【感想・ネタバレ】一線の湖のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

前作で克服したはずの母親の死を、今だにひきずっている主人公。
本作でもそこから立ち直ることが大きな課題になっている。
読み始めて、「え、またそこからなの」と思うが、作者的には、まだ救われていなかったんだろうなと納得。そのど暗い落ち込みようから、亡き母をしのぶ人たちとの出会いの中で、立ち直っていく姿が感動的。また、ぽっとででいきなりその才能を認められた主人公と、努力を続けながらも父である先生に認められないヒロインとの間の確執が、ほどけていく様もとても説得力をもって描かれている。
彼が使っていた筆を、ヒロインが折ってしまうエピソードが特に良かった。

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2024年05月15日

Posted by ブクログ

「線は僕を描く」から2年後。
大学3年生になり、将来を決める時期になりました。
過去と向き合い未来に繋げ今を生きる、タイトルが効いている一冊でした。
途中で何度も涙ぐみながらも、あっという間に読んでしまった。もっと噛み締めて読めば良かった。
永くゆっくりと大切にしたい。

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2024年05月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんという……なんという本でしょう。
この一冊に、色々な事件と感情が詰まりすぎてて、読後はこの本がずしりと重く感じるほどでした。
読んでいる最中は荒々しく色々な景色が渦巻くのに、最後の最後は穏やかだけど壮大な湖面と遠方の山がモノクロで立ちのぼってくる。こんな体験なかなかない。

途中怪我したあたりで苦しくなって1度休憩を挟みましたが、そこまでは一気読み。怪我の後も一気読み。最後はグッと溢れそうになる感情を抑えつつ読みました。

ラスト3ページが特に…もう…湖山先生が…。

青山くん、いつまでも描き続けてほしいなぁ。いや、きっとそうするはず。時々山荘に行って、じっくり向き合って描き続けるはず。

じんわり感動しました。
このページ数とは思えない濃厚さでした。

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2024年05月04日

Posted by ブクログ

前作『線は、僕を描く』はストーリーは良く出来ているものの今一つ全体を通して深みに欠けている印象でした。 
そして今作。
主人公も登場人物も変わらず、物語の背景も同じ時間軸上での続編。

続編なのに本の持つ力が同じ作者が描いたものとは思えないくらいに圧倒的に深みが増してました。
特に水墨画を描くシーンは秀逸です。
迫力と静寂が文章と行間から伝わって来て、まるで作中にある墨絵と余白の関係かの様でした。

物語では主人公が成長していく様が描かれていますが、著者も本作を執筆しながら成長しているかの様でした。
著者の次回作が楽しみです。

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2024年05月02日

Posted by ブクログ

線は、僕を描くの続編。
前作で主人公が過去に向き合い、今作で乗り越えて行ったように思う。
前作以上に優しい世界だし、前作以上に表現が豊か。
前作とともにおすすめです。

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2024年05月01日

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『線は、僕を描く』の続編。『線は、僕を描く』を読んでから1年以上間が空いていましたが、すんなりと水墨画のお話に引き込まれました。
今回も過去の辛い出来事と向き合い、自分の進む道(宝物)を見つけると言う温かいお話でした。子ども達と水墨画を完成させたところが1番響きました。
水墨画の揮毫会、実際に見てみたいな…

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2024年04月30日

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『線は、僕を描く』の続篇。
前作同様、とても美しい小説でした。
水墨画を描いている場面が秀逸で、文章を読んでいるだけで脳内に絵が浮かんできます。水墨画なんて、きちんと見たことがあるのかないのか分からない私なので、脳内に浮かんだ絵は正しいのか正しくないのかは、正直言って分かりません。でも、はっきりと線や濃淡が浮かび上がるのだからすごいなぁ、と思ってしまいます。
大学三年生になった青山。進路を決めるべき時です。
このまま絵師として進んでいくのか否か。
悩んで悩んで、またも自分の心の中の部屋に閉じこもってしまう青山。でも、それだけ両親を失った悲しみが深いものだということが伝わってきました。
作中、何度も何度も、ある意味くどい程、心の中に潜り込むのですが、それはそのまま大切な人を失った心の痛み、叫びの現れなのだろうと思います。
今作では生前の母を知る人達に会い、母の職場であった小学校で、母と同じように子ども達に教えるという経験をします。このことが、自分の知らなかった母の姿を知ることになると同時に、自信を失っていた水墨画に対しても新たな一歩を踏み出すきっかけにもなります。
そして、やはり何よりも師匠の湖山とのやり取りが本当に泣けてきます。湖山先生、青山君を見つけてくれてありがとう!と青山の母のような気持ちになってしまいます。
青山を取り巻く人達が皆とても優しくて、いくら時間はかかろうとも、確実に青山は深い悲しみを乗り越えて自分の道を進むことができる、と思わせてくれます。青山のこれからが楽しみ。続編きっとあるでしょう。期待してます。

