く社会や家庭側も変わる必要がある。
涵養プログラムを通して、真っ直ぐさを取り戻し、幼児のような純粋な詩を書く少年たち。バックグラウンドを思うと、胸が苦しくもなり、可能性や伸びしろが眩しくもある。
Posted by ブクログ
奈良少年刑務所は、一度見に行ったことがある。
それはそれは素晴らしい門構えで、
刑務所と言われなければ歴史的建造物にしか
見えない美しさ。
その刑務所の中で過ごす700名あまりの
青少年たち。
罪を起こしたことは、被害者の方たちを思うと
決して許されることではない。
しかし、そんな加害者たちの育った家庭環境や社会は複雑で、
罪を犯した彼らだけのせいではないことを改めて
考えなければならない。
だって、やっていいことといけないことの分別は
分かるはずだから。
分からなかった理由は、必ずあるはずだ。
そこをちゃんと考えて大人や仲間が寄り添ってあげることが彼らには必要なんだ。
社会性涵養プログラムから生まれた彼らの詩は、
柔らかく、優しい。
寂しさも込められたものもある。
若い青年たちの言葉や行動で表現しきれなかった感情を、この本に載っている詩で少しでも感じ取ることができたような気がした。
Posted by ブクログ
同じテーマで違う切り口の本があるので、続けて読むと感動が薄れるところはあるものの、やはり心の深い所を揺さぶられる本だった。解説のない詩は背景を色々想像してしまう。
自分の気持ちを言葉に変えるという作業が、詩という媒体を使ってこんなにも効果があるというのに(効果を出すためにはここの教官のように背景を知り待つということが不可欠で、チームメイトの実直な感想も大きいとはいえ)、今の国語教育はあまり文を書かせない。小学生のころ灰谷健次郎を読んでいたから、もっと詩が心の更正に利用されているかと思ったけど、実際の教育現場ではそんなことなかったです。読書や作文は効果を計りにくいからかな~。
重大な犯罪者が収監されている刑務所なので、強盗、殺人、強姦、レイプなどの単語は頻出。気になるなら小学校NG。
Posted by ブクログ
☆くも 空が青いから白を選んだのです
☆言い訳にするな あの日 あの一歩を踏み出さなかったことを いまをがんばらない言い訳にするな オレ これからは いまを生きていく自分でありたい
☆言葉 言葉は 人と人をつなぐ ひと言だけで 明るくなり ひと言だけで 暗くなる 言葉は魔法 正しく使えば たがいに楽しいし 気持ちがいいけど 間違えば 自分も相手も傷ついて 悲しくなる 言葉はむずかしい けれど 毎日使うもの 大切に使って 言葉ともっと なかよくなりたい
☆サンタさん ぼくは 余った子どもなんだ どこかに さみしいママがいたら ぼくがプレゼントになるから 連れて行ってよ
Posted by ブクログ
自分の想像以上に、その人の外見や肩書きなど目につきやすいものだけで、その人がどのような人なのか決めつけてしまっていることが多いのかもしれないと感じました。
関わらなければわからないことがあるということを常に忘れず、目の前に人と真摯に向き合っていきたいと思いました。
Posted by ブクログ
このような感性と、表現と。生半可にはたどり着けない境地だけれども、せめて、想像してみようとする姿勢はもっていたい。決して安易に理解できた気になるものではないかもしれないけれども。
Posted by ブクログ
奈良少年刑務所の受刑者が書いた詩集。どの詩を読んでも涙が出る。短い言葉の裏に読み取れる、その子の生い立ちや思い出。特に母への想い。
詩のすぐ後に著者の解説があり、それを読むと更に詩の深みが増して涙。
手元に置きたい一冊。
Posted by ブクログ
たまたま受刑者の詩に触れた。荒削りな作品から考えさせられる作品もあり、詩が言葉の使い方、人間形成の一助になると感じた。国語の授業で作品を作る機会があったらよかったと今更思えた。
Posted by ブクログ
奈良少年刑務所での社会性涵養プログラムの中の童話と詩の授業で書かれたもの。
詩はよくわからないが、このプログラムの取り組みは素晴らしいと思った。
Posted by ブクログ
受刑者の詩というものに初めて触れた。飾られない言葉たちが整然と並んでいた。なかでも表題の詩は、たった一行に込められた想いも含めて響いた。性質の差こそあれど、根っからの悪人など居ない。
Posted by ブクログ
飾らない言葉がたくさんあった
後半はお母さんについて考える詩が集められていて、
母親との関係がその人をかたちづくるにあたって与える影響の大きさを改めて感じた
世の中にはどうしようもなく悪い人もいるのだろうけど、この本で言われているように周囲の環境から結果的に犯罪を犯してしまった人もいて、
刑務所にいる人、いた人ではなくその人自身と関わっていくことの大切さと難しさについて考えた
Posted by ブクログ
生まれ落ちた場所によって過酷な運命を背負う魂もある。
私は、この建物に恋をした。
