【感想・ネタバレ】新論のレビュー

あらすじ

【幕末に「志士」たちを生み出した最重要思想書、その全貌を読む!】

―臣ここを以て慷慨悲憤し、自から已む能はず、敢えて国家のよろしく恃むべきところのものを陳ぶ―
「序論」「国体」「形勢」「虜情」「守禦」「長計」からなる全篇の本文読み下し。平易な現代語訳・懇切な語釈を掲載。
さらに参考資料として、正志斎がのちに開国政策を提言した『時務策』を併載!

文政八年(1825)、幕府は異国船打払令を出し、日本近海に接近する外国船全てに対して砲撃を加え、排除することを決定した。会沢正志斎が『新論』を完成させたのは、まさにその直後のことである。
一読するとわかるように、その内容は西洋諸国と直面をせまられ始めた日本全体の、今後の政策を提言するものである。だが、水戸藩主を通じて幕府を動かそうという正志斎の期待は実現されることもなく、また異国船打払令も徹底されずに、沿岸には外国船が自由に航行することが常態化した。
しかし本書は、正志斎の関係者から友人へ、その友人から別の友人へと筆写が重ねられ、日本全国へと広まっていくこととなる。それは匿名の著作ではあったけれども、人々を引きつける何かがあったのは確かであろう。天下太平と呼ばれた時代にあって、その裏にあった言いしれぬ不安というべきものを明らかにした、という理由もあろう。結果的にこの書は、全国の志ある多くの人々を目覚めさせることとなった……


*本書は訳し下ろしです。

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Posted by ブクログ

カップの半分の水を見て「半分もある!」「半分しかない!」と、意見が、その人の心理によって分かれる———きっと誰もが目にしたことがある有名な話だと思います。

会沢正志斎さんは、その例を先んじて語っていたので、歴史や世界への情報に長けるのはもちろんのこと、人にわかり易く伝える例え話がうまいなぁと思えました。

彼の場合は、江戸の町に集まるお米の話です。
米が取れすぎて余ってしまうから、売り捌いて、外貨を稼がなくては!と躍起になる思想への忠告という旨でした。
江戸の街だけを見れば、武士も米も余りあり、始末しなくてはならないと見えますが、実はそれは「江戸に集まっているから“多く見える”」だけなのだと言うことです。

シーパワー・海洋国家の日本は、海に囲まれるがゆえに守られて来ましたが、黒船のような存在が現れたことによって、逆に、四方八方どこからでも船の水路となり、あらゆるところを警戒しなくてはいけなくなったのです。

ならば、江戸に集まる武士や米を方々に散らせ、その土地に住まわせ、実らせ、働かせ、食わせれば———余るどころか、少し足りないぐらいになるはずだと、彼は説きました。

戦国を生き抜いた、戦うための精神、身体、経験は、長い平和によって忘れられ、無用な武士や俸禄が増えすぎたのなら、それらをしっかり意味のあるものに変えていきたい———持て余して享楽的に生きるしか退屈を凌げない哀れな武士と、そんな武士たちを罵る民草の不毛な苛立ちを治め、誰もが互いの幸せのために懸命に生きるよう、励ましてくれました。

厳しいことが続いて記されているように見えますが、終始、彼は日本と世界の未来の幸福を目指して、励ましてくれているように思えます。

現代語訳の部分だけを読んでいけば、それほど多いボリュームでもないので、是非とも、激動の時代に悩み、元気を無くしてしまった人への、勇気と応援のメッセージとして、この本を手に取っていただけましたら幸いです。

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2024年05月28日

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