あらすじ
著者は天然記念物並みに希少な全国に20人程度しかいない現役の刑務所管理栄養士。知られざる刑務所の給食事情を、笑いありホロリありのエピソードを交えて紹介する。クサくないメシづくりをめざして調理経験ゼロの受刑者たちと奮闘する日々を描く炊場ドタバタ実録。
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Posted by ブクログ
この本、小説だと思っていたがエッセイだったのか…とちょっとガッカリしつつ読んだら、面白かった!
私も栄養士の資格を持っているので、この著者のマインドは共感しかない。
語り口もユーモラスなのでとても読みやすく、オススメです。
ほとんど料理出来ない受刑者たちが、限られた時間での安全な大量調理をするために、やむを得ずレトルトや冷凍惣菜を使用している。
しかしそういったものは割高なので、提供量が少なくなる。
受刑者たちは、我々の想像よりはるかに食事を楽しみにしているので、美味しく少しでも量を増やして、腹持ちの良いものを。と著者が工夫して受刑者を指導し、手作りのものや新メニューを取り入れていく。
その姿勢が素晴らしいと思った。
前科のある人を色眼鏡で見てしまう気持ちは、正直私にもある。
人となりを知らなければ怖いなと思うし、その人が本当に更生しているのか疑ってしまう気持ちもある。
だけど、黒栁さんの
『被害者が加害者を恨んだり許せないと思ったりするのは当然。でも、この本を読んでいる大多数の人は第三者ではないだろうか』
という言葉にハッとした。
積極的にかかわらなくても、忌避する必要もない。
願わくば、出所後の人生に幸あらんことを。
と思った。
Posted by ブクログ
とても読みやすい内容でした。栄養士さんが受刑者に対し変に肩入れせず、かといって偏見も持たず、自分のみたその人だけを描いてる感じも好感が持てました。クサイ飯という印象がなんとなくありましたが、栄養士さんが限られた予算でできる限り美味しく唯一の楽しみを作ってあげようとしているのも良いです。作者さんの温かさが、受刑者の更正に少しでも役立ってたらいいなと思いながら読み終えました。
Posted by ブクログ
刑務所の栄養士という珍しい立場の方が書かれた本。クスッと笑ってしまうような面白いエピソードが多くて楽しめた。刑務所の外にいるのも、中にいるのも結局は人だからあまり遠すぎる世界ではないと感じた。
Posted by ブクログ
ずっと読んでみたかったこの本
どんな場所であっても食事は美味しいもので、楽しくなければ
そして栄養バランスがとれていればなおのこと良い
じゃないとただの栄養補給
刑務所という場所での食事のリアルを知ることができるこの本は、意味のあるものだと思います
会いたい思いもあるけれど、もう二度と会うことのないように
食育が提言されてだいぶたちますが、食から人生が変わることがあるかもしれない
食を通して、再犯を防ぐことができたなら
そんな作者の想いも垣間見ることが出来ます
とても良い本だった
Posted by ブクログ
刑務所の栄養士となった黒柳さんが栄養面を考えたり、受刑者の元へ届く時の温度や量の平等などに試行錯誤されたり…と知らなかったことがたくさんあった。
「炊場」での受刑者とのやりとりも楽しく描かれていて食べてみたいと思ったものもあった。
本の中にレシピのページもあり、「いかフライレモン風味」と「豚肉マヨネーズ炒め」作ってみたいと思う。
やっぱり「食」ってどんな場面でも大切なんだなぁ。
Posted by ブクログ
『刑務所の中』のおかげさまでムショ飯はとっても美味しそうという印象があって、本書のおかげさまでますます美味しそう。でもやっぱ冷めちゃうのかー。
Posted by ブクログ
作者の黒柳桂子さんが法務技官として刑務所の管理栄養士になり、それからの日々がコミカルに語られます。
最初は受刑者相手に調理の指導をするということでビビりながら接していましたが、だんだん打ち解けていく様子が微笑ましいです。
いかにもなお兄さん達が花焼売に感動したりコロッケを爆発させたり…。
黒柳さんの「この…バカ息子たちがーー!」という愛ある叫び声が聞こえてきそうなエピソードが満載です。
健康な食事でお腹を満たすこと、食事がどの様に作られるのかを知り作ってくれる人に感謝することは受刑者の内面を豊かにすると思いました。
犯罪って困窮した状況や想像力の欠如から起きると考えているので。
出所して生活する元受刑者の人たちにこの本が届けば良いなとおもいます。
努力、挑戦、そしてパッション