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2024年04月22日

Posted by ブクログ

彼我の区別なく森羅万象の世界に没入できるものだけが辿り着ける境地というのがあるのだろう。自分を見出し、分け与え、見守り続けることで、深い深い孤独と透明なガラスの箱の中から救い出してくれた湖山先生から受け継いだものを、霜介はこれから多くの人たちに、そして子どもたちに受け渡していくのだろう。母がそうであったように。
これで完結なのだろうが、「彼らは私が残す余白、私の可能性そのものです」そう湖山先生に言わしめた4人のその後をまだまだ見てみたい。

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2024年04月20日

Posted by ブクログ

/_/ 感想 _/_/_/_/_/_/ 
 
これは、、もう、、すばらしかったです!!
最初の展開から、最後まで、ほんと、よかったです。

この作品からは、空間をとても感じさせられます。読み進めていると、目の前の空間に、大切なものを、感じられるような気になります。

登場人物も、彼らの発する言葉も、ほんと、とても好きです。

西濱さんの言葉、「ぶち当たったものが形を決めるんだよ」というのが、とても響きました。この言葉は、すごいよかったです。

最近、「できるか、できないかじゃない」、「やるか、やらないかでしかない」という言葉を投げかけられ、頑張るしかないと、無能な自分を奮い立たせる日々が続いていますが、そんな自分の背中を押してくれる作品でもありました。

お母さんの言葉「誰かにダメって言われても、自分が素敵だと思ったものを信じなさい。そこにあなたの宝物が見つかるから。あなたにしか見えない宝物がこの世界にはたくさんあるから」
こういう言葉を目にすると、それだけで、涙がでてきそうになります。

今作は、ジワリと涙が溢れるシーンがとても多く、多くの感動と、そして、勇気をもらいました。


/_/ あらすじ _/_/_/_/_/

前作から数年、書のイベントからスタートします。
そこでいきなり失敗をしてしまいます。

大きく沈んだところから、前へ歩みだしていきます。そして、再度、大きなイベントを迎えます。


/_/ 主な登場人物 _/_/_/ 

本の冒頭に書いてあるので割愛します。
今作では、お母さんの働いていた小学校がでてきますが、その子供たちや先生が初登場となります。

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2024年04月12日

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ネタバレ

非のつけどろがない、文句なしの作品です。とても感動しました。

本当に水墨画の繊細さが、綺麗に作品に落とし込まれている
どんな作品なのか、どんな風にかいているのか情景がとても鮮明に想像できる
いい墨の匂いとはどんな匂いなのだろう、透き通るような淡い匂い、竹のような匂いかな、想像するだけでも心が洗われるような気分でした。

青山くんは両親というかけがえのない人を失ったのかもしれないです。しかしそれでも彼は生きて水墨画に出逢い、水墨画を通して、かけがえのない経験を得ました。失う悲しみと、得る喜びを知った青山くんはきっと必ず人として、水墨画家として、大きく飛躍することでしょう。私は青山くんや千瑛さんやその他のメンバー達が、思い思いの道をしっかり歩んでいる事を励みにこれからも生きていける。生きる上でとても力強く、けど、どこか繊細な力をこの作品は与えてくれました。

