あらすじ
世の中は騒々しく、人々が浮き足立つ時代になってきた。そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?
作家森博嗣が自身の日常を観察し、思考した極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を生き抜くための智恵を指南する。
〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。
他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむ生き方のヒントに満ちた書です。
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Posted by ブクログ
◎要約
森博嗣さんの日常を記したエッセイ
◎感想
森さんみたいに常に常識というものの前提や根本を疑い、色んな角度から思考を深めていくことはとても大事と感じた。
考えることを辞めるのは楽だけど、考えるといったある一定の負荷がないことには、自分の人生の幸せに近づかないし、日々の生きる面白さもなくなる。
誰か有名な人が言ってるからとかでなく、なんでそうなるのか?と色んな角度から考えて続けたいと思うエッセイでした。
◎メモ
▼16
都会は匂い、音、人、広告、光などとにかく情報がうるさい。
これはめちゃくちゃ共感できるし、だからこそ都会から地方移住した。
たまに人と会うためにいくことはあるけど、基本的に静かな環境で生活したいと改めて思った。
▼49
誰かと何かをするのであれば、上手くいかないことの方が多い。
相手に期待するとできなかった時に絶望するから、良い意味で期待しないほうがメンタル的に確かに楽。
自分1人で読書のように自分しかいない場合だったら、ある程度コントロールできるけど。
▼88
何かを成し遂げようと力みすぎると、できなかった時にすごいストレスがある。
これは何度も自分はやっているし、理想主義者や完璧主義者に多い。
良い意味で諦めた方が可能性も広がるし、気持ち的にも楽。
▼114
本当に楽しいことは、1人でいいし、誰かに共有する必要はない。
誰かに見せないと気が済まないのは、別の目的のためであり、自分の幸せのためではない。
▼144
安易に他人の成功体験を鵜呑みにしない。
前提条件やどんな人生を歩んできて何が得意かなど、違うことが多いから。
結局自分だったらどうしたら?と言った視点で何事も取り入れることが大事。
▼186
生きる喜びは自己満足。
他人に評価されたり競争することが生きる楽しさや幸せでない。
▼194
確かに今の日本は厳しく無くなっており支配されない環境で育ってきたので、出世して上に立って支配したい欲は消えている。
コスパが悪いと捉えるのは時代の流れ的に自然だ。
▼215
確かに今の日本は子供が昔と比べて必要のない社会になっている。
昔は子供を作って田んぼや農業の手伝いをする必要があったが、そのような目的で産む人は減っている。
個人で楽しめる娯楽やライフスタイルの多様性も産まれているから、政府の少子化対策は確かにずれている。
自分も子供は欲しいけど、1人か多くても2人で十分だな。
▼233
仕事もプライベートも何事も余裕を持って取り組む。
全てを全力で取り組むと、全力でないとできないような設計になってしまうし、視野が狭くなる。
余裕を持つことで対応できることもある。
◎参考になるページ
16.49.88.114.144.186.194.215.233
Posted by ブクログ
『木嶋先生の静かな世界』を読んで以来気になっている作家さん。でも、他の作品はまだ読んでいない。なぜか手が伸びない。今回はエッセーということで、気軽に読んでみた。
40回に分けて書かれている。内容は、大体、作者の趣味の話か、日頃思っていること、周りに人がいない森の中での暮らしについてだ。
何となく、研究体質で人の目を気にしない方なのだろうなと想像はしていたけれど、想像の斜め上を行っていた。かなり論理的で、考えが固まっており、人によっては手厳しいと感じることもあるだろう。でも、その考えの殆どが私には納得できたり、共感するものだった。
誰しもが作者のように、真に贅沢な生活はできない。財産や能力が違いすぎる。でも、考え方や社会の捉え方は参考になる。ただ、周りを冷めた目で見ているのではない。そこには筋が通った生きていく上での賢い考え方がしっかり組み込まれていた。
………………(以下 抜粋多)
✳︎無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状態といえるだろう。人間はなぜ生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものだから、辻褄が合っている。
第29回:暇だから「観察日記」みたいに書こう
・どうして選挙に行かない人が多いのか?
・どうして子供が減ってしまったのか?
・この際だから、やめた方が良いものを書いて おこう
は共感の嵐でした。政治家でもない人がこれだけわかるのに、どうして政治家はわからないのだろう?と謎です。
✳︎インターネットが普及し始めた頃、そこには本当に貴重な情報が集まった。人間の知性に接することができる。静かな場所だった。30年位前のことだ。
✳︎人の意見、人の経験は自分に当てはまるか?