著者は努力家なので共感が持てる。公務員なのに、時々言葉使いがちょっと、と思うのはマトリが潜入捜査とかしてヤクザ言葉が板についてしまうのと同じような現象なのだろうか。しかし文章表現は上手いです。現場のことがよくわかります。本人の性格とか味が出ているので言葉使いもこれでよしとします。更生施設で10年も尽力して、人に頼られ、素晴らしいキャリアだと思う。そのリーダーシップを活かしてこれからも頑張ってください。
Posted by ブクログ
ラジオでたまたま著者がゲスト出演されてて知った。
刑務所って「あそび」が皆無の殺伐とした空間かと思ってたから、平和なほっこりエピソードが多数出てきて意外だった。
初犯の受刑者が集まる刑務署というのもあるし、さらに炊場に抜擢されるのは「エリート」だということもあるかもしれないが…
食べるの大好きなぽっちゃりさんが、食事の量を嘆きつつも適正体重にもどったり、甘いものに飢えて入所するとみんな「スイーツ男子」になり、あんこが大好きだとか…微笑ましいとすら思ってしまう。
3食全てをまかなうわけだから、栄養的にも責任重大だし、食事が少ない楽しみであり情緒の安定がかかってるという点でもプレッシャーがすごそう。それを限られた予算(1日3食500円)と時間で、安全に提供しなければならない…なんとクリエイティブでやりがいのある仕事だろうか。
あくまで軽やかに楽しんで仕事されてるの (ように文章から感じる)のがすごい。
こういう肝の据わった方だったからこそ上手くやれてるのかなとも。
どうしても年越しカップ麺を食べて欲しくて課長に力説し、美味しくたべる方法をプライベートで研究したエピソードからは、喜ぶ顔が見たいという気持ちが伝わってきた。
確かに、工夫したことにこんなにも反応がもらえるなら、もっと喜んでもらおうと、頑張っちゃうだろうな。
やっぱり「食」って大事だよなと改めて思った。黒柳さんと働いた受刑者の方々が、前向きに社会生活を送れてるといいな〜。
小林聡美さんで映画化してほしい…と妄想。大人の事情で無理なんだろうな、笑
Posted by ブクログ
ラジオ深夜便インタビューで聞く
一般には知られていない世界
厳しいはずなんだろうけど
エピソードは楽しい雰囲気
書籍もあるというので読んでみた
レシピもついていて嬉しくなりました
中部の書店員が選ぶ賞を受賞されています
栄養士さんの事もよくわかるので
全国の皆さんにおすすめしたいです!
Posted by ブクログ
刑務所内の事はとても閉鎖的であまり
表に出てくることはないので興味があり
ポッドキャストでこの本を知り読む事にした
低予算で決められた規則の中で素人の受刑者に
調理をさせ全員に均等に配膳をする
創意工夫がありその苦労がよく書かれていた
でも、彼らは受刑者でありその背後には
被害を受けた方々がいる事を忘れては
いけないと思った
Posted by ブクログ
『食』ってエンタメだなあ!
と思わせてくれる一冊でした。
食べることも作ることも、そこにワクワクがあれば日々の潤いに直結する。
"人を良くすると書いて食"とはよく言ったものだと改めて思う。
刑務所の食事ってどんな感じだろう?と、少々下品な好奇心からこの本を手にしました。
読んで良かったです。
食を通じて受刑者たちの更生を手助けしたいと奮闘する栄養士さんの、母ちゃんみたいな優しさと、制限のある中でも少しでも美味しいご飯を!と試行錯誤する仕事魂。
炊場担当のメンズたちとイチャイチャしてる"のろけ感"にほっこりでした(笑)
Posted by ブクログ
どんな人でも、
何かをかけちがえたからここにいる
どんな場所でも知れるその人の素直な一面よ、
輝け
願わくはそれを大事に、次のステップへ。
知らないから接することで知る
先入観なく、一緒に取り組む
、、、そんな機会、あまりないな、、、
Posted by ブクログ
管理栄養士というと、学校や病院などのメニューを考える仕事、というイメージだが、本書の著者は刑務所の管理栄養士。公務員である。
学校の食事は「給食のおばさん」が作るが、刑務所の食事を作るのは受刑者たちである。メニューを考えるだけではなく、受刑者たちに調理を教えるのも刑務所栄養士の仕事になる。
木工製品や紙製品などを作る工場とは別に、炊事や洗濯、掃除などの身の回りのことも受刑者たち本人が行うのだ。
刃物や火を使うので、素行の悪いものや情緒不安定な者は炊事工場、略して炊場(すいじょう)には配属されない。とはいえ、受刑者は受刑者なので、緊張感がある。
著者が炊場に行くまでには鍵を何ヶ所も開け閉めしなければならない。
