あらすじ
「角栄は本当に有罪だったのか?」
今日にいたるまでくすぶり続ける
ロッキード事件の様々な疑問を解明すべく、
著者は事件の全貌を洗い直す。
辻褄の合わない検察側の主張、見過ごされた重大証言、
そして、闇に葬られた〈児玉ルート〉の真相――。
疑惑の背後に、戦後から現在まで続く日米関係の暗部が見えてくる!
特捜神話の真実を関係者の新証言と膨大な資料で剔抉する。
解説=奥山俊宏
※この電子書籍は2021年1月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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ロッキード事件の謎を追う!
田中角栄は「本当に」悪人だったのか?
〜史実と新たな視点から紐解く
昭和の最大疑獄事件〜
真山仁氏『ロッキード』
【はじめに】
真山氏は、日本の現代史に大きな影響を与えたロッキード事件に新たな光を当て、多くの疑問を掘り下げています。
田中角栄は
①ロッキード社から、本当に5億円を受け取ったのか?
②総理の権限を乱用し、運輸省に圧力をかけ、ロッキード社に便益をはかったのか?
この二つの核心的な疑問を、史実と新たな視点から検証しています。
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1.『5億円』をめぐる検察の主張
検察は、田中角栄が航空機「L-1011トライスター」導入に便宜を図るため、ロッキード社から5億円の賄賂を受け取ったと主張。
極秘会計文書「コーチャン・ファイル」や関係者の証言に基づき、裁判でもこの主張が認められ、角栄は受託収賄罪で有罪判決を受けました。
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2.揺るぎない「無罪」の主張
しかし、田中角栄は生涯にわたり金銭の受け取りを断固として否定。「私は潔白だ」と主張し続けました。
もし本当に金銭を受け取っていなかったとすれば、検察の主張には盲点があったことになります。
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3.政治家の矜持と五億円
真山氏の『ロッキード』は、田中角栄が外国企業から直接金銭を受け取るという行為が、彼の政治家としての矜持に反するものではないかと考察しています。
外国からの献金は、当時も違法です。
また、それ以上に、彼には国の主権を売る行為と見なされかねないというプライドがあったのでは?と、書籍には推察として記述されています。
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4.運輸省への「口利き」は圧力か、助言か?
もう一つの論点は、総理大臣の権力を背景に、角栄が運輸省に圧力をかけたかどうかです。
検察は、トライスター導入を強く促したことが「職務権限の乱用」にあたるとしました。
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5.国益を追求した政治家のビジョン
一方で、この「圧力」には別の見方も存在します。トライスターは当時、高い技術力を持つ機体でした。日本の航空産業の将来を考え、最先端技術の導入が国益に資すると判断した、という側面もあったかもしれません。
角栄が単なる口利きではなく、日本全体の発展というビジョンに基づいて行動した可能性も否定できません。
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6.思考の訓練としての歴史
ロッキード事件は、検察の捜査や報道が国民の認識をいかに形成してきたかを考える上で、貴重なケーススタディとなります。
多くの情報に触れてその根拠を確認し、過去の事件に触れてみることは、現代社会における批判的思考を鍛える良い訓練になるかもしれません。
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児玉ルートの21億円はアメリカに還流され
ニクソンの選挙費用に。
角栄はコーチャンたちの嘘証言と
それを信じた検察、世論に挙げられた
ロッキードに象徴されるアメリカの金権政治と
正義のゴリ押しが事件の本質か
端を発したのは沖縄返還とロッキードの購入を
交換した佐藤の判断なのか
Posted by ブクログ
昭和史を代表する事件、ロッキード事件についての検証本。田中角栄、中曽根康弘、児玉誉士夫、キッシンジャーなど、事件登場人物や関与が疑われる人物の掘り下げのほか、当時の調査や裁判の流れ、発言の検証などにも触れられている。この本を読むまでロッキード事件については概要しか知らず、どのように立件されたのか、誰が関与したと言われていたのか等基本的情報のアップデートを含めて大変参考になった。他の検証本も読んでみて理解をさらに深めたいと思った。
