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Posted by ブクログ
2024/01/26リクエスト 5
定と吉の関係に究極を見た
肉体を伴う恋が、人をどれほど狂わせるか
逮捕後、定の持っていたイチモツはアルコール漬けにされる
それを公判中に見せられてどう思うか聞かれ
非常に懐かしく思っております
と答える
そう答えられる定を心のなかでは羨む人も多いだろうな。
大まかな筋は真実だろうけど、その周りの肉付けはこの著者ならでは。定の語っている感情の起伏が泣けるくらい素敵に感じた。こんな人と巡り会える人生は、素晴らしいものだろうな。
Posted by ブクログ
二人キリ
著者:村山由佳
発行;2024年1月30日
集英社
初出:「小説すばる」2022年10月号~2023年10月号
阿部定について書いた評伝小説。作家の波多野吉弥は7歳年下の映画監督Rと仕事をしている。今も映画を撮っているが、次は阿部定事件を扱った「定吉二人」に向けて吉弥が書いている。しかし、脚本ではなく小説を書いている。Rは完成を待ち望んでいる。小説でいい。脚本はRが書けば映画は撮れる。映画と小説の同時公開を狙う。
阿部定事件が起きたのは、吉弥が子供の頃、昭和11年。彼はその時から阿部定に興味を持ち、あらゆる切り抜きなどの資料を暗記するほど読んでいた。そして、若いころから関係者へのインタビューを行っていた。幼なじみ、定が働いていた店の関係者、定とできていた男たち・・・など。そして、吉弥は40代のときに初めて定を訪ねてインタビューを試みる。
話の中で明かされるが、吉弥は殺された石田吉蔵の息子だった。吉蔵の妾だった小春が母親。この千枚級(本は500頁弱)の大作は、吉弥が書いている評伝小説そのものになっている。小説の中には、14の証言(インタビューした人たちの話)が紹介されていて、それに加えて小説部分がある。14の証言は、阿部定が3回出て来ているので12人ということになるが、最後は死んだ吉蔵なので、これは架空ということになる。
評伝小説なので、あらかたの部分は評伝、すなわちノンフィクションに近い。いろいろなものが実名で出てくる。書き上がった小説は、本になる前に定に読んでもらった。締めくくりは、定の失踪。そして、読んだ定も本当に失踪する。しかし、小説を読んだから真似をしたのではなく、その前から消えようと思っていて、準備もしていたのだった。
長かったが面白かった。5つ星評価で★★★★☆。やや甘めだけれど、★★★☆☆よりは面白い本だった。