ボールペンやクリップといった小さなものでも、受刑者が拾って武器にする可能性もなくはないので迂闊に落としたりできない。
何かあったときのために、防犯ブザー代わりにホイッスルを持たされる。
他の職場ではありえないような細かい決まりがいくつもある。
調理を担当する受刑者の多くはこれまでに調理などしたこともない。
メロンの切り方、野菜のむき方、コロッケの揚げ方、あらゆることがわからない。
著者は男性向け料理教室で教えていた経験もあり、料理をしたことがない人を扱い慣れているので、さまざまな問題に対処できるのがすごい。
例えばジャガイモの芽。皮はピーラーでむくことになっているのだが、受刑者らは芽取り部分を使わずに、ひたすらくぼみをピーラーで何度もむいて芽をこそげ落とそうとしている。そんなことをしたら、食べられる部分まで多く捨てることになる。ちなみに栄養士さんが使う食品成分表には食材ごとに廃棄率が明記されているんだそうである。ジャガイモの廃棄率は普通は10パーセントだが、このやり方ではもっと捨てることになる。しかし、芽の部分だけを取るよう教えるのも心許ない。で、考えたのが、発注を「ジャガイモ」とするのではなく、「メークインLサイズ」とすること。メークインなら男爵よりもくぼみがすくないし、Lなら総重量に対して個数を減らせて皮むき作業も短時間で済む。すばらしく実用的な知恵である。
刑務所食で特殊なのは、予算の制限もさることながら、とにかく等分にしなくてはならないこと(喧嘩につながるから)、刑務官の検査が必要であること、夕食の時間が早い(夕方5時)ことなどさまざまである。
アルコール類はもちろん禁止なのだが、料理酒、料理用ワインはともかくとして、みりんも使用できない。「甘い酒」として盗み飲みされる可能性もあるからだ。
バナナも好ましくない。皮で滑って転ばせるいたずらの危険があるから、ではなく、何とバナナの皮からタバコが作れるからだという。びっくり。
著者と炊場配属受刑者とのやりとりも紹介される。
受刑者の中では「品行方正」なものが配属されるとあって、粗暴であったり凶悪であったりせず、どちらかというと素朴な印象を受ける。刑務所で出会った調理に意外な才能を見せ、出所後は調理師免許を取ろうかと言い出す者もいる。
食事は体を作り、心の糧ともなる。
予算は限られ、さまざまな制約がある中で、それでも精一杯「おいしい」ものを食べさせようとする著者の姿勢には頭が下がる。もちろん、プロの栄養士としての矜持もあるだろうが、どこか「親心」のようなものも混じっているようにも思えてくる。
考案するメニューも赴任当初よりもレベルアップしているようだが、だからといって一度出所した者たちに戻ってきてまた味わってほしいとは言えないのが若干残念なところ。
しかし、彼らが刑務所で食べた食事は、誰かが心を込めて用意したものだということは、きっとどこかで彼らの支えになっているのではないか。
なかなか見られない世界が覗ける好著。
Posted by ブクログ
刑務所栄養士さんの「愛と意地」を感じられます笑
「ヒタヒタの水」とか「冷凍コロッケ爆発」とか調理用語や調理あるあるがよく出てくるので、料理を自分で作る人は、より楽しめると思います。
全然知らない世界だったのでビックリすることも多かったです。
Posted by ブクログ
なんとなく人よりもムショ物が好きなような気がする…と思っていたら、こんな本ありますよ、と、同僚から教えてもらった本。軽いタッチで書かれていて一気読みしました。(この軽さがこの緊張した場所で仕事を長続きさせる秘訣だと思う)
刑務所で栄養士をする著者。様々なルールに則って受刑者と一緒に受刑者たちが食べる食事を作ります。
みりんなどのアルコール類が使えなかったり、平等に配膳をしなければならないので通常の家庭では一盛りにするおかずを一口大にして作るなど、工夫の連続です。
意外に思ったのが、やはり材料の入れ忘れがあること。どこにいて、監視されていていても、やっぱり人間のすることなんだなぁと思いました。
食をとおして更生し、この本に出てきた受刑者たちの再スタートが上手くいくよう願うばかりです。
Posted by ブクログ
面白かった!刑務所で働く管理栄養士さんが明かす塀の中のメシ事情。1日540円の食費、カロリーも作業によって細かく決められ、おやつの予算は60円。あったかいメニューもナシ、炊事場は重労働、あとダメなものも以外に多い。知らないことがいっぱいで読むのが楽しい。バナナでタバコが作れるとか衝撃的。
Posted by ブクログ
栄養士の話の本なんて貴重!