とてもいい作品でした。

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2024年04月06日

ネタバレ 購入済み

まだ半分

第二章読了47%ですが、もう何回も涙腺崩壊。
その後の登場人物か描かれて、前作から相当に
腕を上げたと感じる物語。

僕の線のもうひとつの意味
水墨画の献花、友達の言葉
西澤さんの言葉、もう大泣き。

映画から入ったクチですが、映画で続編化は
あまりにあらすじが違うので難しいそう。

成長した清原さんや、流星くんも観てみたいけど
さぁ、第三章拝読します。

まだ半分なのにこんなにいい話し描いちゃって
大丈夫なのか心配と期待。。。

#泣ける #切ない #深い

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2024年02月24日

Posted by ブクログ

すごい作品を目にした。文字で書かれているのに、作品が描かれていく。最初に出てくる湖山先生の指墨から、最後に描かれる作品まで、美しい世界が広がる。

物語としては、終始不穏な雰囲気があって、まさにスランプ真っ只中だ。読みながら不安が募って、ページがとまらなくなる。
一方で、生命力のかたまりのような子どもたちの姿が眩しい。エネルギーに満ちあふれていて、失敗もなんのその。彼らのような世界の捉え方は、私たちにはできないなと思った。

前作は「線」が大きなテーマだったが、今回は「白」がテーマだったように思う。白黒の世界、余白、白い老人……。淡い黒で「白」を描く水墨画にとって、「白」の意味は大きくて深いものだと感じた。

この作品を読むと、水墨画の作品をきちんと見たくなる。あわよくば揮毫会に行きたい。そしてそこに広がる世界に触れてみたいと思う。
シリーズ化はされないのかなぁ。いつまでも浸っていたい作品だった。

追記:1作目の映画を観ました!湖栖さんは出てこなかったけど、原作を大事にしてまとめられているし、水墨画を実際に見られるのでおすすめです。最初の湖山先生の水墨画に涙が出ました。素晴らしかったです。

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2024年04月30日

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水墨画家として歩み始めた霜介だが、大学3年になり進路で悩んでいた。揮毫会でも失敗し焦りが募る中、亡き母が勤めていた小学校で水墨画を教える仕事が舞いこむ。『線は、僕を描く』に続く物語。
前作で両親の死を乗りこえたかに見えた霜介だが、今度は自分の進むべき道について葛藤することになる。その中で、無意識に目をそらしてきた過去とも向き合うことに。人はいつかは必ず死ぬけれど、世代を超えて受け継がれるものは確かにある。老境の湖山先生、若い霜介や千瑛たち、まだ人生を始めたばかりの子どもたち。その対比が水墨画に描かれる自然の営みと重なって思えた。

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2024年05月19日

Posted by ブクログ

何度も涙しながら読む。
水墨画の素晴らしいイメージがあふれていました。揮毫を見てみたいと感じた。
そして子供っていいな。

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2024年05月13日

Posted by ブクログ

「線は、僕を描く」の続編を読みました。
どの様な続編かなと手を取りまして、読み始めた序盤の展開からマジですかと言う思いでかなり驚きました。
ラストの終わり方も凄く良くて、感動しました。

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2024年05月13日

Posted by ブクログ

結末に向かって丁寧に過程が描写されていたことで、最後の場面が目の前に絵や風景があるような文章力だけでなく歴史を感じる、特に印象的な場面にになっていて面白かった。

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2024年05月11日

Posted by ブクログ


待ちに待った『線は、僕を描く』の続篇

前作で水墨画は「線」の芸術と知り、その奥深さにただただ共鳴しました。

あれから、2年が経ち、更なる岐路に立つ
大学3年、卒業後、水墨の世界で生きるのか、それとも別の生き方を見つけるのか

時間だけが過ぎ、心は焦るばかり、何がしたいのかも分からず、描き続ける日々…

師匠からは、筆をおきなさいと言われ、それも素直に受け入れることができず、悶々としていた。
そんな折、兄弟子に代わり、急遽、小学一年生を相手に水墨画を教えることになる。

子供たちとの出会いを通じて、向き合う自分の過去と未来、そして、師匠から託された「あるもの」…

文章を読み進め、想像する楽しさ、難しさ、墨一色で、さまざまな濃淡や掠れ、裂け、止め、撥ねなどを駆使して描き出す画面、是非、答え合わせがしたい作品でした(笑)