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戦後日本を象徴する総理の1人である田中角栄が外為取扱違反と5億円に登る収賄罪により有罪判決を受け、日本中に衝撃を与えたロッキード事件の真実に迫る良書。アメリカの虎の尾を踏んだことが真因とも噂される事件であるが、その裏には政界の裏のボスである児玉誉士夫や、佐藤栄作の影も潜んでいる可能性が高い。贈賄をしたロッキード社には刑事免責が適用されるという異例の事態であり、角栄1人を悪として囃し立てた世論も含めて、戦後の日本の雰囲気をよく表している事件だと言えるだろう。本書を読むことで、戦後の沖縄返還までの道のり、対等でない安保関係、日米繊維交渉からウォーターゲート事件まで、当時の社会の動きを知ることができる。
Posted by ブクログ
経済、金融小説を得意とする著者がロッキード事件の謎に挑む。
収賄で起訴され、最高裁での係争中に死去した田中角栄元首相は、俗説の通りキッシンジャーにはめられたのか。
資料と関係者を丹念に当たった著者は、ニクソン大統領再選のための政治資金還流を疑う。
その過程では、逃げおおせた大物政治家たちも。
田中元首相の容疑は薄弱で、世論、マスコミ、検察(のプライド)の合作。
げに恐ろしいのはこいつらか。
唯我独走の米国は何も変わらない。
Posted by ブクログ
在任期間が短いにも関わらず,良くも悪くも絶大な影響力を今だに発揮している政治家の関連した事件として,当時リアルタイムに体験していなくともその概要くらいは知っている位の大疑獄事件.
でも…なんだかよく分からない.田中角栄は,一体どんな犯罪を犯したのか?ネット上に散らばる情報を集めてもモヤモヤが増すばかり…
真山仁の手にかかると,極上のミステリさながらの緊迫感で真実に値する一つの仮説が鮮明に浮かび上がる!
いつもながらの徹底した取材と資料の読み込みで緻密に組み上げられたノンフィクションは,普段の小説をも上回る最高のエンタメ文学としても成立してる!
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ロッキード事件が毎日のようにニュースで流れていたのを思い出す。
角栄がロッキード社から賄賂を受け取ったというシンプルなものと思っていた。真山氏の取材によるとかなり複雑に色々なことが絡み合っていたようだ。
Posted by ブクログ
『ロッキード事件』
小学生のころの事件だっただけに、断片的な記憶しかない。
ロッキードの贈収賄事件により、田中角栄首相、フィクサー・児玉誉士夫が逮捕された…
が、真相は違ったんだと。
田中角栄にロッキードのトライスターに便宜を図ることのメリットもなかったし、もっといえば、全日空にとっても、安全面からみてもトライスターを選ぶことになっていたのだから…
当時の検察の捜査も⁇だが、角栄の弁護団も何をやっていたのか⁇
検察側の証拠に対して、徹底的に矛盾をついていけば問題はなかったはずなのに。
世論がそうはさせなかったのだろうか⁇
角栄が悪者にされてしまったような気がしてならない。
裏にはアメリカが。
ニクソン、キッシンジャーという『グレートアメリカ』という思想の持ち主たちが。
まるで今のトランプのようだ。
そして、佐藤栄作、中曽根康弘が裏で動いていたような気がする。
今となっては明らかにはできないが…
いずれにしても、アメリカ、日本のロッキード事件の真相が明らかになっては困る人たちによって、田中角栄はスケープゴートにされてしまったのだと…
Posted by ブクログ
昭和を代表する疑獄「ロッキード事件」
多くの容疑者が結審前に亡くなったため、騒いだ割には最後がどうなったかがよくわかっていない事件。
ロッキード事件と言えば、田中角栄の逮捕、有罪が印象に残るが本当に田中は有罪だったのか?が興味深く掘り下げられている。
読後の印象では私は田中は無罪だったと思う。
当時の検察の取り調べ方法、証拠の裏付け、同調圧力、世論の目などで「田中憎し、有罪にすべし」が大衆の大きな声だった。
くしくも兵庫県知事選挙でパワハラで失職した斎藤元知事が再選したが、この騒ぎも証拠もなく一方的な意見ばかり取り上げ、まるで事件を作ったかのような印象を持つ。
話を戻すと、田中角栄が「たった5億円」で民間航空会社の機種選定に口を出すか?田中は六法全書を持ち歩くほど、法律に詳しかったにもかかわらず、海外企業からの献金(賄賂)を受け取るか?