刑務所の勤務経験はないけど、栄養士として理解できる話ばかりで面白かった!
その場で最大限できる工夫をしている著者さまを尊敬します。
厨房業務は日々いろんなトラブルが起きるから、、臨機応変さが求められるんだよなぁ。
Posted by ブクログ
刑務所で働く栄養士さん。
面白く読み進めながら、どこか、刑務所にいながら食を楽しんでいる受刑者に暗い気持ちを持っていたかも。それは、後書きの「被害者が加害者を恨むのは当然だろう」「けれども、大多数は加害者でも被害者でもない第三者ではないか」「他人の過去を非難して表舞台から引き摺り下ろす...」の箇所に刺された気分になって、初めて気付いた。ただ、第三者だからといって非難してはいけないわけでないし、被害者以外でも恨む気持ちを持ったっていい。
サラッと読める職業本が、いま1番読みたかったなあと思った。ちょうどいい本!
Posted by ブクログ
前に読んだ「刑務所ごはん」のほうがカラーでリアリティーがありました。でも、こちらの作品のほうが、人間味を感じた!とか言ったらおかしいかもしれないけど、なんとなくそんな感想を持ちました。でも、事実なんですよね!
著者は刑務所に所属する管理栄養士の黒柳さん…受刑者のための食事は、黒柳さんの指導のもと、男子受刑者が調理するというものでした。男子受刑者は料理は全くの初心者であるため様々なハプニングが勃発します。1日1人あたりの食費は520円…これってすごくないですか??3食で520円ですよ!少ない費用の中でやりくりして、なんとか美味しいものを提供しようとする黒柳さんの奮闘っぷりがスゴイです。
ただ、黒柳さんはどんな罪を犯して彼らが収容されているのかは知らされていないんですって。あくまで食事面のサポートだからと…。でも、ドラマ化するならそこも描いてほしいな、ドラマ化されたら面白いだろうなぁ〜とつい思ってしまいました。
Posted by ブクログ
世間とは隔絶された刑務所内で、栄養士として食を通して受刑者と関わり、刑務所内ならではの悩みや楽しさを筆者のコミカルな視点で描かれている。
刑務所は厳密なルール、厳しい予算制限や調理に不慣れな受刑者だけで調理するといった難しさがあるようだ。
受刑者の唯一の楽しみと言える食事を、どうすれば楽しくさせてあげられるか、安全に作れるかなどの工夫を感じ、プロとして姿勢ややりがいが伝わってくる。
本書を見ると刑務所という厳しい環境のなかでも、食事に対して少年のような素直な人達が出てくることに新たな視点を獲得することができた。
Posted by ブクログ
小説かと思っていたら、刑務所で働く栄養士によるエッセイでした。入口から厨房までに鍵が8箇所ある、食事を作るのは受刑者で特に素行が良い者など、興味深かった。
Posted by ブクログ
男子刑務所の管理栄養士という珍しい視点から書かれた本。
のほほんと楽しいエピソードが続くが、話題が単発的で核心が見えづらい。犯した罪が見えないという立場では仕方ないことではあるけど、やや消化不良だった。
Posted by ブクログ
日本経済新聞「春秋」から
バナナが出せない?何故⁈
ほとんど知られていない刑務所の給食事情。
刑務所栄養士として配属された筆者。
「どんぶりぜんざい」や「カップ麺」などなど、ウーンとうなされたり、時にはフフフッと笑わせたり、興味深く読むことができた。
Posted by ブクログ
刑務所内で受刑者達が作るムショ飯のお話
なのに全体的に感じる可愛らしさは著者さん自身がお持ちの雰囲気なんだろうか
知らない世界を知れたのが良かった
Posted by ブクログ
めざせ!ムショラン三ツ星
刑務所栄養士、今日も受刑者と
クサくないメシ作ります
著者:黒柳桂子
発行:2023年10月30日
朝日新聞出版
著者は管理栄養士だが、岡崎医療刑務所に勤務する法務技官。つまり、刑務所に勤める公務員。本書の内容は、刑務所内部の話ばかり。いくら管理栄養士、料理の話とはいえ、公務員の守秘義務もあり、ましてや刑務所の内部情報ということで、普通なら出版できないのだろうから、恐らく刑務所側のPR意図があって書かれたものだろう。