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2024年05月06日

Posted by ブクログ

「線は、僕を描く」の続編。人間関係や主人公の心持ちなど理解していないと楽しめないので、必ず線は~をの次に読んでください。
主人公青山霜介は描けなくなっている。篠田湖山率いる湖山会で行われた揮毫会でも先頭で描くことを指名されたのに大失敗。千瑛がテレビの取材など受けて活躍しているせいもあり、その失敗も同じ大学の授業をとっている同級生などに噂されるくらい目立っていた。そんなとき死んだ母が教師をしていた小学校で出張授業を受けていた西濱が倒れ、霜介に代役が回ってくる。母を知らない一年生たちに水墨画を教える内に少しずつ心の回復の糸口が見え始めていく。
一巻で立ち直ったかに見えた霜介ですが、いやいや、彼の心の傷は深すぎました。芸術家が成長とともに立ち向かうであろう壁と心の傷が相まって今回もなんとも低空飛行な主人公です。しかし、変わらずこの物語は優しく、そして描かれる一本の線を私のような素人にも理解できるように文章化してあるのが本当に本当にすごい!もう少しゆっくり読みたかったのですが次が詰まっていたのでスピードあげて読んだのがもったいなかったです。
基本ルビなしですが、小学生でも大丈夫な内容です。基本は中学以上向け。

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2024年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前作で立ち上がった主人公が、自分の道を歩み始めるまでのストーリー。

向き合えずに避けていた過去に初めて向き合い、自分の為すべきことは何かという葛藤を経て、成長していく様子が爽やかで清々しいです。

主人公だけじゃなく、周りの登場人物もそれぞれの課題と向き合いながら、そして互いに影響し合い、ときに支え合いながら成長していく様が描かれています。

物語の冒頭とラストの舞台が揮毫会ということもあり、その対比が効いていて、主人公たちの成長や意識の変容がよくわかります。

ようやく自らの道を見つけて歩み始めた霜介。
本作では、前作以上に色々な経験をし、触れ合う人たちも広がり、繊細な部分も多分にありながらも少しずつたくましくなっていっているなぁと思います。

今後の彼の人生に幸多からんことを(^^)

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2024年04月30日

Posted by ブクログ

水墨画の続編。
今回もタイトルがいい。

何かに身をとして青春をかけてひとかどの人間になるという成功譚ではなく、挫折してもそこから過去を咀嚼して糧として自分の道を進んでく。
前回ほど水墨画メインではないけど、白黒の濃淡だけの絵がカラフルに見えるイメージはなんとなくわかる。

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2024年04月20日

Posted by ブクログ

線は僕を描くの続編。
続編ということもあってか前作の鮮烈さと比べると若干物足りないような?と思いながら読み進めていましたが、後半とてもよかったです。
全体を通して心理描写や情景描写の美しさは健在で心が洗われました。世代や時を越えた人と人との繋がりが優しく丁寧に描かれているところにも砥上さんらしさを感じました。

暗闇のなかで苦悩する青山君の姿は、
いつの間にか心の余白を失い、道を見失い、身動きがとれなくなってしまいがちな現代の学生/大人を投影しているようで
それを見守る湖山先生の言葉はとても響きましたし、終盤光を見つけて歩き始める青山くんからも前向きな力をもらいました。

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2024年04月15日

Posted by ブクログ

文章で描く絵が見える。
水墨画だけでなく、さまざまな言葉に励まされる作品。
心に残った言葉たち↓

『誰かにダメって言われても、自分が素敵だと思ったものを信じなさい。そこにあなたの宝物が見つかるから。あなたにしか見えない宝物がこの世界にはたくさんあるから』
『想いを伝えられるとき、伝えなければ、その機会は永遠に失われてしまう。失われてしまった後、どんなに呼びかけてもそれは二度と帰ってこない』
『整ったものだけが美しいわけじゃない。心を重ねられるものは別に、完成されものじゃなくてもいい』

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2024年04月13日

Posted by ブクログ

僕は、線を描くの続編。ある一線まで来て悩むところから、それを克服するストーリー。ストーリー自身は難しくないけど、いろんな描写が難しくする。挿絵が欲しい。

前作の映画も観たので、本作は俳優が見えてしまった点で読み辛さもあった。何度も姿を想像したけど前作ではヒットした横浜流星も本作の主人公では無いなぁ。湖山先生も三浦友和ではないな。それでも江口洋介は西濱さんがしっくりくるあたりは流石!