どんなドラマがここで、展開されたのかは知らない。
ホテルとして改装されるけれど、少年達の想い、覚えておきたい。
「もりのあさがお」っていう刑務官を描いた漫画も良かったな。
Posted by ブクログ
とにかく考えさせられる本だった。
受刑者の少年たちが書いた詩ということだったが、他の方の評判にもあるように、とても犯罪を犯した人の書いた言葉とは思えない、なんとも素敵な言葉や感情が並んでいた。
特に「母」を想う詩は思わず涙しそうで、電車の中で読むのをやめてしまったほど。。
でも、
なんとなく、少年犯罪というのを美化しているように見えてしまう。。
複雑な家庭環境で育ったがゆえの犯罪、、というのも理解はできるものの、やはり犯罪には必ず被害者が存在して、その被害者のことを考えると、、どうなんだろう。。
加害者たちが公正していく姿を見るのは、関わっている人たちにとってはやりがいもありそうだし、
すごい社会貢献性の高いことだけども、一方、被害者視点で考えると傷ついた心や体を元通りにするってかなり大変なことなんじゃないかな。
この詩を読んで、見て、果たして被害者や被害者の家族たちは同じように心を打たれるのか。。
再犯させない社会を作ることも大事だけど、まずは何より子供たちが非行や犯罪に走らないような環境づくりや家庭のサポートをすることが何より大事だと思う。
個人としては心を動かされたし、とても考えさせられたけども、どうしても被害者のことを考えると☆5つはつけられなかった。
★なんとなく心に残ったメモ↓
どんなことでも「知ってるでしょ?」と問いかけてはいけない。「知ってるかな?」と問いかけるべき。
Posted by ブクログ
誰も耳を傾けないところに、感情の発露はない
これらの詩作品の作者はすべて、我々が絶対に関わり合いになりたくないと願うような少年たちである
だから、この情動涵養プログラムを引き受けた作者の勇気には脱帽した
また、強い熱意でこの情動教育を推し進めた職員の皆さんにも
犯罪者である少年たちにこんな美しい心があったなんて…などと軽々しく言うつもりはない
ただ一つ確かなことは
「誰も耳を傾けないところに、感情の発露はない」
彼らに感情が「無い」わけではない、彼らの生育歴において誰もそれを聞こうとしなかっただけだ
何度も繰り返されるこのメッセージと、私が逆立ちしても書けない素晴らしい作品の数々に
知らず涙していた
これがどこから来る感情なのかわからない
再度、おそらく何度でも裏切られ、失望し、時には危険を感じながら、人間の可能性を諦めず本プログラムを推進した方々に賛辞を送りたい
Posted by ブクログ
まず、純粋な「詩」として心を鷲掴みにされました。
こんな無防備な、純粋な、ストレートな言葉たち。
ほとんどの受刑者がかなり複雑で苦しく、厳しい背景を持つようですが、幼い子供が書いたようなものもあれば、中には文学や哲学に造詣が深いのでは、と思わせる詩もありました。
どのようなスタイルにしても作品として素晴らしいものばかりでした。
ほとんど初めから最後までボロボロと涙を流しながら読みました。
プログラムでは誰も仲間を否定せず、辛抱強く発表者の言葉が出るまで待ち、ひとつでも多くその子の、その作品の良いところをみつけようとし、褒めたたえ、励ましあい、認められることで自らも相手を見つめようとする素晴らしい循環。
また、子らの母への思いには、悲痛なものを感じました。
この「社会性涵養プログラム」に参加した受刑者たちは、薬物依存者や強盗、殺人、レイプなどの重罪で刑を受けている人もいるとのこと。
そこに被害者、被害者の家族が居ることを思えば安易な言葉を記せないけれど、刑務所で生まれて初めてこころの扉が開いた日から、ほんとうの意味での反省と償いの日々が始まること、生涯償うということ、刑務所の門を出た後に、生涯、薬物や悪い仲間の誘惑や孤独や世間の厳しさに耐え、ここでの仲間や先生との出会いを忘れず、しっかりと更生の道を歩んでくれたらと願わずにはいられません。
Posted by ブクログ
少年刑務所の受刑者が更生プログラムの中で書いた詩を集めた詩集。
少年刑務所に入るような子は育ってきた家庭環境だったり、学校、周りの大人の影響が深く関わっている。そこで心を閉ざした子が詩を自分で書く、書いた詩が他の人に受け入れられることで心を開いていく。
普通の人から見れば犯罪者としか見えないかもしれないが、この本を読むと、普通の子で、育ってきた環境が悪くてそんな形になってしまったんだと悲しみを感じ、
じぶんが育った環境に恵まれていたのだと感じた。
Posted by ブクログ
詩は美しく琴線にふれる
共感や自己肯定がなく罪のために刑務所に収監された子供たち
みんな逃げ場がなかった、純粋とありますが刑務所のなかは決められたルーチンです
社会の荒波にまた巻き込まれないとも限りません、確かにやり直す権利は必要です
薬物ではなく傷害で収監された人もいるはずです