料理なんかしたことがない若い受刑者たち。彼らが、とても「常識」では考えられないような調理をする様子や、こわもて&刺青のいかつい外見で甘いものに飢え、「美味しかったっス」と喜ぶ姿。彼らには「○○しろ」と命令口調で言い、不用意に笑い顔を見せこともできないが、心の中での交流や、彼らが喜ぶ様子にやりがいを感じる著者の心情など、知らなかった刑務所内部のことを含め、なかなか面白い一冊だった。刑務所内で考えたレシピも、いくつか写真付きで紹介されている。
老人施設や病院勤務などを経て、2012年に競争率30倍の試験をパスし、刑務所の管理栄養士試験に合格。刑務所の食事は、給食のおばさんたちが作っていると思っていた著者は、岡崎医療刑務所に話を聞きにいってびっくり。献立を考えて、おばさんたちにではなく、受刑者たちに作らせる。勤務するのは男子刑務所で、女性の刑務所栄養士は何十年ぶりかだという。暗黙のルールは1点だけ、スカートをはかないことだという。前職の学校勤務は3月までだし、離婚して2人の子供がいるし、今更辞退もできない。
刑務所の食事(給食)は、受刑者たちが作るけれど、それは自炊ということではないようである。この本によると、工場で作る。刑務所内にある炊事工場、略して炊場にて勤務(刑務作業)する受刑者たちが作る。ここに配属されてくるのは、体力があり頭もいい〝エリート〟だという。反抗的、情緒不安定、素行が悪い、といった者は配属されない。火や刃物があるし、盗み食いや他の受刑者への嫌がらせの心配もあるかららしい。決して楽ではなく、若くて健康であることが必須条件で、作業報奨金の時給が他の工場に比べて高い。平均で月4000円、多くて1万円。毎日、風呂に入れるのも特権(しかも専用浴場あり)。ただし、残業があり、その場合はお菓子が出る(自分たちで作ったもの)。
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地域や規模によるが、通常の食事は1人1日あたり約520円の予算。副食が423円、主食が100円程度。10年ほど変わっていない。
「給食にバナナを出すのは好ましくない」と言われた。バナナの皮からタバコだ出来るため。(コンセントで火花を出して)火を着けようとするから、アルミ泊で包んだチーズなんかもだめ。セロハンに包んだものにする。
レトルトや冷凍食品もよく使うが、牛肉コロッケ(冷凍)は、名ばかりで、段ボール箱には堂々と「牛肉0.03パーセント」と書かれている。これで牛肉コロッケと名乗っていいのかとも思った。
ゆで卵の殻がむきにくくなる原因は、白身に含まれる炭酸ガスが加熱で膨張して薄皮にひっつくため。ゆでている時に炭酸ガスが抜けるよう、卵の丸っこい側にスプーンなどでヒビを入れるとよい。
年末、途絶えていた年越しそばを復活させたくて、カップ麺を出すことにした。夕食の後に居室で出す。それぞれに熱湯を注ぐわけにいかないので、通常、お湯を入れて5分待つところを2分で切り上げ、カップ焼きそばのようにいったんお湯を捨てる。全食分スープの素をお湯で溶かしてつくり、湯切りしたカップ麺が配られたあと、そこに注いでいく。それまでに余熱で麺は柔らかくなっている。配られる間に1時間ほど放置されるため。何分で湯切りをすべきか、その時間を調べるために著者は人生ではじめてカップ麺をダース買いして研究した。何個食べたことか。著者は3分だと判断したが、炊場勤務の1人が2分でいいっスよ、と言うのでそのようにした。
刑務所内で事件やトラブルを起こした受刑者は、取調室に入らないといけない。それがあると仮釈放が遅れる要素となる。仮釈放(卒業と呼ぶ)の近い1人の受刑者は、以前、取調室に入った経験があった。ちくわの磯辺揚げを作っているとき、ちくわに付ける揚げ衣を自分たちの分だけ二度付けして仕上げ、他の工場のものより5割増しくらいの大きさにした事件を起こしていた。心配したが、無事、仮釈放された。