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2024年04月10日

Posted by ブクログ

前作も、面白く読んだが、
水墨画を描く人にしか表現できないのだろうなと思う。
ただ、将来の職業を死んだ母と同じ小学校の先生とするのは安直過ぎる。三作目はないんだろうと思う。

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2024年04月03日

Posted by ブクログ

「線は僕を描く」のその後なのですが、例によってすでにあまり前作を覚えていないのでありました。
不器用な青年が水墨画で自身を見出す小説でしたが、本作は周りが皆岐路に立って、それぞれが迷いの中にありました。読んでいて結構悲しくなるのですが、それはどんなに隆盛を誇ったものも、いずれは衰えそれを受け継ぐものがいなければ消えて行ってしまうという現実の厳しさだと思います。

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2024年05月16日

Posted by ブクログ

 「線は、僕を描く」の続編になります。

 前作から2年の年月を経て、主人公の青山霜介は大学3年生になっており変わらず水墨画を描いていはいたが、大学卒業後の進路を見いだせないでいた。湖山の孫の千瑛は、メディアに出演するなど活躍の場を広げていた。ある日、小学校の水墨画教室を任せられることになった霜介、その小学校は母が亡くなる前に勤務していた小学校だった…。

 「誰かにダメって言われても、自分が素敵だと思ったものを信じなさい。そこにあなたの宝物が見つかるから。あなたにしか見えない宝物がこの世界にはたくさんあるから」

 やっぱり2作品読んでも、水墨画の世界はつかめなかった(汗)。そして、そうなるんだろうなぁ~と薄々感じていた通りのストーリー展開になってました。上記の文章は、霜介の亡き母が霜介によく言い聞かせていた言葉ですが、いいなぁ~って思ったのでここにレビューとして残しておきたいと思いました。霜介自身が素敵だと思うことを見つけ信じられるようになり、宝物を見つけたこと、よかったと思いました。

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2024年05月13日

Posted by ブクログ


水墨画の師匠、そして弟子たちの
絵と共に歩む生き様を描いた物語。

道を極めようと悩み、もがき、時には迷い、
試行錯誤しながら一心に努力する姿は眩しくて
切なくなるほど。

水墨画のイメージとしては、白と黒、
黒色の濃淡、静けさでしたが、力のある人が
描くとまるで生きているかの様にいきいきと動き、鮮やかな色彩までが表現される様子は
とても美しかった。

余白があることで白と黒の両方が活きるのは
なんとなく想像がつくのですが、描かないことで
描くべきことがより雄弁に語られるという発想は、計算された足し算と引き算とは違っていて、
いかにも感性なんだなと思いました。

更には、一つの線が時間も空間も超えて
人と人の関係性や絆にまで話が繋がった点は
スケール大でした。

話中にたくさん出てくる筆を動かす描写や
所作の表現がとても細かくて独特なので、
動いている様子を想像するのに戸惑うほどでした。

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2024年05月12日

Posted by ブクログ

「僕は、線を描く」の続編。
前作が良かったので今作も期待しながら読んだ。
レビュアーさん方の評価が高い中もうしわけないが、私にはちょっと辛い話だった。
これは私の今の環境や心身状態によるので、もっとコンディションの良い時に読めば良かったかも知れない。

湖山賞公募展で翠山賞を受賞して二年、大学三年生になった青山霜介。
湖山門下でも中堅クラスになって知られる存在になったのかと思えば、やっていることは前作と変わらないような。むしろ斉藤が抜け、千瑛は水墨画の宣伝のためにメディア露出が多くなり、そのしわ寄せが西濱と霜介に一気に来ている。

そんな中始まった揮毫会。湖山先生の指示で第一筆は霜介からと決まるのだが、もう雰囲気からして上手く行かない予感しかない。
すると案の定…もう見ていられない、というか読むのが辛い。
更に湖山先生から『筆を置きなさい』という厳しい言葉。
その後、西濱のヘルプで小学生たちに水墨画を教える授業をすることになった霜介だが、そこで水帆ちゃんやゲンキくんを始めとする子供たちや教師たちとの素晴らしい出会いが待っていた。