死に至らしめた罪状の子供もいるはず。その方や家族の痛みは治りません。その痛みを忘れずに読む必要があります
Posted by ブクログ
奈良少年刑務所の少年受刑者達の作品集。
編者である童話作家の寮美千子さんが、「社会性涵養プログラム」の一環を依頼され、手探りながら、彼らに寄り添い、刑務所内で「物語の教室」を担当している。硬く閉ざされた心を耕し、水を与え続ける。それが、地下水となるまで。(これを涵養というそうだ。)その中で生まれた、まっすぐで、心を抉る様な、詩集。
母親についての詩には、涙を我慢できない。「クリスマス・プレゼント」は、特に印象的だった。
少年犯罪が、凶悪化していくニュースなどを見ると、少年法は現況に見合っているのだろうかと思っていた。ましてや、自分や家族が被害者であった時、未成年ということで、許せるだろうかという事は、誰しも考えているのではないでしょうか。
寮美千子さんも、講師を引き受けるまでの葛藤を、正直に綴っていた。しかし、受刑者には、育児放棄、学校での落ちこぼれ、福祉の手が届かなかった子らが多いという。その家庭を、学校システムの欠陥を、行政の過失を許している社会は、彼らへの加害者となっていると気がつく。
寮美千子さんの授業は、大きな成果をあげている。今も福祉の隙間にいる子供達の為、学校教育にこのプログラムを導入して欲しい。消えない罪を犯す前に。
Posted by ブクログ
少年たちの受刑者の更生プログラムの一環として、行われた詩。
詩を書くには側からは見えづらいその人の心情が込められる。
刑務所に入っている人というのは、野蛮で怖いイメージがどうしてもある。
だが、詩を通じて見えるのは耕されていなかった少年たちの純粋な心が垣間見れる。
特に印象に残った詩は、まほうの消しゴムという詩。
嫌なものを消せる消しゴムがあったらという詩で、罪に向き合ったからこそその罪の重さを知り、迷惑をかけたこと、自分自身を消せる消しゴムがあればなという思いになったのだろうと感じた。
そんな魔法の消しゴムは存在しないけれど、罪を背負って前を向いてまた生きてほしいと感じた。
非情な事件を起こした、けれどその心は家庭環境や社会によって苦しめられていたことが多い。
「加害者であると同時に、この社会の被害者なのかもしれない」
他の本で「どんなに悪者でも救えない悪者はいない。ただ救わないのだ。」といったような文を読んだ。
この更生プログラムは、これらの思いが土台となって、更生プログラムが組まれていると感じた。
Posted by ブクログ
もちろん法を破ったからこそ少年刑務所に身を置いているわけだけれど、ここには書かれていない事情や生育環境がそれぞれにあったのだろうと察せられて複雑な気持ちになる。詩というよりは思いの丈が拙くも書かれている。乾ききった心に本当に必要なものは丁寧に向き合い惜しみない愛情を注いでくれる誰かなんだと思う。
Posted by ブクログ
奈良に住んでいながら、奈良少年刑務所に関しては知識も関心もなかった生活を送っていた。赤煉瓦に囲まれた刑務所の中の少年たちに関わってこられた方の手記。想像通りの子どもたち。出所後の社会の視線はとても厳しいものだと予想するが、罪を認め、人生をやり直そうとする子どもたちの背中を押せる人でありたいと感じる一冊。
Posted by ブクログ
少年矯正施設のあり方がよくわかる、社会に向けた啓発書。加害者たる彼らは社会からの被害者かもしれない。腫物に触るような接し方がさらに心を閉じさせる。再犯が多い事実をもっと考えなければいけない。2021.12.11
Posted by ブクログ
ストレートな表現の詩が心に響いた。
少年刑務所に入っている子供たちは、冷たくて怖いイメージだったが、普通の子供たちと変わらないと感じた。
むしろ、色々な出来事がきっかけで、心が繊細だったり、敏感に感じている。考えすぎてしまったり、心の中にある複雑な想いをうまく言葉で伝えることができないために犯罪者という結果になったのかと考えた。
普通とはなんだろう?当たり前とはなんだろう?平凡な暮らしってなんだろう?
両親がいること、お金があること、好きな仕事をできていること、好きな人がいること、好きな食べ物を食べること、色々な自分で選択できる自由な生活ができることは当たり前ではない。どれほど幸せなことか考えるきっかけになった。
そして今手にしている幸せを、ずっと感じれるように今行動し、想いを伝え、大切にしていかないといけない。
人の気持ちは環境で変わっていくから、自分が大事にできる人と一緒にいようと感じた。
自分の知っていることが当たり前ではない。
知っているかな?と、まず聞いてみないと相手を傷つけてしまうことがあるということを学んだ。
母を題材に書かれた詩は心にグッときた。
どんな親でもその子供にとってはたった一人のお父さん、お母さん。子供目線でも読んで共感したが、この歳になると親目線になる瞬間があり感慨深かった。
子供たちを見守る、見捨てない社会が必要。