判断や方法等について、他者の意見や経験などを参考にすることが多い。だが、ちょっと考えればわかることだが、条件が違いすぎる。なんとなく、成功した人の方法を採用すれば、自分も成功できるような気になるけれど、自分はそもそも成功する人かどうか、という点で疑問を持ったほうが良いだろう。
要は、安易に人の意見やデータに飛びつくなということ。逆に失敗した人の経験を聞いて、同じ失敗をしないように注意をすることは有益だ。
(教育について)
✳︎褒めても叱っても、人は育つ。
叱ると、真面目な人と隠れる人になり、褒めると、自己アピールする人とふてくされる人になる。さて、どちらが良いだろうか?褒める時と叱る時が当然あるだろうから、その時々で、褒めて、そして叱れば良い。それが自然だと思う。最初から「褒めて育てよう」なんて方針を決めるのは不自然だ。ただ、叱る事は、難しい。怒らずに叱る事は非常に難しい。
✳︎知らないことが馬鹿なのではない。知ろうとしないことが本当の馬鹿である。
✳︎日本人の特有の2つの価値観。若い事は良いことだ。働く事は良いことだ。
✳︎大人しいことや怒らないこと、ルールを守ること、つまり協調性が、社会人には求められる。感情的なものも、周囲と合わせる必要がある。不満や不審を抱いてもすぐに表には出さない、笑顔で応えて逆らわない、という従順さも「性格が良い」などと表現される。要するに、「いちいち考えない」ことが、社会では必要みたいだ。
✳︎今年も新しいエンジンを中古で手に入れ、それを分解し、オイルで手を真っ黒にして作業に没頭した。これは何のためだろう?
もちろん、自分の気持ちをわかりたいからだ。自分の気持ちを知る事は、自分との対話であり、また孤独を感じることでもある。これがとても面白くて楽しい。生きている喜びの大半がこのような時間にあると感じている。
第38回簡単な方法に縋って失敗する
は特に、参考になった。
✳︎どうすれば良いでしょうかと問い続ける人たちは、方法を探しているし、解決する方法があると信じているのだが、残念ながら、方法は存在しない。まず、それを認識することが問題解決の第一歩である。
その問題に至った履歴を丁寧にたどり、自分で考え、自分を修正し、自分の時間と力を費やして、何とか自分の未来を築き直すしかない。それは簡単ではないし、誰も知らない方法によって実現するだろう。問題が解決したら、そこで初めて、その人の方法が生まれるのである。
(略)したがって、既存の方法に安易に飛びつかないこと。ある人物1人の指摘を鵜呑みにしないこと。できるだけ多くの意見を受け入れよく考えること。悩む時間を惜しまないこと。回り道を少しずつ進むこと。1つの方法にこだわらず、その時々で最適なものを考えること。そうすることで自然に問題は薄れていく。ゆっくりと、自由や幸せに近づくことができるだろう。
頑固である事は、精神的に弱いと言える。若い頃から、このような頑なさが育ち始めている。だから、若いうちに、自分が頑固にならないように気をつけておこう。自分はこんな人間だ、と思い込まない。今の状況に満足して落ち着きたい気持ちはわかるけれど、いつも新しいものに目を向け、自分の考えを疑い、疑問点を探そう。だし、周囲に反発しなければならない、と焦らないこと。自分は、まだまだこれからだ、将来を見据えて、じっくりと考えていこう、と大きく構えていればよろしい。誰かに理解してもらう必要は無い。常に、自分を理解し、自分を認めることが1番大事だと思う。 大事な事は、自分が望むシチュエーションをいつもイメージすることだろう。
✳︎自分が好きなようにできない、と感じている人たちは、まるで自分の人生をコンテストに出品して、周囲から審査を受けるような具合に、日々を捉えているみたいだ。確かに勉強や仕事の1部には、そんな競う面がある。けれど、人生の大部分がそうではない。全部が競争だという錯覚を早く正したほうが良い。人生は戦いでも競争でもない、と思うだけで、生きやすくなるだろう。
Posted by ブクログ
森さんのエッセイ。近所の勉強できるお兄ちゃんは達観した隠居じいさんになっていました。エッセイ中の森さんの考え方にはとても惹かれる。でも森の中で自前の人が乗れるくらい大きな模型鉄道いじって暮らすことはできないな。人に干渉されるのは嫌だけど、都会暮らしがいい。
賛同するフレーズ
・仕事をすることが偉いという感覚には、仕事で出世することで、人を支配できる立場になれる、という羨望の期待が潜んでいる。(パワハラで糾弾される可能性を考えると、偉くなるのはリスクがメリットより大きいのが昨今)
・自分以外の人たちに、自分の感情を受け止めてもらおうとする欲求が強くなりすぎ、自分一人では楽しめない、怒れない、笑えない、というような症状を呈する
(他社依存の人がネットにはびこっている。うざい)
・大勢に合わせようという気がないだけ。みんなに合わせても、特に面白くない。それより自分がやりたいことをしたい。
・人の生き方に感化された、といった体験はない。立派だなとか、この人には敵わないと感じることは多々あるし、その場合は尊敬に値する人物と位置付ける。でも、だからといって、その人のライフスタイルは、まったく別の問題であって。僕には関係ない。
・他者に関わるなら、本を読めば良い。それが最も効率が高いし、優れた才能を理解する機会に巡り合える。