何と霜介の亡くなった母親はその小学校で教師をしていたという。どおりで霜介も教え方が上手い(?)。本人はまったくそう思っていないようだが。
前作でも思ったが、霜介の周囲には悪い人は出てこない。揮毫会の一件で陰口をたたく者はいるが、そういうのは無視していい。
これで霜介も少し上向いてきた?とホッとしていたらまた…。
作家さんはどれほど霜介を辛い目に遭わせるの…と辛くなってきた。
前作の序盤のようにすっかり殻に閉じこもってしまった霜介を読むのは本当につらかった。

勿論これで終わりではなく、ここからどう物語が盛り上がっていくかというところが肝なのだが、現実世界に目を向ければ芸術の世界であれスポーツの世界であれどんな世界であれ、こうやって才能ある人が諦め去っていくことってたくさんあるのだろうなと哀しくもなった。

霜介の場合は湖山先生始め門下の面々や大学の友人たちや、ずっと見守ってきた叔父夫妻や、そして今回初めて触れた亡き母の思いなどで再び前を向くことが出来た。
湖山先生の『筆を置きなさい』の言葉やボロボロに使い古された筆を託された意味も明かされる。
やはり霜介は才能あふれる人だった。
一般的には斉藤くらい極めた人が一旦『筆を置』くものだと思っていたが、霜介はすでにそういう領域に来ていたということか。

クライマックスは湖山先生最後の揮毫会。
先生が主役なので当たり前だけど、結局全部持って行っちゃった。こういう一見好々爺としたおじいちゃんがいきなり格好良くなるのは堪らない。

最後の霜介の決断。腑に落ちたような落ちないような。でもまだ若いのだしいろんなことを経験するのは良いだろうと思う。私自身、経験値の少ない人生を送ってきたのでこういう色んな選択肢がある人が羨ましい。

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2024年05月05日

Posted by ブクログ

筆先から生み出される「線」の芸術、水墨画。それを題材にしたデビュー作「線は、僕を描く」は、あの漫画「BLUE GIANT」同様に、紙面上で描く筆の穂先の音が聞こえるかのような、痛烈な印象を私に残してくれました。
さらに映画化されたので、第2弾の本作も気になって読み始めました。

本作では主人公が進路に悩む姿と、水墨画を通しての生き方に焦点が当てられていました。

最近の小中高等教育で取り入れられている、外部講師による体験的授業が、本作の主人公にとっても、授業を受けた子どもたちにとっても、相乗効果があり、未来への道筋が見えてくる辺りは、著者もご経験があるのではと感じました。

私も学校現場に勤務していたことも経験もあり、子どもからもらうパワーの大きさ、素晴らしさは、我が子以上に感じました。

続編というのは、第1作が評判になる分、期待度が大きくなってしまうのは仕方がないと思います。

水墨画が描かれる場面は、前作同様迫力がありますが、映画化されたため、それを見てしまい、今回は前作ほどの驚きがなかったことは残念でした。私の場合は、小説が産む想像力を映画化が削いだ結果になったみたいです。

全体的にはよくまとまった仕上がりの作品なので、多くの方が高評価のようです。

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2024年05月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前作を読んでからかなり日が空いたので思い
出しながら読み進めるとあぁ~そうそう
霜介って真面目なんだけど不器用で
ここぞって時に微妙にうまくいかない・・・
でもそれ自体も必要な事だったんだと
作品を通して伝わってきました。
小学生たちとの交流によって描くこと自体の
原点や教えることによって学ぶ感じも
すごくよかった。今作はてっきり霜介の
成長した姿が描かれていると思っていたけど
苦悩や葛藤など読んでるこっちまでも
苦しくなりました・・・

水墨画のことなんてほとんどわからない
私ですがラストの湖山会の揮毫会は文字で
読んでいるのに描かれているものが見える
ような感じが伝わってきてすごくよかった。

湖山会の人達や霜介の進む道は示されたけど
ほんとにどうなるかすごく気になる・・・

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2024年04月26日

Posted by ブクログ

梅が咲いた揮毫会が感動的でした


あと前作と違って
西濱さんが出てくる度に
江口さんの顔が思い浮かんだ

名俳優なんだなあ

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2024年04月08日

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