そんなに田中角栄は脇は甘くないと著者は確信し、私も同意する。
全日空が購入したロッキードのトライスターより、同時期に防衛庁で検討中の次期対潜哨戒機(PXL)の方が高額且つ、影響も大きいにもかかわらず、こちらは全く話題には上がらない。
ロッキード事件とはPXLのロッキード機(P-3C)の採用が目的だったのでは?との考察。
P-3Cはその後海上自衛隊で100機以上を導入し、現在も使用中。後継機としては国産のP-1が実戦配備されている。
また、ロッキードから児玉誉士夫を通じて流れた21億円の行先も不明なままだ。
この金についても真山は大胆な推察を展開する。
一体、ロッキード事件とは何だったのか?
田中角栄が倒れず、最高裁に出廷し、証言していれば無罪だった可能性が高いと思うと残念でならない。
昨今再評価されている田中角栄。関連図書を読んでみたい。
Posted by ブクログ
NHKスペシャルの「帝銀事件」を見て、帝銀事件の際の主任検事がロッキードのときの検事総長だったことを知った。そういえばこの事件についても、当時からずっと「アメリカの影」が囁かれていたのだった。
本書は経済小説の大家である著者がいつか挑んでみたいと考えていたテーマに、ノンフィクションというかたちで迫ったもの。著者は、この事件の奇妙さは、誰かがシナリオを書いたというものではない、とする(だから田中角栄は米国によって足元をすくわれた、という見方を強く否定する)。
著者は、事件の本筋はロッキードと軍用機(海上自衛隊のP3C)であり、児玉誉士夫とGHQ(G2)の福田太郎との結びつきこそが、米国が隠し通したかったことであり、全日空の民間機問題はそのルートを守るために差し出された供犠だった、と主張する。よって、田中角栄は関与はしていたが、「職務権限」という点ではその前の佐藤栄作が問題になり、また、利害関係者としては中曽根康弘の方がより重要になる。ウォーターゲート事件から始まった米国の追及の流れと、「金権政治」の不公平感に鬱屈していた日本社会の「世論」とが結びついたことでこの事件が生まれた、というコンテクストへの目配りも重要。
Posted by ブクログ
「田中角栄」
なんとなくは知っている
リアルタイムで知らない
何故そこまで
カリスマ性があったのか
急な転落があったのか
...冤罪⁉︎
そしてもっと深い疑惑...
ドラマじゃなくて現実に
あったことなんだよなぁ...
今の政治家サンは
お金の集め方だけ
学んだのかしら?
主人の本棚から拝借
Posted by ブクログ
自分が生まれた頃の事件であり、恥ずかしながら漠然としか知らない事件だった。
読み進めれば読み進めるほどに、この事件の不可解さばかりが際立つ。
このノンフィクションが全て事実であるならば、角栄はさぞ無念であっただろうな…。
「真犯人」は他にもいるのではないか?と思わずにはいられない。
しかし…。令和の時代になったって、政治家は変わらず、「記憶にない」、「知らない」を連呼するばかり。変わっていないですね。
Posted by ブクログ
昨今の製造業界、金融業界、エネルギー業界、芸能業界などでの不正やスキャンダルを見ていると色々な業界の根本的な構造はかなり昔から変わっていないのではと思われ、であれば昔の構造を勉強すればと思い読みました。思ったよりはるかに複雑で、今の世界や色々な業界も簡単に見えない領域含め深く構造を理解して行動しないといけないと学べる本でした。
Posted by ブクログ
闇深い…。
田中角栄逮捕の裏に、ニクソンやキッシンジャーの策略が見え隠れしてて、単なる贈賄で終わらない感じがした。
トライスター問題だけだと思ってたけど、哨戒機にも関与してたのは知りませんでした。
Posted by ブクログ
「ハゲタカ」の真山仁が当時の資料や関係者へのインタビューをもとにロッキード事件の真相を追ったルポ。中曽根元首相や児玉誉士夫など田中角栄以外にも怪しい人物が見え隠れするが、ロッキード社からニクソン大統領への献金隠蔽のために日本の関係者が利用されたというのが最も腑に落ちる。様々な疑惑が提示されるが、いずれにせよアメリカ政府の都合で、当時疑惑の多かった田中角栄がスケープゴートにされたのは間違いないだろう。
