あらすじ
その女は愛する男を殺し、陰部を切り取り逃亡した――
脚本家の吉弥は、少年時代に昭和の猟奇殺人として知られる「阿部定事件」に遭遇。
以来、ゆえあって定の関係者を探し出し、証言を集め続けてきた。
定の幼なじみ、初めての男、遊郭に売った女衒、更生を促した学校長、被害者の妻、そして、事件から三十数年が経ち、小料理屋の女将となっていた阿部定自身……。
それぞれの証言が交錯する果てに、定の胸に宿る“真実”が溢れだす。
性愛の極致を、人間の業を、圧倒的な筆力で描き出す比類なき評伝小説。
作家デビュー三十周年記念大作!
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Posted by ブクログ
出版された時からずっと読みたいなと思っていた作品。
なんとなく知っていた阿部定事件。
読んでる途中何度も阿部定さんを知りたくてスマホで調べた。
定さんの生い立ちを知って、そもそも絶対父親がおかしい。どんな事をしたとしてもなぜ可愛い娘を売れるのか?その時代ではあったことなの?疑問だらけ。
定さんの話ではあまりに生々しい描写とあまりに自分勝手に心も軀も吉さんに溺れてく様子に、周りの事も考えるとちょっと苛立ちも感じたけれど、吉さんの話の部分も読んで、もうこれは仕方ないのかなと。
愛する人を殺めても他の女に触れられたくない。そんな風に思える人に出会えたことがないから定さんの気持ちや行動は到底理解できないけれど、もうこうする他なかったんだろうな。
吉さんを生涯愛し、思い続ける定さんを嫌いにはなれない。
Posted by ブクログ
凄まじいお話でした。
どこまでが史実で、どこからがフィクションなのかも分からず夢中になって読み進めました。
アングラエログロの「アベサダ」ではなくてみずみずしい一人の女性の輪郭が、吉弥の目線と彼女を取り巻く人々、そしてお定さん本人の視点を通して書き上げられていて、酷い女だとも思うのに彼女に魅入られていきます。
吉弥とお定さんの二人の心の通わせ方には胸を捕まれた思いでした。
そして吉弥自身の想いの行く末が見えたことによって想いが通じ合うという感情がよりリアルに感じられ、事件の日の彼女の想いも一段と際立つ。
村山由佳さんの文章の持つエネルギーが力強くて生き生きとしていて、まるで映画を見たように情景が浮かび、感情が揺さぶられました。
もう一度読み返したい。
Posted by ブクログ
ガシガシと読み進められる本を、と思い見つけた一冊でした。
阿部定モノでは以前にも読んだものがあるのでしたが大方は定さん本人のいじらしさや切なさの方に肩入れしていたのでこの本でもやはり〜。周りの人物たちを多くインタビュー形式で浮き上がらせてそれぞれに深く親しめたことも。何より吉さんの息子自身が語り手ということで思い通りに読み進められた。
途中でお腹いっぱいになるほど…
終章が澄んでいてよかった。
Posted by ブクログ
オーディブルで聴いた。
村山由佳さんの小説は2作品目。
「PRIZE―プライズ―」が面白かったのと、ほんタメであかりんが紹介してたので、気になってオーディブルで聴いた。
生々しかった。絶対に、家族の乗ってる車で流したら危険。笑
阿部定事件のこと、全く知らなくて、この本で知った。好きになった人と一緒になれない、悲しい話に思えた。特に興味のあるような内容ではなかったのに、ぼーっとしながら話の続きを聞きいってしまう没入感があった。
Posted by ブクログ
阿部定事件のことを何も知らず小説を読むにあたって簡単に調べた上で読みました。
とでもページ数の多い小説でしたが本当に読みやすく、登場人物の心情も丁寧にえがかれていたのでずっと物語に引き込まれていた感覚でした。
フィクションということでしたが、吉弥が、吉蔵さんの思いを創作したように村山由佳さんが阿部定の思いを創作したのかなと自分なりに解釈しました。
これまであまり読んでこなかったジャンルの物語でしたがとても良かったです。