冒頭で元最高裁判事が述べた「フワフワとした事件」がロッキード事件の本質を突いている。
Posted by ブクログ
ロッキード事件は50年近く前の話でマスコミはじめ世の中が大騒ぎしていたので印象に残っている。
自分が社会に出たての頃のことで、田中角栄総理が全日空の機種選定で丸紅経由でロッキード社から5億円を得たとする収賄事件である。
これは小説家の真山仁が初めて書いたノンフィクション作品である。彼の経済小説を何冊か読んだことがあり、馴染みやすい今風の話題をテーマにする作家なので軽い気持ちで読み始めた。
作者は時間の経過で関係する存命者が少ないなか、アメリカにも足をのばし丹念に関連当事者から聞き取りまとめたものである。
田中角栄はもとよりその近親者や児玉誉志男・吉永祐亮・若狭得治など主要人物については生い立ちから性格や事件との関わりなど克明に描写されている。当時の膨大な新聞記事を一気に読んでいるような気分になる。記憶も風化していたが、改めて事実経過も確認できて事件の全貌がそれなりに理解できた。しかし長大なボリュームの割に意外で新鮮な事実は殆どなく、斬新な切り口や仮説や主張もあまりなかった。収集した情報や知った知識の並べたてが多く、本質を抉り出す迫力に欠けノンフィクション本来の緊迫感は感じられなかった。通説の底に隠れた真相を覗き見る興奮は味わえず、がっかりである。
それは、従来から彼の小説に感じていた物足りなさに通底する。極論だが、カタカナのテクニカル・タームを多用するビジネス小説から虚構を除くと内容の浅薄さが残り、時流の用語や世代の情報格差に乗じた書き物では自ずと限界があり読者に飽きられる。
初めてノンフィクションを描くことで、ビジネス小説の作家として次の展開への課題が如実に現れている。
結局この作品のロッキード事件疑惑の結論は、当時とあまり変わらず肝心の真相は藪の中であることを確認しただけであった。日米関係の背景とか政治家や関係者の蠢きには新しい事実も多少あったが、相変わらず全貌はもとより部分の事実関係も曖昧なところが多く釈然としない。
「この話は墓場まで持っていく」という言葉がある。
ロッキード事件で主な役割を果たした人たちは皆そうなのだろう。結果、この事件のように真相を明らかにできない歯痒さだけが残る。アメリカは秘密情報でも一定期間後オープンにする仕組みだが日本はまだそうはなっておらず「墓場」に収めたままだ。
歴史的にもアメリカのGHQやCIA・政治家や企業が関わると事案はより複雑で闇も深くなる。
戦後日本にはこのような類型の事件が数知れない。
裏でよく話題になる日本の政治家には悍ましさを感じる。岸信介・佐藤栄作・中曽根康弘・・・。
「お天道さんはすべてお見通し」という箴言もある。
Posted by ブクログ
日航機墜落事故もそうだが、子どもの頃リアルタイムで発生していた事柄にも、色々な見方があるのだと感じた。そもそも子どもの頃はニュースも観ていないし、事件・事故名を知っている程度だが…。
安倍さんの暗殺事件にも、色々な見方があるようだし。報道を見極める力が求められると思う。
Posted by ブクログ
最初らへんはすごく面白かったけど、途中200ページくらい中弛み感やばかった…笑
児玉誉士夫とか知らん人の話が延々と続いてほぼ内容頭に入ってこず…
田中角栄のことが知りたくて読んでるのだから、せめてもう少し短くまとめて欲しかった。
せっかく最初と最後は面白かったのに、長すぎてその印象しかない…でも面白かったことは間違いない、、
Posted by ブクログ
長大な作品だったが、結局のところ結末はあっさりしたものだし、はっきりしない部分も。中曽根康弘があやしいと、そういうことなのだと思うが、長すぎて前半でまとめられていた田中角栄まわりの状況を忘れてしまって確信を持てず。